万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

チベットを独立運動に追い詰める中国

2008年10月31日 11時15分11秒 | アジア
騒乱から3回目、ダライ・ラマ特使「対話」訪中 決裂なら再混乱も(産経新聞) - goo ニュース
 チベット問題ほど、中国の本音があからさまにされている問題はないかもしれません。異民族の独立国であっても、一たび占領してしまえば、絶対に手放しはしないという・・・。この本音ほど、周辺諸国に脅威を与えるものはありません。

 中国の本心が分かっている以上、チベット側が、対話論戦の継続を無意味と感じることは理解に難くありません。中国側の結論は最初から決まっているのであり、妥協の余地などないのですから。それでは、チベット問題は、どのような方向に進むのでしょうか。

 中国側の不誠実な態度により、交渉が決裂したことが明らかとなれば、国際社会は、チベット問題に対して、もはや話し合いによる解決を求めなくなりましょう。そしてここで問題は、如何なる方法でチベットは独立を果たすのか、という手段の問題に移ることになるのです。ダライ・ラマ14世は、”高度な自治”路線を歩んできましたが、この路線が行き詰った限り、取るべき選択肢は、極めて限られてしまいます。残された選択肢とは、”高度な自治”ではなく”完全独立”を求める運動であり、その運動の手段として、独立戦争路線も排除できなくなるのです。もっとも、独立戦争を闘うことは、チベット仏教徒にとって苦渋の選択となりましょうし、また、事前に協力国や共闘勢力(東トルキスタン・・・)の獲得も必要になりましょう。

 現在の中国の態度は、明らかにチベットを独立運動の方向に追い詰めている言わざるを得ません。中国が、チベットの主権を完全に承認し、チベットや東トルキスタン・・・との連邦制へと改編しない限り、この問題は、武力をもってしか解決できなくなると思うのです。国際社会は、中国への圧力を強化するとともに、チベットの独立を理論武装を含めて支援すべきなのではないでしょうか。 

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4 コメント

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高い理念と低い現実 (chengguang)
2008-10-31 15:57:31
全ての民族・部族の独立運動を支援する、と言う強い信念と意思の下に、チベット問題も語っておられるなら、それはそれで立派なことであると思います。
チベットに関して言えば、ダライラマ猊下はチベットの自治権を要求しているのであって、独立を要求している譯ではありません。反対に新疆ウイグル地区は武装闘争をして独立を叫んでいます、チェチェンも、バスク地方も、クルド人も永いこと戦っていますし、国別に見ると更に多くの国で、この手の騒乱が起きています。しかしどれも国際的力を喚起するまでには至っていません。その大きな理由は、多分他国にとってのメリットが無いからで、人道などという美しい言葉は此処には存在しないからだと思います。
しかし、独立したい民族・部族は独立させるべきとのお考えであるなら、独立後の国家のあり方、統治能力、経済原資などを語って説得に努める必要がある気がします。単なる同情で独立問題を語るべきでないのは、犠牲が多すぎるからです。崇高な理念実現のためには無関係な人々の死も已を得ない、という考えなら、それはテロリストと変わりません。
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chengguangさん (kuranishi masako)
2008-10-31 21:21:43
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 現在の国際体系である国民国家体系とは、民族自決の原則によって支えられています。中国は、多民族を包摂する一種の帝国ですが、他の諸国は、およそ民族を核として国家を形成していることは否定のしようもありません。ですから、民族自決の原則の否定は、自己否定を意味しかねないのです。
 この観点からチベットを見ますと、チベットには、当然に独立すべき権利があることになります。チベットと中国との間に締結された「17条協定」は合法性がありませんし、あったとしてもチベットには、協定違反を理由に破棄する権利があります。国際法は、中国によるチベット領有を許していないのです。
 それでは、何故、チベットは独立できないかと申しますと、これは言うまでもなく、中国が、武力で独立を抑えているからです。法よりも力が優る、という状況がチベットでは続いており、チベット仏教の非暴力主義も手伝って、中国政府のさせるままになっているのです。
 私は、チベットの主権は回復されるべきと思いますし、それを闘い取る合法的な権利も、チベットにはあります。国際法は、民族独立戦争を認めているのですから。独立戦争とは、無関係な人々ではなく、自らの国を取り戻そうとする人々の戦いなのです。実際に、近代以降、多くの独立戦争が戦われ、尊い命が捧げられています。この戦いは、テロではなく独立戦争であり、誰も止められないのです。
 私は、国際法を無視し、弱肉強食を是とする中国の態度こそ、国際社会の秩序を根底から覆そうとしてるように思えてならないのです。それは、テロよりも、人類にとって恐ろしい行為かもしれません。もし、独立戦争を避けたいならば、中国政府は、チベットの要求に応え、ダライ・ラマ14世のチベット帰還を許し、主権国同士の連邦制に移行すべきと思うのです。
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独立はしたけれど (chengguang)
2008-11-01 12:47:32

失礼ながら、英米の新聞が良く使う、自国に都合の良い方を正義とする手法を、ご主張に採用されていないでしょうか。
この地球上で、多民族・多部族国家で無い国を探す方が難しいのが現実です。
お説は、民族・部族・宗教に目覚めた人々は独立を目指せ、国際法はそれを擁護する、と言う事でしょうか。
もう一つ疑問に感じることは、kuranishiさんは民主主義を擁護されている方だということです。その観点に立つ方が、ダライラマ猊下を頂点とするチベット階級社会の実現を擁護されていることは、自己撞着以外何者でもないと思えるのですが。
私の立場は唯一つ『自分たちで決めろ、そして責任を持て』です。独立した、だから国際社会は自分たちを経済を含めて面倒見て、という国が南太平洋やアフリカに転がってはいませんか。
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chengguangさん (kuranishi masako)
2008-11-01 16:39:26
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 チベットの人々は、chengguangさんがおっしゃる、その”自分達で決める権利”を奪われているのです。順序としては、まずはチベットの主権を回復し、ダライ・ラマ14世がチベットに帰国し、その後に、国政改革による民主化を進めるべきと思うのです。実際に、チベット亡命政府では、ダライ・ラマ14世を象徴の立場とし、民主的選挙で代表を選出する制度に移行していると言われています。
 また、独立国としての能力の問題については、もし、チベットが、チベット仏教の非暴力主義を貫き、軍隊を持ちたくない、ということでしたら、やはり、中国かインド・・・と連邦を形成して防衛を中央政府に任せるか、もしくは、外国と防衛条約を結んで、他国の軍隊を駐留させるという方法もあります。幸いにして、チベットには、地下資源が豊富に埋蔵されているそうですので、中央政府か、条約相手国に防衛費を支出すればよいのではないでしょうか。
 少なくとも、チベットの人々が一方的に中国の支配を受け、現代の植民地とか、ジェノサイドが懸念される状況は憂うべき事態であり、侵略行為が既成事実化されてはならないと思うのです。
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