万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

市場経済における規制の良し悪し

2008年10月25日 14時46分40秒 | 国際経済
「自由競争主義に欠陥」前FRB議長、金融危機に釈明(朝日新聞) - goo ニュース
 市場経済とは、個人の経済活動の自由に基づくシステムであり、自由競争を原動力に発展するという独特のメカニズムを持っています。そこで、自由な活動と競争あっての市場経済ならば、規制などないほうが良い決まっている、と見做されがちなのですが、実は、このメカニズムを守るためにこそ、規制が必要な場合もあるのです。

 例えば、現在、世界各国で金融危機の嵐が吹き荒れていますが、その原因として、行き過ぎた規制緩和が指摘されています。それは、金融市場からあらゆる規制を取り除けば、自然に、すべての市場参加者の利益が最大化すると信じたからです。ところが、ここに重大な落とし穴がありました。規制緩和の結果、市場の参加者達に、意図せずとも市場のメカニズムを壊す自由までも与えてしまったのです。その結果、案の定、金融システムは、無残にも壊れてしまいました。

 市場における規制とは、市場のメカニズムを健全に保ち、個々人の経済活動に安定した基盤とルールを与えるものでなくてはなりません。個人の努力やアイディアを潰すような規制は悪い規制ですが、市場の秩序を維持するための規制は、良い規制なのではないではないかと思うのです。

