万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国は元高容認を

2009年10月22日 17時37分08秒 | 国際経済
中国GDP、8.9%成長 金融危機前の水準に接近(朝日新聞) - goo ニュース
 国際経済の不均衡の原因が、中国の元安政策にあるとすると、中国がこの政策を放棄しない限り、なかなか不均衡は是正されそうにありません。国際経済全体を考えますと、中国は、日本国が、85年にプラザ合意を受け入れたように、元高を受け入れるべきと思うのです。

 中国がどのような方法で為替市場に介入しているのかは詳しくは分かりませんが、日本国の場合と同様に、短期国債(TB)を発行して元を市中から調達し、ドルを購入しているとしますと、この操作自体が、中国国内の物価や賃金の上昇を抑えていることになります。ドル建て取引や為替介入で積み上げた膨大な外貨準備は国内に還流されず、米国債の購入や、政府系ファンドを通して海外への投資に充てられているのです。つまり、国民を犠牲にして、中国は、経済大国にのし上がっていると見ることもできます。

 中国がこの操作を止めるとなりますと、元相場の上昇、物価や人件費の上昇、輸出の減少と輸入の拡大・・・が起きますが、一方、他の諸国は、価格における相対的競争力の回復、雇用の維持、輸出の拡大・・・が期待できますので、景気の改善には役立ちそうです(もっとも、中国の軍拡を考慮しますと、経済的な関係強化でさえ危険でもある・・・)。中国政府には、国際経済と自国民を犠牲にする利己的な政策は、やめていただきたいと思うのです。

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中国は元高容認を (菅原晃)
2009-10-22 22:10:14
元記事です。

中国は元高容認を
2009-10-22 17:37:08 | 国際経済
中国GDP、8.9%成長 金融危機前の水準に接近(朝日新聞) - goo ニュース
 国際経済の不均衡の原因が、中国の元安政策にあるとすると、中国がこの政策を放棄しない限り、なかなか不均衡は是正されそうにありません。国際経済全体を考えますと、中国は、日本国が、85年にプラザ合意を受け入れたように、元高を受け入れるべきと思うのです。

 中国がどのような方法で為替市場に介入しているのかは詳しくは分かりませんが、日本国の場合と同様に、短期国債(TB)を発行して元を市中から調達し、ドルを購入しているとしますと、この操作自体が、中国国内の物価や賃金の上昇を抑えていることになります。ドル建て取引や為替介入で積み上げた膨大な外貨準備は国内に還流されず、米国債の購入や、政府系ファンドを通して海外への投資に充てられているのです。つまり、国民を犠牲にして、中国は、経済大国にのし上がっていると見ることもできます。

 中国がこの操作を止めるとなりますと、元相場の上昇、物価や人件費の上昇、輸出の減少と輸入の拡大・・・が起きますが、一方、他の諸国は、価格における相対的競争力の回復、雇用の維持、輸出の拡大・・・が期待できますので、景気の改善には役立ちそうです(もっとも、中国の軍拡を考慮しますと、経済的な関係強化でさえ危険でもある・・・)。中国政府には、国際経済と自国民を犠牲にする利己的な政策は、やめていただきたいと思うのです。

解説です。

1「国際経済の不均衡の原因が、中国の元安政策にあるとすると、中国がこの政策を放棄しない限り、なかなか不均衡は是正されそうにありません」。

「国際経済の不均衡の原因が、中国の元安政策にある」は間違いです。

(1)国際経済の不均衡は、「貯蓄超過=国内貯蓄を、国内投資・消費に使っていない国」=中国・新興国・産油国、および、「国内貯蓄で、国内投資をまかなっていない国=アメリカなど」にあります。
 中国の家計貯蓄=一般家庭の貯蓄は、50%近くにも上ります。国民が、所得を消費に使わないので、それが外国へ回ります。外国への資本輸出=中国の貿易黒字です。(櫻川昌哉 慶應義塾大学経済学部教授『経済を動かす単純な論理』光文社2009p149)

(2)中国が、為替介入し(外貨準備増を増やす)、元をドルにリンクさせている=元安政策についてです。「政府・中国の中央銀行がドルを買い元を売り、元をドルに対し元高に維持する」ですが、これを「元売り・ドル買い介入」といいます。

