万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”胡ショック”の日は来るのか

2008年10月28日 15時46分23秒 | 国際経済
金融危機の痛手が少なかった中国 人民元の力は今後ますます増していく【柏木理佳コラム】(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 もし、中国政府が、元を国際通貨化したいと本気で考えているとするならば、それは、技術的には難しいことではないと思われます。ペッグ制を完全に放棄して、外国為替市場における政府介入を止めればよいのですから。

 最も反対しそうなアメリカにとりましても、マイナス面のみではなさそうです。元取引が自由化されれば、貿易決済の実体を反映して元高に振れますので、貿易の不均衡が是正されます。また、固定相場制に起因するドル資金の逆流を抑制することができ、ドル買い介入により累積された外貨準備が減少すれば、米国債の中国依存度も長期的には低下するかもしれません。一方、ユーロを擁する欧州のメリットは、中国がドル偏重のペッグから離れることによる、ユーロ準備の増加と言えそうです。そうして、中国と同様に輸出依存型の経済を持つ日本国にとりましても、元高は、国際レベルにおける産業競争力の回復に資することになりましょう。

 政府による政策的な元安が、国際経済に隠れた歪みを生んでいる現状を考えましても、中国が元の国際化政策を取ることは望ましく、WTOに加盟した以上、中国も、公平な土壌で競争すべきと思うのです。果たして、中国政府が、変動相場制への移行を宣言する”ニクソン・ショック”ならぬ、”胡ショック”の日は来るのでしょうか。

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4 コメント

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胡ショックの日は (chengguang)
2008-10-28 23:02:50
当分来ないと思います。
小平氏による解放改革経済以来、中共社会全体に経済格差が生れ、これが拡大しつつあります。この問題は中共政府が先進国ではない弁解に用いる常套句でもあり、これはまたkuranishiさんや日本の多くの論者が指摘する点でもあります。
一方、国家と地方政府との法解釈の違い、外国企業への優遇措置の廃止、労働賃金の引き上げなどから、多くの外国企業が中共から撤退しつつあります。このため、早晩、輸出産業においても景気後退が始まると思います。また輸出産業形態は韓国と似ていますので、育成された国内産業が輸出に励むと励むほど、輸入材も増えることになります。
また、資産投資分野を更に拡大して受け入れるには、国内産業基盤の強化と法整備が欠かせないと思います。
これらの要件を考えると、今実現に向かっているアジア通貨基金でのイニシャチブは握りたいかもしれませんが、変動相場制に移行するメリットは、有りそうには見えません。
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chengguangさん (kuranishi masako)
2008-10-29 09:54:05
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 随分と前に、本ブログで、中国のWTO加盟は、時期尚早ではなかったのか、という内容の記事を書いたのですが、今でも、WTOの加盟条件として、自国通貨の自由化を付しておくべきであったと考えております。貿易と通貨は、国際通商体制の両輪ですので、どちらか一方の自由化が不完全ですと、当然に、不公正な貿易が発生してしまうのです。
 私は、今後とも、人民元の取引自由化、市場の法整備、投資の保護、環境対策の強化・・・などなど、中国に対する国際圧力が強まるのではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。
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近いうちに、ドル・ペッグはやめる (冬水)
2008-10-29 16:13:26
 よみにくいのですが、いずれ、近いうちに、ドル・ペッグを止めるでしょう。欧米には、バッド・シナリオです。湾岸諸国が追随するので、ドルが基軸通貨でなくなります。IMF体制が崩壊します。
 中国の経済をみるときは、全体でなく、沿海部地方の二億人の経済を見る必要があります。
 この二億人が、一人当たりGDPが、日本と同じになるのは、もうすぐでしょう。巨大な内需経済が生じるということです。日本と同じように、内需経済国家になります。
 
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冬水さん (kuranishi masako)
2008-10-30 09:52:24
 ご返事をいただきまして、ありがとうございました。
 中国政府は、2005年7月に通貨バスケット制の採用と管理変動為替制に移行しており、正確には、ドル・ペッグではない状況にあります。もっとも、公表はされていませんが、人民元を構成するバスケットのドル比率は高いようで、事実上、ドル・ペッグに近いのでは、と考えられます。ですから、中国の通貨問題については、1.外国為替市場における取引の完全自由化、2.バスケット制における通貨構成比率の改変、3.バスケット制そのものの見直し、が焦点になってくるのではないか、と予測されます。何れにしましても、ドルの信認の低下への対処は、多角的決済システムの再構築という方向も考えられるのではないか、と思うのです。
 なお、中国の沿岸部の富裕層が、外国資本による雇用に依存している限り、中国経済の内需型への転換は困難なのではないでしょうか。
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