万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”核のない世界”と”銃のない社会”-手順を間違えるリスク

2016年04月16日 14時00分02秒 | 国際政治
北朝鮮、プルトニウム抽出か=米研究所
 殺傷性の高い武器をなくすという方向性において、”核のない世界”と”銃のない社会”には共通性があります。そして、アメリカの銃規制の困難さは、核放棄の難しさをも説明しているのです。

 銃乱射事件が頻発し、子供を含む多くの無辜の人々が銃弾に斃れながら、アメリカでは、なかなか銃規制が実現しません。その理由は、愛好家が結成した市民団体である全米ライフル協会の強固な反対のみならず、一般のアメリカ国民の中にも、護身のための銃保有の必要性を感じている人が少なくないからです。広大な国土を有し、かつ、多民族国家であるアメリカでは、治安の維持は容易ではありません。犯罪が発生しても、警察の対応が遅れ、自らの身は自らで護るしかない状況に陥ることもあります。こうした場合、犯罪者や暴力組織のみが銃を持つ状態では、一般の人々は、最悪の場合、黙って殺されるか、略奪の被害に遭うしかなくなります。この事実は、犯罪者や暴力集団を撲滅するか、これらの人々から銃を一つ残らず没収しない限りにおいて、一般の人々は銃を手放すことはないことを意味します。つまり、適切な銃規制とは、最初に犯罪者や暴力集団から銃を没収し、社会の安全を確保した上で、一般の人々にも銃を放棄してもらうという手順を踏まなければならないのです。この手順を間違えますと、一般の人々だけが無防備となり、犯罪者や暴力団の銃の脅威に晒されることになりましょう。

 核兵器廃絶もまた、正しい手順は銃規制と同じです。最初に暴力主義国家や無法国家を撲滅するか、あるいは、暴力主義国家や無法国家の核兵器、並びに、開発を全面放棄させない限り、一般の諸国の安全は保障されません。”核のない世界”とは、即ち、北朝鮮のみならず、核保有国である中国といった無法国家の核の脅威を取り除かないことには実現しないのです。オバマ大統領には、一般の諸国に対して核廃絶を訴えるよりも、目の前の核の脅威の完全除去に取り組んでいただきたいと思うのです。

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