(以下、参考文献:岩田紀久男 学習院大学教授『国際金融入門』岩波新書2009)
 国際経済には、「国際金融のトリレンマ」という命題があります。
① 自由な国際資本移動
② 名目為替レートの安定(1ドル=360円など の、固定相場制のこと)
③ 金融政策の独立性(金利を上げ下げすること)

その1
 ②固定相場制(ドルに元をリンクさせる)を採用すれば、①と③は放棄しなければなりません。なぜなら、国内経済を活性化=③金利を下げた場合、①資本移動が自由なら、元の金利安を嫌い、資本は元売り(外国通貨高=金利の高い国に資本移動)になります。元安=外国通貨高になります。それを阻止しようとすれば②、①と③は放棄せざるを得ません。

その2
 ②と③を選べば、①を達成するのは無理です。なぜなら、資本が自由に国際間を移動できないと、外国からの投資(カネ)を呼び込めません。通貨危機の際に、外国資本がその国から逃げ出せないのであれば、外国資本はその国に投資しません。自国の資本不足を補うことに障害が出るのです。

 中国は、(1)を採用しています。ブレトン・ウッズ体制の、1ドル=360円と同じです。中国は、元を国外には持ち出させないという資本規制をしているのです。

 現実には、香港経由・台湾経由で中国への資本投下は行われています(元買い=ドル売り)が、そのかわり、中国政府・中央銀行は元売り=ドル買いを行い、外貨準備増減は爆発的に拡大しています。
 中国が②を採用すれば、①と③を放棄するだけです。

2「ドル建て取引や為替介入で積み上げた膨大な外貨準備は国内に還流されず、米国債の購入や、政府系ファンドを通して海外への投資に充てられているのです。つまり、国民を犠牲にして、中国は、経済大国にのし上がっている」は間違いです。

経済大国=GDP拡大です。GDP=「Y=C+I+G+(EX-IM)」です。外需=貿易黒字(EX-IM)はイコール資本収支赤字ですから、外国への資本提供です。国内には、絶対に還流しないカネ(外貨増・海外資産増)なのです。

 中国の場合、内需90%、外需10%です。中国が経済成長しているのは、内需の拡大です。(外需10%は、海外への資本提供ですから、国内には還流しないカネです)。

 「外国の資産が増える(資本提供)」ということは、我々「日本人の生活そのものが豊かになることを必ずしも意味しないことに注意されたい(岩田規久男『国際金融入門 』岩波新書1995 p44」となるのです。

 外需を増やす=貿易黒字増=海外資産増は、「外貨準備は国内に還流されず、米国債の購入や、政府系ファンドを通して海外への投資に充てられている」ことですから、「貿易黒字を積み重ねる=経済大国にのし上がる」ではありません。そもそも、貿易黒字は「不況になれば増える」のです。

 アメリカや、イギリスや、オーストラリアやイタリアは、貿易赤字の国です。貿易赤字=海外への負債増です。しかし、日本は、イギリスや、イタリアにさえ、一人当たりGDP(国民総生産=GDI国民総(JETRO参照)は抜かれてしまいました。

 貿易黒字(外需)を積み上げている「中国は、経済大国にのし上がっている」どころか、貿易赤字大国「イギリス・イタリアは日本を超えて経済大国にのし上がっている」のです。

 「貿易黒字=外資増(外国株や、外国債・社債・外貨増)」であれ、「貿易赤字=外資減(株や、国債・社債・国内通貨)を外国に購入してもらっている」でも、「経済大国=GDP増=国民所得増」になるのです。

「貿易黒(赤)字と経済成長は無関係」なのです。


Unknownさん (kuranishi masako)
2009-10-23 09:44:36
1. 「国際通貨のトリレンマ理論」は、EUの金融・通貨統合や資本移動の自由化の文脈で論じられてきたはずです。いわば、資本の移動に注目して固定相場制を擁護する理論なのですが、貿易の実態と為替相場が乖離するというデメリットも指摘されております(国際貿易の不均衡が自律的に調整されない・・・)。実際に、EUでは、ユーロを導入するに際して、財政規律の維持や為替相場の安定・・・など、一定の条件を付けております。アメリカとの間に著しい経済格差がある状況にあって、事実上ドルにペッグする固定相場制を導入しますと、デメリットの部分が大きくなり、国際貿易の不均衡が増大するのです。

