万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の一人勝ちは許されるのかーグローバリズムの幻想

2016年11月25日 09時57分21秒 | 国際政治
TPP漂流、中国が攻勢=習主席、南米歴訪で布石
 グローバリズムを最大限に利用し、かつ、最大の利益を受けた国は、中国であると評されています。それでは、何故、グローバリズムは、中国にとって有利に働いたのでしょうか。そして、先進国諸国は、何を読み違えたのでしょうか。

 仮に、グローバリズムが存在しなければ、中国は、軍事、並びに、経済大国として台頭することはなかったことでしょう。今日の中国の大国としてのステータスは、決して自力で築き上げたのではなく、グローバリズムというシステムの利用によるものに過ぎません。本来であれば、13億もの人口を擁し、かつ、低い生活水準に甘んじている状態にあれば、まずは、外需よりも内需の発展に努めるのが筋というものです。否、自国に巨大、かつ、供給不足の市場を有しながら、日用品を含む消費財を海外諸国に大量に輸出すること自体が、一般の国家では、あり得ない政策なのです。しかしながら、グローバリズムは、外国資本・企業による’世界の工場化’によって、中国に対して安価な労働力と通貨安を武器に輸出大国化する道を開き、軍事大国化の基盤となる外貨を提供すると共に、雇用機会や先端技術をも提供することとなりました。

 一方、先進国諸国の企業も、中国の安価な労働力と通貨安を利用したことは確かなことです。中国という国家と先進国企業との間には、ウィン・ウィンの関係が成立しているように見えますが、より詳しく観察しますと、国民に対しては雇用機会の流出による雇用不安をもたらし、企業に対しても技術流出が競争上の優位性を奪っています。短期的には成立していたウィン・ウィン関係も、時間の経過と共にウィン・ルーズ関係へと変化してゆくのです。ところが、ウィン・ルーズ関係に転じても、企業には、13億市場は魅力に映ります。規模こそ全てとするグローバリズムの考え方に基づけば、中国市場はビジネスチャンスに溢れているように見えるのです。

 しかしながら、中国のグローバリズム便乗政策の本質が覇権主義である限り、中国が、今後、海外からの輸入を積極的に拡大させるとは思えません(巨額の外貨準備は経済支配の源泉…)。また、先進国から先端技術を吸収し尽くし、科学技術のレベルが追い付けば、海外企業の進出に対しても消極的な姿勢に転じることでしょう。否、先進諸国の企業は、資金力に優る中国系企業に買収され、その傘下に組み込まれる運命が待っています。既に、その兆候は見えております。そして、最後の総仕上げこそ人民元の国際基軸通貨化であり、遂に外貨準備も不要となるのです。

 ”一帯一路構想”に含まれる地域のみならず、グローバリズムの寵児として全世界を中国経済圏に変貌させようとすることでしょう。”グローバリズムに乗じてグローバリズムを乗っ取る”、これこそが中国の野望であるならば、このまま、現行のグローバリズムの路線を邁進することは、他の諸国にとりましては”自殺行為”ともなります。人口13億の市場に惑わされますと、ギリシャ神話のイーカロスのように、自らが溶かされて墜落することにもなりかねないのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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