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8 コメント

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足るを知らないアメリカ国民・・ (冬水)
2008-10-25 21:40:23
 キリスト教には、特に、アメリカのキリスト教には、足るを知ると言う自己抑制を教える部分がない。
 高給だからといって、別荘を、四つも、五つも、持つ、とりわけ、足るを知らない金融業界の人たちと、自分の収入では、とても支払えないと、我慢する心のなかった、これも足るを知らない庶民達が、合作で行った、サブプライム・ローン。
 この、箍の外れた国民には、自由よりも、規制が望ましい。自由は、心に、自己抑制がある国民しか享受できない。
 ”奢る平氏は久しからず””盛者、必衰の理”が、国民のエートスになっている、わが国でも、ホリエ、村上など、箍の外れた人物に事欠かない。
 自由競争が、福利を増すというのは、欲望を抑制できる賢者が、たくさんいる、特に、指導階層にたくさんいる時のみだろう。
 足るを知らない人物の方が、大勢だから、シナでの共産党の統治は、理に適っている。
 グリーンスパンには、アメリカ文化の分析が欠けている。
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市場経済の存廃 (chengguang)
2008-10-26 09:43:02
ボーダレス・ワールドという言葉が登場した頃、経済は未だ実体経済が主体でした。それがいつの間にかグローバル・エコノミィに変わり、経済のグローバル化が叫ばれ、気が付くとグローバライゼーションと呼ばれるようになっており、アメリカ式金融システムと手法が世界標準となっていました。そして普及した市場経済主義理念の下、今や世界は、実体経済の30倍とも40倍とも云われるマネー経済の支配する世界となってしまっています。
マネーが今や金融商品として言わば貿易取引の主役に躍り出ているにも拘らず、景気動向の数値としては、国際収支表の実際の貿易収支やGDPが引き合いに出されるという、極めて歪な状況を呈しています。
その上ドルは、開発途上国では唯一交換可能な通貨としての地位を、依然として維持しています。今回の信用危機に於いても、欧州投資銀行による新興国に対する多額の投資が、ドルで行われていたことが判明しました。基軸通貨の位置は当分揺るがないだろうと思われます。
このドルとリンクしているとも言える現行の市場経済に対して、どの様な政策が取れるのか。市場経済に変わるモデルを提示するのか、それとも市場経済容認の上で、規制を強化するだけにするのか、各国が独自案を出した上で、整合性を図ることが必要な気がします。最早、一国だけの対応で処理できるシステムではないからです。
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冬水さん (kuranishi masako)
2008-10-26 10:15:49
 冬水さんのおっしゃる通り、規制の厳しい国とは、えてして、そうせざるを得なかった歴史があるものです。規制とは、自分の意思で自らの行動をコントロールできない場合に、他律による制御手段として登場してくるのですから。冬水さんは、アメリカ社会を自己抑制なき欲望社会として捉えていますが、日本国とて、これからは安心してはいられません。自己規律を教える道徳教育とは、社会を健全に保つためにこそ必要なのではないでしょうか。
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chengguangさん (kuranishi masako)
2008-10-26 10:39:13
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 そもそも市場経済とは、近代に至って発明されたものではなく、人類の誕生以来、人間の活動に普遍的に見られる”交換”をメカニズムの基礎に据えた経済システムであると思います。ですから、市場経済を放棄することはできませんし、統制経済を採用したところで、旧共産・社会主義諸国の二の舞になるだけです。
 今日の金融危機で問題視されているのは、市場経済そのものではなく主に金融部門であり、金融と実体経済の主客逆転現象であると考えられます。金融部門が金融本来の機能から逸脱して、マネー・ゲームに走った結果、自滅してしまったのです。この側面を考えますと、今後の方針としては、市場における金融機能を再確認した上で、1.投機などのマネー・ゲーム行為の規制、2.金融商品の審査の強化、3.金融市場における安全装置の設置、4.時価会計制度の見直し、5.BIS規制の見直しなどを通した金融機関のリスク管理の徹底化、6.バブルの早期警戒システムの開発・・・などを行い、実体経済をマネー・ゲームから守るとともに、金融機能を含めた市場のメカニズムを正常化する必要があると思うのです。
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市場経済への対応 (chengguang)
2008-10-26 13:10:51
今の市場経済とは、一般的用語ではなく、一つのイディオロギーとして使用されています。即ち、政府による財政政策、中央銀行による金融政策は不要で、経済は規制なき市場が判断する、という考え方です。
つい二週間ほど前まで、日本の過去の金融危機に対する経験に、欧米の政治家・金融機関の誰一人として耳を傾けなかったのは、現代資本主義はこの市場経済にあり、それを理解していない日本は、社会主義国あるいは資本主義後進国に過ぎないと言う意識があったからではないでしょうか。
ポールソン氏のモラルハザード振りが問題視され、イギリスの『救済策』が最早使用禁止用語では無くなった、と言われたのはほんの二週間ほど前です。
kuranishiさんは市場経済容認のようですが、規制というのは飽く迄も現行のものに対する規制でしかなく、新しいものには対応しません。『実体経済をマネー・ゲームから守る』というよりも、雙方の経済規模が違いすぎていますので、実体経済と異なる金融活動は禁止する、レバレッジや空売り取引は禁止するなどの具体的措置を採らないと、また新しい金融手法や金融商品が生み出され、同じような危機が生じる可能性があると思います。
フランスは、政府系ファンドを設立し、国内主要産業の保護と銀行の救済・管理に乗り出しました。統制経済への退行として批難する人もいますし、市場経済の何をどこまでどうするのかは、まだ不明ですが一つの見識だと思っています。
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chengguangさん (kuranishi masako)
2008-10-26 16:12:42
 ご返事をいただきまして、ありがとうございました。
 市場経済という言葉が、イデオロギー色を帯びるために使えないとなりますと、困ったことになりそうです。むしろ、現在、非難の集中砲火を浴びているのは、新自由主義というレッセ・フェール経済と思うのですが・・・。また、ドイツのオルド自由主義のように、新自由主義に分類されながらも、市場の秩序を重んじる見方もあります。
 ところで、chengguangのご指摘の通り、金融を実体経済から遊離させない措置は必要であると思います。レバレッジや空売りの禁止は、有効な手段となりましょうし、新たな金融商品の販売に先立って、派生的な影響の審査も必要になりましょう。
 昔から賭け事という行為は、実体経済から切り離された場所で、遊戯として行われていたものです。それが、白昼堂々と実体経済の表座敷で行われるようになったことに、間違いがあったのかもしれません。
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ソ連は、統制経済だから、滅亡したのではない・・ (冬水)
2008-10-27 05:02:24
 旧共産圏は、統制経済だったから、非効率、だから、失敗したと思い込んでいる人は多いが、そんなことはない。市場経済も、かくのごとき、恐慌に襲われ、大きく富を失うのだから、非効率では、負けない。
 簡単に言えば、ソ連は、オイル・ピークで滅んだ。
東欧諸国も、ソ連からの、破格な価格の石油提供がなくなったから、経済が、破滅したに過ぎない。
 現在のアメリカの失敗も、行き過ぎた金融産業の問題などではない。
 軍事力が二流に、さらに、オイル支配が失敗したから、ドルが、フリー・フォールし始めたからに過ぎない。ユーロ、原油、金の先物を必死に空売りして、ドルを支えているが、円にたいして、フリーフォールしていることから、先行きが読める。
 解決策は、チャイナが握っている。共産党中央委員会の意志を示すと思われる論文が、人民日報に掲載されている。
 >>上海の同済大学教授の石建勲論文
 「現在の悲惨な状況に直面して、人々はようやく米国が自国通貨の優位性を利用して世界の富を搾取していたことに気がついた」
 「米ドルは信頼を失いつつある。世界は早急に、国際機関を通して民主的かつ合法的に、米国一国支配の経済構造と米ドルの優位性の上に立脚している現在の国際金融システムを変えなければならない」<<
 
 IMF改革を行うと言う主張。さらに、その先に基軸通貨の変更を読んでいる。
 メルケルらも、既に主役はチャイナと見切っているだろう。
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冬水さん (kuranishi masako)
2008-10-27 16:29:36
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 私は、中国は、アメリカとは逆の意味にで、国際的な資金の流れを歪めていると考えているのです。それは、中国の元安政策とそれを支える対ドルペッグ制です。中国が、ドルにペッグしている限り、元は、国際通貨にはなり得ず、米ドルに代わる地位を確立するとも思えません。この点について、本日の記事に一文を認めておりますので、ご一読いただけましたら幸いです。
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