2.経済は、静態的な経済式ではなく、動態的なフローチャートで描くべきかもしれません。GDP=Y=C+I+(G-T)+(EX-IM)の式では、時系列的な流れや独立的な決定要因が表現されておらず、ある一時点の断面を切り取ったに過ぎません。例えば、貿易赤字や貿易黒字は、時間が経過しますと、利子所得や債権の償還として、Yにフィードバックされてきます。
 教科書は、常に書き換えられる可能性があります。研究者とは、解明されていない事象にこそ、関心を寄せるものなのです。
中国は元高容認を (菅原晃)
2009-10-23 19:07:51

「固定相場制を擁護する理論なのですが、貿易の実態と為替相場が乖離するというデメリットも指摘されております」についてです。
 
 国際経済には、「国際金融のトリレンマ」という命題があります。
①自由な国際資本移動
②名目為替レートの安定(1ドル=360円など  の、固定相場制のこと)
③金融政策の独立性(金利を上げ下げすること)

 トリレンマは、「上記の3つは、同時に達成されない」という事実を述べたもので、「擁護」「デメリット」云々を述べたものではありません。

 金本位制や、ブレトン・ウッズ体制下では、①を放棄しました。
 資本の自由化が達成された現在(現行の世界経済下)では、②は達成できません。その体制下で、②を選ぶと、①か③のどちらかを放棄しなくてはなりません。(アジア通貨危機前の、タイ・インドネシア、現在の中国など)

 それ以外のなにものでもありません。「擁護」とか「デメリット」になると、主観的な見方が入りますので、それは「あなたの意見でしょう」で終わりです。客観的論証はできません。


「(国際貿易の不均衡が自律的に調整されない・・・)」。これは永久に無理です。

 資本の自由化以後、国際貿易の不均衡が是正されることを期待されましたが、是正はできませんでした。

「日本の貿易黒字拡大→円高に→貿易黒字縮小」こんなことは、実際にはないので、自律的調整はできません。
(自律的調整は、不均衡をなくすということですか?貿易黒字額=国際間のお金の貸し借りなので、ゼロにしたり、縮小させることは、永久にできませんが)

 お金の貸し借り(資本取引)が、貿易黒字の要因なので、不均衡=国際的なお金の貸し借りのことです。良い、悪いの問題ではありませんし、なくなることはありません。

岩田紀久男 学習院大学教授『国際金融入門』岩波新書2009
P213
「経常収支不均衡は…国内総生産と内需との差によって決まるから、それは為替レートの調整能力の問題ではなく、各国の財政政策や、民間部門の貯蓄率といった国内問題である。」

あなたの言う、「国際経済の不均衡の原因が、中国の元安政策にある」は間違いです。


「EUでは、ユーロを導入するに際して、財政規律の維持や為替相場の安定・・・など、一定の条件を付けております。」

 それはそうです。国債を、リラや、マルクや、フランで発行するだけしておいて、ユーロを導入したら、それまでの政府の借金を、他国に付け回すことになるからです。為替相場を安定させるということも同様です。


「GDP=Y=C+I+(G-T)+(EX-IM)の式では、時系列的な流れや独立的な決定要因が表現されておらず、ある一時点の断面を切り取ったに過ぎません。例えば、貿易赤字や貿易黒字は、時間が経過しますと、利子所得や債権の償還として、Yにフィードバックされてきます。」も間違いです。

「貿易赤字や貿易黒字は、時間が経過しますと、利子所得や債権の償還として、Yにフィードバックされてきます」はありません。

「利子所得や債権の償還」は、すでに、(EX-IM)の中に内在しています。
「GDP=Y=C+I+(G-T)+(EX-IM)」は「GNI=Y=C+I+(G-T)+(EX-IM)」でもかまいません。GNIは国民総所得=昔のGNP(国民総生産)と同額です。

(EX-IM)は、経常収支ですから、①貿易収支②所得収支③経常移転収支から成り立っています。利子所得や債券の償還(両方とも過去のストック=それまでの貿易黒字の反映)は、すでに②に含まれています。

 「時系列的な流れ…が表現されておらず」も、ですから間違いです。過去が入っているのです。
菅原晃さん (kuranishi masako)
2009-10-24 09:23:38
1.①の自由な国際資本移動は、各国の金融市場の開放を意味しています。①の定義を確認した上で、トリレンマ論から以下の点が指摘できます。

