万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ユダヤ人には帰る母国がある-民族自決の恩恵

2015年02月19日 15時36分29秒 | 国際政治
欧州のユダヤ人は移住を=イスラエル首相(時事通信) - goo ニュース
 今日、国民国家体系は、新自由主義に代表されるグローバリズム、並びに、今なお残る共産主義とその派生思想の狭間で揺ぎを見せております。流浪の民であった歴史に加えて、これらの思想の形成にユダヤ人が多く関わったため、ユダヤ人には、国家や民族に対して否定的な人々とするイメージがあります。

 しかしながら、先のブログ記事でも指摘したように、シオニズム運動の末に、第二次世界大戦後にイスラエルを建国したユダヤ人は、民族自決の原則の最大の受益者です。そして、この恩恵は、今日、ヨーロッパ諸国で激化しているテロや反ユダヤ主義を前にして、ユダヤ人の人々に、母国に帰国する選択肢を与えております。イスラエルもまた帰国を促しており、母国として、不安を抱えるユダヤ人に手を差し伸べているのです。建国以前にあっては、ユダヤ人は、居住国で迫害を受けても、どこにも逃げ場がありませんでした。今日、自らの国家を中東の地に建国できたことは、何ものにも代えがい幸運であるはずです。この点、民族自決の最大の受益者であるはずのユダヤ人が、今なお、他の国や民族に対して攻撃的であることには理解に苦しみます。仮に、民族自決の原則をこの世から消し去るとしますと、自らも、中東の地に国を持つことの根拠を失うに等しいからです。そして、パレスチナの地に国境線を越えてユダヤ人入植地を設けることも、イスラエルが国連決議に基づいて建国されたことを考えれば、自らが依拠する国際法による秩序を破壊する自己矛盾に他なりません。

 建国以来、イスラエルは、中東戦争を繰り返し、パレスチナに対しても攻撃の手を緩めません。しかしながら、本来であれば、自らの土地を割いたアラブの人々に深く感謝すべきであったのではないでしょうか。イスラエルが、建国に際して、武器を翳すのではなく、丁寧にお礼の言葉を述べていれば、中東情勢は今とは随分と違ったものとなったでしょうし、ユダヤ人が、他の国家や民族を尊重すれば(国家を破壊されると帰る母国を失う民族が続出…)、反ユダヤ主義も弱まるとともに、国際社会もまた安定化したのではないかと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2015-02-19 20:03:12
こんばんは。中東の混乱の原因・・英国に有ります。
イスラエル建国に当たって、アラブの民が自らの土地を割譲したわけではなく、石油利権を狙う英国がユダヤの民にイスラエル建国を約束したことから問題がはじまっているのです。
中東には、オスマントルコというイスラームの国家が存在していました。
原油利権の獲得の為に、オスマントルコを分割したのは、英国とフランスです。
クウェートは原油積み出しの為だけに建国された国家なのです。
湾岸戦争の発端となったイラクのクウェート侵攻・・・
イラクからしてみれば、クウェートなどという国家は、英国とフランスが自分達の都合で勝手に作ったものであり、国家は存在せず、国境線も無かったのだから・・と言う話になるのです。
ややこしいのは、英国の三枚舌外交で混乱をもたらし、スエズ戦争に破れ、米国が出てくるのです。
アラブの民はユダヤ人が帰還して建国する事を快く思っていたのか、という問題も有ります。
アラブの民からすれば、ユダヤ人は西洋の価値に染まった民であり、アラブ世界を西洋の思想で染め上げようとする・・西洋社会の尖兵とみなされているのです。
ユダヤ人にも、トロッキーを信奉し共産主義を信奉する者も居ますし、あえてイスラエルに帰らず、重国籍を持ち欧米を自由に行き来し商売をする者も居ますし、イスラエルに帰還しイスラエルという国家に縛られたくないと考える者もいるのです。
ユダヤ人の特性に付いては「二人のユダヤ人が集まれば、三つの意見が出、四つの政党が生まれる」と言われるくらいに多様な意見を持つ人々です。
それぞれの思う所に従って自由に生きる・・これもユダヤ人なのです。
イスラエルとパレスチナの対立は、実に言いにくいことですが・・・
一度、麻生総理の提案で合意寸前にまでこぎつけた事が有ります。
「パレスチナの民は農業をやりなさい、インフラや作物の輸送路の整備などは日本が金を出す」
イスラエルには「これ以上入植地を広げるな、パレスチナからの農作物の輸送には手をだすな」
パレスチナの民に国家として収入をえる手段として農業を進め、イスラエルには入植地を広げない事、パレスチナに対しての軍事行動を止める事で・・合意仕掛けたのですが・・
マスコミのネガキャンで民主党に政権交代し、この話は潰れたのでした。
マスコミや民主党などの左翼勢力こそが中東の混乱と、それに伴うテロの拡大を望んでいる事ははっきりしています。
鳩ポッポ君が、この問題に効果的なコミットが出来ますか
小沢氏が、米国や中国の顔色を伺わず独自の外交が出来ますか
マスコミは中・韓へとなびき・・外国での共同記者会見の席で、どうでもいいような内政問題の質問をしたり、的外れなことばかり・・
日本のマスコミは、はっきり申しますと外国のマスコミから嫌悪されています。
曰く、自分勝手である。
取材する相手の事を考えない。
何かにつけ演出やヤラセをしたがる。
マナーがなっていない。
この程度の馬鹿なマスコミに踊らされ民主党に政権を渡した日本人こそ恥を知るべきなのです。
政権交代がなければ、イスラエルとパレスチナの和平は達成されていたかも知れないのです。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2015-02-20 08:08:29
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 中東につきましては、東方から攻め入ったトルコ人がビザンチン帝国を滅ぼして建国したオスマン・トルコ帝国と、アラブ、あるいは、イスラム帝国とは継続性はなく、帝国と言うよりは、地方諸侯国がトルコを宗主国とする封建体制に近い形態であったようです。このため、トルコ帝国が崩壊過程に入った19世紀は、西欧列強の介入もあり、中東動乱の時代でもありました。イギリスの3重外交が問題を拗らせた原因でもありますが、少なくとも、ユダヤ人は、先住者がいるところに特別に国家建設が許されたのですから、礼儀として、先住者に感謝し、相応の代償を支払うのが筋と言うものではなかったかと思うのです。今からでも遅くはないのですから、ユダヤ人の中からも、アラブ敵視一辺倒ではなく、二国併存を支持する人々が出現してもよいのではないでしょうか。
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