万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

"日本病"は不治の病か?

2009年10月28日 15時35分04秒 | 国際政治
日本みたいになってしまうぞと英米の経済紙が警告(gooニュース・JAPANなニュース) - goo ニュース
 バブル崩壊以降、財政拡大政策というカンフル注射を打ち続けながら、一向に景気低迷からの回復を見せない不景気の慢性化症状は、どうやら”日本病”とでも名付けられそうです。この病気を治すことはできるのでしょうか。

 異論はあるかと思いますが、この病気の根本的な原因は、(1)財政出動政策(2)金融機関の窓口政策(3)新興国の台頭(4)産業政策の欠如、(5)過剰な福祉重視にあるようです。

(1)財政出動政策
 国債の大量発行が、民間への資金供給を圧迫する現象は、クラウディン・アウトとして説明されます。公債と民間債権との金利差を原因としなくても、国民の預金が、民間部門の投資に回らないことは、企業活動を低下させます。

(2)金融機関の窓口政策
 中央銀行が低金利政策を採用しても、金融機関が窓口で貸し出しを絞り、企業に資金を提供しないとなりますと、結局、民間企業は、充分な活動資金を得ることができません。

(3)新興国の台頭
 市場のグローバル化により、多国籍企業が国境を越えて製造拠点を移動できるようになりましたので、廉価な人件費の国に雇用が流出します。90年代のバブル崩壊期よりも、この傾向が強まっている現代の方が、はるかに”日本病”の治療は難しくなります。

(4)産業政策の欠如
 先進国は、常にフロント・ランナーの地位を維持するよう努力しませんと、衰退することは世の習いです。次世代の経済を牽引するような産業の育成に官民が取り組みませんと、競争力や雇用は生まれず、この運命に逆らえなくなります。

(5)過度な福祉重視
 福祉政策の充実が叫ばれている中で、この原因を挙げますと反発を受けそうなのですが、高福祉国家が経済停滞に陥る現象は、”英国病”としても知られていました。手厚い福祉は、国民の政府への依存を高め、企業家精神や勤労意欲を削いでしまうのです。景気が後退するほど、生活保護や雇用対策への支出が増える一方で、税収は減少しますので、(1)の国債増発となり、悪循環に陥ります。

 ”日本病”の治療には、(1)~(5)までの原因を考慮して、負のスパイラルから脱出する必要があるのですが、民主党政権の政策の中には、悪循環をさらに促進させそうなものも少なくありません。”生き物”である経済を救うためには、大手術も必要な時もあるのではないでしょうか。

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コメント (4)
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