(1)中国のトリレンマを解く解のパターンは、①☓②○3○です(自国の金融市場を開放せず、固定相場と金融政策の独立性を維持している)。
(2)一般の先進国のパターンは、①○②☓③○です(自国の金融市場を開放し、変動相場制を採用しつつ、金融政策の独立性を維持している)
 
 現在の国際経済は、上記のパターンが併存しております。この結果、中国は、①について、自国の市場に対しては☓でありながら、他国の金融市場については○の利益を享受できるのです。つまり、この構造は、国際経済の不均衡の一因であり、中国が、アンフェアな貿易をしていると非難される理由でもあります(中国も(2)のパターンに転換すべき・・・)。

2.プラザ合意後の日本国の輸出入比率の変化については、本日付の日経新聞に記事がありましたので、ご覧になってください。

3.国家間の物価水準に著しい格差がある場合、ペッグ政策を維持することは困難であるということです(欧州通貨危機もアジア通貨危機も、為替相場が実態経済から著しく乖離したことが投機筋に狙われる原因となった・・・)。

4.何度も申しましたように、ご提示されている式は、時間が停止している静態モデルなのです。(EX-IM)が、海外投資として流出するとしますと(資本収支の赤字)、償還の時期には、この資本は、利払いとともに資本収支の黒字として還流します。このことは、経常収支の黒字国は、時間の経過とともに、GNIを一方的に増加させることを意味するのです。中国の”一人勝ち”は、この点からも説明できます。
中国は元高容認を (菅原晃)
2009-10-24 18:41:13
1.①の自由な国際資本移動は、各国の金融市場の開放を意味しています。①の定義を確認した上で、トリレンマ論から以下の点が指摘できます。

(1)中国のトリレンマを解く解のパターンは、①☓②○3○です(自国の金融市場を開放せず、固定相場と金融政策の独立性を維持している)。
(2)一般の先進国のパターンは、①○②☓③○です(自国の金融市場を開放し、変動相場制を採用しつつ、金融政策の独立性を維持している)
 
 現在の国際経済は、上記のパターンが併存しております。この結果、中国は、①について、自国の市場に対しては☓でありながら、他国の金融市場については○の利益を享受できるのです。つまり、この構造は、国際経済の不均衡の一因であり、中国が、アンフェアな貿易をしていると非難される理由でもあります(中国も(2)のパターンに転換すべき・・・)。

3.国家間の物価水準に著しい格差がある場合、ペッグ政策を維持することは困難であるということです(欧州通貨危機もアジア通貨危機も、為替相場が実態経済から著しく乖離したことが投機筋に狙われる原因となった・・・)。

上記についてです。

事実上のドルペッグ制を敷いている国は、中国だけではありません。
 事実について論議しているので、「アンフェア」とか「べき」は、論じることができません。

 中国は、外貨準備で対応できるのですから、それを続ければよいだけの話です。通貨危機に陥る心配があるなら、変動制にすればよいだけの話です。今のところ、中国通貨当局は、元高を食い止めていますが。
 そもそも、2005年には1ドル=8.1元ほどで、現在は1.6827元、管理変動相場制は導入しています。
 また、ドル買い元売りで、市場に元を供給すると、資産バブルや、将来のインフレの懸念があります。それらを防ぐには、国内市場の金利引き上げか、元高容認しかありません。

 「利益を享受(利益が何なのかよくわかりませんが、あるとして)」といいますが、一つの政策を採用すれば、かならずトレードオフの関係が生じます。


2.プラザ合意後の日本国の輸出入比率の変化については、本日付の日経新聞に記事がありましたので、ご覧になってください。

 はい、輸出増=輸入増になっています。貿易で一方的に儲ける(儲けるという表現は正しくないのですが)ことは、不可能なのです。


4.何度も申しましたように、ご提示されている式は、時間が停止している静態モデルなのです。(EX-IM)が、海外投資として流出するとしますと(資本収支の赤字)、償還の時期には、この資本は、利払いとともに資本収支の黒字として還流します。このことは、経常収支の黒字国は、時間の経過とともに、GNIを一方的に増加させることを意味するのです。中国の”一人勝ち”は、この点からも説明できます。

