万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

給付金政策は考えもの

2008年10月30日 16時32分44秒 | 日本政治
経済対策きょう発表 「給付金」全世帯に 住宅ローン減税最大600万円(産経新聞) - goo ニュース
 もし、メンバーから共通の財源を預かっている人が、”最近、景気が悪化しましたから、皆さんに、共通の財源から給付金を差し上げたいと思います。どうぞ、お好きな物を買って、景気回復に貢献してください。でも、この給付によって財源が減りますから、後でみなさんからの拠出金の額を、増やさせていただく予定です。”と提案したとします。さて、この提案は、メンバーの同意を得ることができるのでしょうか。

 この提案を受けたメンバー達は、きっとこう考えるかもしれません。”給付金は、一時的であっても、予定されている拠出金の増額が永続的であるならば、長期的に見れば、差し引きではマイナスとなるかもしれない。”と。さらに共通の財源についてよく調べてみると、既に大きく赤字であり、給付金を支給すれば、借金がさらに増える可能性も見えてきました。俄かに心配になって、経済状況も調べてみると、景気後退で拠出金の額も減少傾向にあり、財源は、さらに苦しくなりそうです。ついでに、給付金政策の効果はどうかと思い、調べてみると、これも、一過性に終わる可能性が高く、必ずしも景気浮上に繋がりそうにもありません。

 そこで、メンバーは、この提案に同意するか悩むことになります。”この案は、考えものかもしれない。もし、給付金で経済が回復するなら、そもそも後の増税は必要ないはずだし、財源の無駄遣いを減らして欲しいという要望も、うやむやにされてしまうような気がする。本当に、この給付政策は良い政策なのであろうか”と。メンバーである国民の、給付政策に対する疑問は尽きないのでした。

