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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

共産主義拡散の狙いは労働者の国際組織化による国民分断と世界支配

2025年03月21日 09時37分29秒 | 国際政治
 1848年に出版されたカール・マルクスの『共産党宣言』は、今日に至るまで共産主義者のバイブルとされてきました。経済メカニズムの分析と解明を内容としながらも、幾つかの重大な誤りや矛盾を含んでいる『資本論』よりも、同書の方が遥かに知名度が高く、その影響力も広範囲に及んでいます。その主たる理由の一つは、難解とされる後者よりも前者の方が平易に書かれており、理解が難しくないからなのでしょう。

読みやすさに関しては両者の間には雲泥の差があるのですが、‘マルクスの著作は文章の表面だけを読んではならない’という読者の注意点においては何れも共通しています。何故ならば、マルクスの視線が‘資本家’のものであり、かつ、マルクスのスポンサー勢力が所謂‘資本家’であるとしますと、真の目的は隠されているからです。マルクスの執筆の目的は、‘資本家’による過酷な搾取に苦しむ労働者の救済ではなく、‘裏の目的’があったとしますと、読者は、このもう一つの目的を読み解かなければならないのです。‘二重思考’は‘二重思考’で解くしかないのです。

それでは、マルクスは、何故、労働者を共産主義革命に駆り立てようとしたのでしょうか。そこで注目されるのは、『共産党宣言』を締めくくる最期の一文です。同書は、「万国のプロレタリア団結せよ!」で終わっています。同書がプロレタリア救済の書であると信じる人々の耳には、共産革命へと労働者を鼓舞する勇ましい雄叫びに聞えることでしょう。‘資本家からの搾取を運命付けられている労働者の諸君、この資本主義のシステムを破壊しないことには、君達は永遠に解放されない。今や、資本主義は万国に及んでいるのであるから、万国の労働者よ、革命に向けて団結しよう’と・・・。

しかしながら、マルクスの裏の目的を想定しますと、この言葉は、デマゴーグの扇動に聞えてきます。そして、この扇動の言葉が労働者の団結を促している点から推測しますと、先ずもって、『共産党宣言』の目的は、国境を越えた労働者(‘資本家’にとっては生産と消費をしてくれる便利な商品)の組織化ではなかったのか、という疑いが生じてくるのです。同宣言の最後を飾り、読者に最も強いインパクトを与える劇的なこの言葉にこそ、‘裏の目的’が顔を出しているように思えるのです。

マルクスとそのスポンサー勢力が労働者に国際的な団結を促した理由、それは、世界経済を掌握するには、労働者をも自らの組織的なコントロールの下に置く必要があったからなのでしょう。確かに、投資や株式制度等によって資本が国境を越えて他国に移動することは比較的容易です。他国にあって天然資源やインフラ等の利権を獲得したり、株式の取得や投資により、海外の企業を自らの傘下に置くこともできます。しかしながら、マネー・パワーの支配力をその国民にまで及ぼすことは簡単なことではありません。他国の社会全体を自らの都合がよい方向に変革し、国家内部の国民経済をコントロールするには、国民の内部に自らの組織を造り出す必要があったのでしょう。

19世紀にあっては、労働者が全人口の多数を占めますので、労働者の組織化はそれ程には難しい課題ではなかったはずです。実際に、イギリスでは、産業革命を機に階級社会へと変貌してゆきます。そして、『共産党宣言』の第1章には、

「・・・かれらの闘争の本来の成果は、その直接の成功ではなくて、労働者の団結がますます広がってゆくことである。この団結は、大工業が作り出す交通手段の成長によって促進され、異なる地方の労働者はそれによって互いに連絡する。そして、各地の一様な性格をもった多数の地方的闘争を結集して一つの国民的な闘争、階級闘争とするためには、この連絡さえできればよいのである。・・・(『共産党宣言』、岩波文庫、51頁)」

と記されているのです。マルクスは、交通網の発達を介した労働者間による広域的な団結を可能とし、やがて労働者による一つの階級及び政党に結集してゆく道筋を描いています。この団結を世界大に広げてゆくことが、共産主義を成功に導く鍵と説いているのです(ロシアに外部から暴力革命をもたらしたレーニンの封印列車も関連?)。因みに、上記の記述では、交通手段の重要性が述べられていますが、同書にあって列挙されている‘最も進んだ’諸国の10の諸法策の内、第6番目に‘全ての運輸機関の国家への集中’が見られ、この政策には、どこか共産主義者の尻尾が見えているようにも思えます(プロレタリア独裁体制樹立後の体制維持のためには交通手段の徹底管理が必要・・・)。

 マルクス並びにそのスポンサー勢力の目的が労働者の団結による国際組織化であったとしますと、同労働組織の実態は、‘上部の指令に従う実行部隊’ということになります。そして、その標的となる対象、あるいは、共産主義の表の顔を信じた善意の労働者が含まれるにせよ、資本家と労働者が共闘する相手こそ、国民という存在であったのかも知れません。国境の内側にある国民が自らの抵抗勢力となることが分かっていたからこそ、共産主義という国民分裂作用をもたらす思想を流布し、全世界の混乱に乗じて人類支配体制を構築しようとしたとも推測されるのです(つづく)。

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