「償還の時期には、この資本は、利払いとともに資本収支の黒字として還流します。」

 しません。経常収支の所得収支黒字なので、資本収支は赤字です。


「経常収支の黒字国は、時間の経過とともに、GNIを一方的に増加させることを意味するのです。中国の”一人勝ち”は、この点からも説明できます。」

 はい、イギリスも、オーストラリアも、アメリカも、経常赤字の国ですが、GNIは伸び続けています。上の文章が成立するなら、下記の文章も成立してしまいます。

「経常収支の赤字国は、時間の経過とともに、GNIを一方的に増加させることを意味するのです。イギリス・オーストラリア・アメリカの”一人勝ち”は、この点からも説明できます。」

 前提も、事実も、認識も、すべて誤りなのです。

2008年 世界のGDP総額=60兆6890億ドル(日経21年8月6日記事より)
2008年 中国の貿易黒字=3607億ドル(JETROより)

 中国の貿易黒字は、世界のGDPの0.59%も!!!占めています。元を増価したら、大変な影響???ですね。世界経済の混乱は必至???ですね。
菅原晃さん (kuranishi masako)
2009-10-25 09:09:50
以下の点は、新聞等で報じられている事実ですので、まず、ご確認ください。
(1)中国は、経済のグローバル化の結果、先進各国企業の製造拠点となっている。
(2)中国は、輸出促進策として、事実上ドルとペッグする元安政策を採用している。
(3)中国は、莫大な貿易黒字を計上している。
(4)元安政策の実施に伴い、外貨準備を増大させている。
(5)中国が貿易黒字と外貨準備を積み上げる状況は、国際経済の不均衡と認識されている。
(6)中国は、各国政府から元高容認を要求されている。

 以上の点は、如何に菅原さんが貿易不均衡問題はないと言い張っても、事実として、これが国際問題化していることを示しています。

1.中国のペッグ政策は、自国通貨安を維持する政策であり、製品の価格競争に中国製品が有利になるように実施されています。つまり、公平な競争条件を歪めているのです。一方、かつてのアジア諸国のペッグ政策は、資本の流入を促すために、ドルに対して自国通貨高に設定しており、輸出競争力に影響を与えてはいませんえした。また、石油産出国のペッグ政策も、オイル・マネーの運営を円滑にするためのものです。通貨政策で問題となるのは、他国の不利益を与える自国通貨切り下げ政策であり、”近隣窮乏化政策”とも呼ばれています。しかも、人口かつ経済大国がこの政策を採用しますと、その他国に対するマイナス影響は甚大となります。

2.輸出増一辺倒から輸出増=輸入増に移行したのは、日本国が、円高を受け入れたからです。中国も、元高を容認すれば、輸入が増加します。中国政府が、それを回避していることが問題なのです。

3.そもそも、(EX-IM)の定義が明確ではありません。経常収支なのでしょうか、それとも、資本収支なのでしょうか。あるいは、経常収支と資本収支を加減したものなのでしょうか。もし、経常収支としますと、S=I+(G-T)+(EX-IM)の式は成立しません。最初に、貿易黒字(赤)と説明されていますが・・・。また、この式には、外貨準備も抜けております。
 なお、資本の海外流出が、償還や利払いとして還流するのは、将来のSやGNIですので、時間の経過とともに、過去に流出した資本は、資本収支の黒字として、将来のSやGNIに戻ってくるのです。

 元高になりますと、輸出競争力が低下しますので、自然に黒字幅も減少します。

中国は元高容認を (菅原晃)
2009-10-25 20:22:24
以下の点は、新聞等で報じられている事実ですので、まず、ご確認ください。
(1)中国は、経済のグローバル化の結果、先進各国企業の製造拠点となっている。
(2)中国は、輸出促進策として、事実上ドルとペッグする元安政策を採用している。
(3)中国は、莫大な貿易黒字を計上している。
(4)元安政策の実施に伴い、外貨準備を増大させている。
(5)中国が貿易黒字と外貨準備を積み上げる状況は、国際経済の不均衡と認識されている。
(6)中国は、各国政府から元高容認を要求されている。

はい、新聞が間違っています。日経といえども、「貿易黒字=もうけ」としています。これらは間違いです。「貿易黒字=もうけ」ではなく、海外への資本投資ですので、国内には還流しないカネです。
 「外国の資産が増える(資本提供)」ということは、我々「日本人の生活そのものが豊かになることを必ずしも意味しないことに注意されたい(岩田規久男『国際金融入門 』岩波新書1995 p44」となるのです。

外需を増やす=貿易黒字増=海外資産増は、「外貨準備は国内に還流されず、米国債の購入や、政府系ファンドを通して海外への投資に充てられている」ことですから、「貿易黒字を積み重ねる=経済大国にのし上がる」ではありません。そもそも、貿易黒字は「不況になれば増える」のです。


