万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

迷えるアイルランド

2009年10月04日 15時33分30秒 | ヨーロッパ
アイルランド、EU新条約批准へ 金融危機が流れを変えた(産経新聞) - goo ニュース
 アイルランドで実施された二度目の国民投票により、リスボン条約は、発効に向けて一歩踏み出したようです。その一方で、アイルランドの国民にとりましては、この投票は、なかなか苦しい判断であったとも思うのです。

 アイルランドは、EU加盟国の中では中規模の国であり、影響力を意味する理事会での票数や欧州議会における議席数も、それぞれ7票と12議席に過ぎません(最大のドイツは29票と99議席・・・)。EUレベルでの政策や立法過程において、自国が埋没する懸念がある一方で、加盟国が拡大すれば、投資が新規加盟国へと移動し、経済や雇用にもマイナス影響を与える可能性もあります。EUの枠組みは、金融危機の大嵐には頼るべき傘になるものの、実際のところ、景気回復や経済成長に対してどれだけのメリットがあるのか、未知数の状況にあるのです。

 アイルランドの置かれている苦しい立場を考えますと、国民投票に際して、国民の心が揺れた理由が分かります。中小の加盟国の不安を払拭するためにも、EUおよび加盟国は、リスボン条約後の経済戦略を練る必要があるのかもしれません。

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