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8 コメント

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給付金効果 (chengguang)
2008-10-30 22:25:47
失われた10年とも15年とも言われている先の不況のとき、博覧強記の小室直樹氏は内需拡大のために量的財政政策を提案しました。経済学の丹羽春喜氏も需要が不足して実質生産が生産能力を下回る所謂デフレ・ギャップの生じている今こそ財政出動による大規模な内需拡大政策の断行を説き、金が無ければ印刷して国民一人当たり40万円を支給せよと主張しました(『諸君』1998年5月号)。経済学の今井亮一氏は持続可能な財政赤字であれば将来的にも何の問題もない(『財政赤字・大論争』2001年9月19日)と述べています。
どの主張も量の投入を主軸にした対案ですが、彼等の主張は、それまでの規模の投入による効果が発現しなかった事とケインズ的手法から、日本では無視され続けました。そして不況の閉塞感から、小泉内閣による緊縮財政政策へと移行していきました。
今回の麻生内閣による給付金方式は、丹羽氏の主張に類似していますが、如何せん投入量が小さ過ぎます。それ故、干天の慈雨となる前に、乾燥土壌に吸い込まれて消えてしまいそうな予感がします。ヘッジファンドを潰したポルシェのホルクス・ワーゲン社の株取得のように、やるなら迅速に大きく行うのが最善ではないかと考えます。
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やらないよりはまし・・ (冬水)
2008-10-31 06:23:34
 民主党の農家への戸別保障政策を、バラマキと罵った与党が、こういうことをやるのは、天に唾する行為
だけど、埋蔵金を遣って、緊急にやるのは、賛成できる。
 農家への所得保障も、米の再生産が、危ういことへの緊急政策である。原価1万5千円(一俵)で、市場価格1万円では、農家が、翌年の作付け資金を失うからだ。事故米が食べたかったら、バラマキと非難しても良い。
 年収200万円以下の所帯が大幅に増えているので、3万8千で、給食費が払えるのなら、それでよい。本当は、健康保険税が払えるぐらいのカネがよい。保険証なしの児童をなくせる。
 事務が面倒だからといって、麻生総理や鳩山兄弟に給付してもしかたがない。年収を限定すべきだ。
 緊急政策でなく、需要喚起策にするなら、消費税を廃止する方が良い。限定的にでも。例えば、車なら、300万円以下は0%、500万円までは5%、それ以上は、10%とればよい。
 ガソリンも、揮発油税を取っているのに、さらに、消費税も取っている。こんなあくどい政府はない。廃止すれば良い。
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chengguangさん (kuranishi masako)
2008-10-31 09:55:55
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 chengguangさんは、ケインズ主義者でいらっしゃるようですね。そもそも、ケインズが”一般理論”を提起した時代(1936年)とは、世界恐慌から続く長期の不景気にあり、さしものイギリスも、国是であった自由貿易主義政策を放棄した時期に当たります。実際に、生産も需要も減少し、失業者が街にあふれる時代でした。ケインズの問題意識の中心には、失業者の救済があり(完全雇用の実現)、そのための政策として、政府に対し財政拡大(有効需要の創出)を求めたと理解されております。
 それでは、現在の日本国の状況が、この時代のイギリスと重なるのかと申しますと、そうとも言えないように思うのです。長期の好景気が終焉を迎えたばかりであり、不況がそれほどには深刻化しておらず、需要の著しい不足も、深刻な失業問題も生じてはいません。いわば、需要が飽和した状態にあって、財政出動を行ったとしても、それが、経済の歯車を回す程の効果があるとは思えないのです。また、金融危機の治療法としての財政出動は、ケインズも想定していなのではないでしょうか(金融危機と失業の発生との間には、タイム・ラグがある・・・)。さらに言えば、ケインズ主義を採用したことによる悪性のインフレの発生も心配しなくてはなりません(紙幣の増刷・・・)。
 しかも、日本国の累積財政赤字は、利払いのみで年間9兆円にも達しており、国家予算の五分の一を占めております。将来における日本国の姿は、借金の返済と増税による、さらなる景気の悪化であるかもしれません。私に、この政策が良策であるとは思えないのです。
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冬水さん (kuranishi masako)
2008-10-31 10:07:56
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 冬水さんは、農家への所得保障や低所得の過程に対する給付の場合には根拠はあるけれども、一律の給付には、政策的な意味はないとお考えのようです。給付政策は、食の安全や社会保障など、目的を限定すべきという意味でしたならば、私も、そう思いますし、また、国民全員を対象とするならば、減税という手法の方が適しているとも思います。緊急対策という名の下で、早急に杜撰な政策を実施するよりも、国民の声を聞いてから政策を決定しても、決して、遅くはないと思うのです。
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レッテル貼りに興味はないのですが (chengguang)
2008-10-31 12:20:09
ケージアンというのはイギリスでは現政権の労働党のことらしく、保守系の人は、ブラウン政権の政策をケージアン主義として批難しています。それは如何でも良いことで、何とか主義には興味がありませんし、それ故、その主義に立脚して主張する気もありません。
ただ、量的財政政策は中々日本人には理解され難い主張なのだな~と思っているだけです。彼等の主張に同意する点は、彼等は、需要が無いなら、即ちインフレ不況で市場が動かないなら、あるいはデフレで市場が飽和状態にあるなら、需要を喚起するために消費を起せ、と言っている点です。つまり、入り口が一杯なら出口を開けろ、と言っている点です。
発想の転換なくして、有効な打開策をお持ちなのでしょうか。
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所得税減税では、貧民は救えない (冬水)
2008-10-31 13:54:54
 減税で、所得税、法人税の減税を意味しているのでしょうか?
 年収300万円以下なら、所得税は、ほとんど、払っていないと思われますから、減税しても、格差拡大で貧困化している層には、何の恩恵もない。法人税を減税しても、大部分の中小企業は、法人税を払っていないでしょうから、これも、恩恵がない。減税は、比較的富裕な人、及び、利益の出ている大企業を潤すだけです。
 さらに、アメリカ流の経済学に基づいて、富裕層を減税すれば、波及効果があるというのは、アメリカと日本では、金持ちの行動が違うので、間違い。アメリカの金持ちほど、物欲が強くないから。
 したがって、減税をするには、大衆課税を減税するのが、一番、波及効果がある。
 消費税をなくせば、大衆は、自動的に、5%所得が増えたのと同じになる。
 なお、国家に大借金があるというのは、大蔵・財務の大嘘。他国と違って、大借金もあるが、大資産もあるという、大きな国家だというだけ。正味は300兆円ぐらい借金だと思う。
 さらに、竹下以外は(いや、小沢は知っているか?)知らないと言われているが、簿外の資産がある。敗戦時、この簿外の資産で復興したので、成功体験から、植民地から持って帰った資産をもとに、簿外資産を作っているはず。財務省のホームページからはわからないけれど。
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chengguangさん (kuranishi masako)
2008-10-31 20:32:32
 ご返事をいただきまして、ありがとうございました。
 私自身がレッテル貼りされることを不快と思いながら、chengguangさんに、レッテル貼りをいたしてしまい、大変、失礼をいたしました。つい、ケインジアンの主張と共通点がありましたので、そう思い込んでしまったのです。
 日本人が、量的財政政策に消極的なのは、過去に手痛い失敗を経験してきたからではないか、と思います。特に、公共事業については、箱ものばかりを造り、維持費による財政赤字のスパイラルに陥りましたし、地域振興券政策も、ほとんど景気浮上の効果はありませんでした。もちろん、ケインズ理論を論駁するという方法もありましょうが、むしろ、経験知が、ケインズ政策に懐疑をもたらしているのかもしれません。
 もし、消費の喚起により、景気を回復させようとするならば、技術革新や製品開発により、新たな製品市場を作り出す方が、紙幣をばらまくよりも、市場の成長メカニズムには合致すると思うのです。
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冬水さん (kuranishi masako)
2008-10-31 20:48:36
 ご返事をいただきまして、ありがとうございました。
 冬水さんのおっしゃる通り、国民全員に均霑する政策ならば、消費税率、原材料にかかる関税の税率、ガソリン税率を下げたり、あるいは、お米や小麦の売り渡し価格を下げる・・・といった方法のほうが、生活支援にはなると思います。一時的な給付金という政策には、どうしても違和感があるのです。
 なお、もし、日本国に”隠し財産”があるならば、それは、国民の財産でもあるわけですから、公にすべきと思います。政府の隠蔽体質を改善しませんと、国民は、政府の打ち出す政策に納得も、理解もしなくなるのではないでしょうか。
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