 「以上の点は、如何に菅原さんが貿易不均衡問題はないと言い張っても、事実として、これが国際問題化していることを示しています。」

 はい、ですから、これら(あなたの一般的な経済理解)は間違いです。

アメリカと日本の間で、1993年からは,日米包括経済協議が開かれます。日米構造協議を引き継いだ,アメリカ側が,自動車・半導体・保険などの分野で,アメリカ企業の日本市場への参入・数値目標を求める協議です。
 このころの,貿易不均衡を背景とした「日本の経済的脅威」をあおるアメリカの論調は,およそ次のようなものでした(参考文献 野口旭『経済対立は誰が起こすのか』ちくま新書p34~)。

①冷戦が崩壊し,軍事競争から経済競争の時代へと移った。最大の敵は,最も対米貿易黒字を抱える日本である。
②冷戦時のアメリカは,西側諸国の経済発展のために,自国の市場を開放し続け,自国産業の利益を損なってきた。結果,アメリカの経済力は弱体化し,貿易赤字を抱えた。
③アメリカのそのような政策につけ込み,日本は経済成長した。日本は,自国への外国企業の参入を規制し,自国産業を保護し,成長した輸出産業は,製品を,アメリカへ集中豪雨的に輸出した。
④日本は経済大国になっても,欧米とは異なる経営様式や取引慣行を持ち,欧米企業が日本市場へ参入することを拒んでいる。
⑤日本の不公正さは,一方的な貿易黒字にあらわれている。日本は市場を閉ざしている。
⑥日本のやり方による,最大の被害国は,対日貿易赤字を抱えるアメリカである。
⑦アメリカは自国産業の競争力を強化し,日本に市場開放させなければいけない。それは,具体的数値(シェア・輸入数量)によって明らかになる。
⑧具体的数値が伸びない場合,アメリカは日本に制裁を加えるといった,おどしが必要だ。

 このような考え方は,アメリカのマスコミを通じて広がります。その結果,「閉鎖的でアンフェアな日本」という考え方は,一般の国民にも浸透しました。
1995年春に,日本の自動車・部品市場における米国側の要求=「数値目標」を掲げた日米交渉は,何とか妥結しました。アメリカが,ちらつかせていた,日本制高級乗用車に対する100%制裁関税(例:100万円の日本製の車を,米国が輸入する際に,100万円の税金をかける)は,使われずにすみました。
しかし,当時の世論調査では,アメリカ国民の72%はこの制裁関税を支持し,反対は19%に過ぎなかったのです(参考文献 野口旭『経済対立は誰が起こすのか』ちくま新書p45)。アメリカの世論も,国際競争主義的な考え方に染まっていたのです。
 一方,これらの国際競争主義的な考え方に対し,批判をしたのは,同じアメリカの経済学者達でした。彼らは,1993年『公開書簡』(邦訳「週間エコノミスト1993年11月2日号」)を発表します。 ジャクディシュ・バグワティ,ポール・クルーグマン,アン・クルーガーという,国際経済学者の他,ローレンス・クライン,ポール・サミュエルソン,ロバート・ソロー,ジェームズ・トービンといったノーベル経済学賞受賞者を含む,100人以上の経済学者が署名しました。さらに日本を代表する経済学者,伊藤隆敏,伊藤元重,浜田宏一も含まれています。つまり,この書簡は,世界における,最も信頼される経済学者が,合意している基本的な考え方といえるのです。その内容は,次のようなものでした(参考文献 野口旭『経済対立は誰が起こすのか』ちくま新書p49~)。

①アメリカは,日本に管理貿易を要求しているが,それは間違いである。
②輸入拡大目標の設定だけが,日本の輸入増をもたらすというアメリカの考え方は,単純な見方に立っており,間違いである。何のメリットもない。
③日本の貿易黒字が不正で世界を害するものであるという誤った考えを助長する。日本の黒字は,日本の貯蓄が国内投資を上回った結果であり,資本を必要としている多くの国々に,資金を供給していることである。アメリカが自国の資金需要を満たせない時に,日本の黒字が有害であるという印象をつくるのは,近視眼的(目の前のことしか見ていない)である。

 ですから、あなたの一般的な経済理解と、経済学では180度違うのです。もちろん、あなたの一般的な理解が間違いです。




1.中国のペッグ政策は、自国通貨安を維持する政策であり、製品の価格競争に中国製品が有利になるように実施されています。つまり、公平な競争条件を歪めているのです。一方、かつてのアジア諸国のペッグ政策は、資本の流入を促すために、ドルに対して自国通貨高に設定しており、輸出競争力に影響を与えてはいませんえした。また、石油産出国のペッグ政策も、オイル・マネーの運営を円滑にするためのものです。通貨政策で問題となるのは、他国の不利益を与える自国通貨切り下げ政策であり、”近隣窮乏化政策”とも呼ばれています。しかも、人口かつ経済大国がこの政策を採用しますと、その他国に対するマイナス影響は甚大となります。


近隣窮乏化政策なるものは、現実には存在しません。あったとしても(それを狙って)、近隣は窮乏化しないのです。


2.輸出増一辺倒から輸出増=輸入増に移行したのは、日本国が、円高を受け入れたからです。中国も、元高を容認すれば、輸入が増加します。中国政府が、それを回避していることが問題なのです。

 日本は輸出増一辺倒など、過去に存在したことはありません。高度経済成長期は、貿易黒字はありませんでした。元高を容認しようとしまいと、輸出増=輸入増なのです。


3.そもそも、(EX-IM)の定義が明確ではありません。経常収支なのでしょうか、それとも、資本収支なのでしょうか。あるいは、経常収支と資本収支を加減したものなのでしょうか。もし、経常収支としますと、S=I+(G-T)+(EX-IM)の式は成立しません。最初に、貿易黒字(赤)と説明されていますが・・・。また、この式には、外貨準備も抜けております。
 なお、資本の海外流出が、償還や利払いとして還流するのは、将来のSやGNIですので、時間の経過とともに、過去に流出した資本は、資本収支の黒字として、将来のSやGNIに戻ってくるのです。

GNIの場合、EX-IMは、経常収支(貿易収支+所得収支+経常移転)=資本収支(資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏)です。

 はい、過去資本収支赤字分が、所得収支に入っています。

「過去に流出した資本は、資本収支の黒字として、将来のSやGNIに戻ってくるのです。」など、支離滅裂です。資本はその形態を変えただけ(外国株・債権etc)なので、流出というのはあり得ません。

「資本収支の黒字」にはなりません。
国際収支表も分からずに、国際経済について語っているのですか?
経済学について、全く分からない人が、誤解をまき散らします。

正解は
「貿易黒字は設け、赤字は損」ではない
「貿易黒字は不況になると増える」
です。

 元高になりますと、輸出競争力が低下しますので、自然に黒字幅も減少します。


 「輸出競争力」なるものは、存在しません。円高だろうと、元高だろうと、黒字幅の減少云々とは全く関係ありません。輸出増=輸入減、輸出減=輸入減です。

とにかく、一知半解の知識ではなく、経済学を勉強しましょう。
菅原晃さん (kuranishi masako)
2009-10-25 21:41:43
1.近隣窮乏化政策は、過去にもありましたし、現在も行われております。中国の元安政策に対抗するために、韓国などのアジア諸国は、自国通貨売りの介入を行っております。政府の為替政策によって、市場における価格競争力が左右されることは、あまりに当然の事実なのではないでしょうか。

2.85年のプラザ合意は、日本国が輸出一辺倒になったからこそ、貿易不均衡問題を是正するために行われたのではないでしょうか。プラザ合意における誤りは、(1)内需拡大のために巨額の財政支出を約束したため、バブルが発生したこと(2)数値目標を設定したこと、(3)アメリカが管理貿易を要求したことです。公開書簡でも、アメリカの日本国に対する円高容認要求に対しては、さしたる非難しておりません。

3.もし、経常収支=資本収支であるならば、日本国の黒字は、貯蓄が国内投資を上回った結果であるとする先の見解と矛盾しております。また、資本収支とは、対外資産・負債の増減に関する取引の収支で、投資収支+その他の資本収支です。IMF方式国際収支表では、外貨準備は含まれておりません。所得収支の所得収支も、居住者・非居住者間における対外金融資産・負債に係る利子・配当金等の受け取りおよび支払いを計上するとあり、過去の資本収支の赤字分が全て含まれるわけでもありません。この静態的な経済式にこだわっている限り、袋小路に入ってしまいます。
 なお、何らの問題も設定していないのにもかかわらず、正解は・・・、といういい方は意味不明ですし、論証もなされておりません。ご自分の支持する経済理論を絶対視することは、禁物ですし、それを、他者に押し付けることもできません。
 
 これ以上議論しても、平行線を辿りますので、以後、コメントをいただきましても、ご返事はさしげませんので、ご了承ください。
 
中国は元高容認を (菅原晃)
2009-10-26 19:19:47
1.近隣窮乏化政策は、過去にもありましたし、現在も行われております。中国の元安政策に対抗するために、韓国などのアジア諸国は、自国通貨売りの介入を行っております。政府の為替政策によって、市場における価格競争力が左右されることは、あまりに当然の事実なのではないでしょうか。

 ですから、このような政策がとられても、「近隣は、窮乏化しない」のです。

2.85年のプラザ合意は、日本国が輸出一辺倒になったからこそ、貿易不均衡問題を是正するために行われたのではないでしょうか。プラザ合意における誤りは、(1)内需拡大のために巨額の財政支出を約束したため、バブルが発生したこと(2)数値目標を設定したこと、(3)アメリカが管理貿易を要求したことです。公開書簡でも、アメリカの日本国に対する円高容認要求に対しては、さしたる非難しておりません。

 はい、ですから、「馬鹿な政策」で、「経済学的には全く意味のないこと」なのです。ですから、経済学者は「意味がない」とコメントを出しました。

3.もし、経常収支=資本収支であるならば、日本国の黒字は、貯蓄が国内投資を上回った結果であるとする先の見解と矛盾しております。また、資本収支とは、対外資産・負債の増減に関する取引の収支で、投資収支+その他の資本収支です。IMF方式国際収支表では、外貨準備は含まれておりません。所得収支の所得収支も、居住者・非居住者間における対外金融資産・負債に係る利子・配当金等の受け取りおよび支払いを計上するとあり、過去の資本収支の赤字分が全て含まれるわけでもありません。この静態的な経済式にこだわっている限り、袋小路に入ってしまいます。

 はい、「GNI=Y=C+I+(G-T)+(EX-IM)」の(EX-IM)部分=S=I+(G-T)+(EX-IM)の(EX-IM)とは同じです。

 はい、「経常収支=資本収支」の資本収支は、広義の資本収支です。

経常収支(貿易収支+所得収支+経常移転収支)=資本収支(資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏)です。

「過去の資本収支の赤字分が全て含まれる」のではなく、「過去の資本収支赤字=海外資産増、その海外資産からの配当、利子所得etcがあなたの言う、「所得収支の所得収支も、居住者・非居住者間における対外金融資産・負債に係る利子・配当金等の受け取りおよび支払いを計上する」になります。過去の資本収支赤字の結果が、海外資産増=そこからの所得収支増になります。

「これ以上議論しても、平行線を辿りますので、以後、コメントをいただきましても、ご返事はさしげませんので」

 はい、書けば書くほど、あなたの間違いが、あぶりだされています。ご苦労様です。

 なお、ブログ『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門 政経 現社 政治経済 現代社会』
http://abc60w.blog16.fc2.com/

にて、あなたの間違いを明らかにする連載をしていますので、どうぞご覧ください。

 経済学と、あなたの一般的な経済理解の間には、天と地ほどの差があることが、このやり取りを通じて明らかになっています。

 一知半解の知識を振りかざすと、大変危険です。
補足 (菅原晃)
2009-10-26 19:27:29
2.85年のプラザ合意は、日本国が輸出一辺倒になったからこそ、貿易不均衡問題を是正するために行われたのではないでしょうか。プラザ合意における誤りは、(1)内需拡大のために巨額の財政支出を約束したため、バブルが発生したこと(2)数値目標を設定したこと、(3)アメリカが管理貿易を要求したことです。公開書簡でも、アメリカの日本国に対する円高容認要求に対しては、さしたる非難しておりません。

 はい、ですから、「馬鹿な政策」で、「経済学的には全く意味のないこと」なのです。ですから、経済学者は「意味がない」とコメントを出しました。

ごめんなさい、これは間違いです。「意味がない」とコメントしたのは、「1993年からの,日米包括経済協議」についてです。

 プラザ合意後、バブル景気、バブル崩壊後、アメリカへの貿易黒字は拡大しました。貿易黒字は、「不況になると増える」のです。


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