万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

対日”暴言”では負けないバイデン副大統領

2016年08月17日 15時24分18秒 | 国際政治
「私たちが日本の憲法書いた」=トランプ氏の核武装論を批判―米副大統領
 ”暴言王”と言えば、共和党のトランプ候補の異名でもありますが、民主党のバイデン副大統領も対日”暴言”にかけては負けてはいないようです。”私たちが日本の憲法を書いた”と”真実”を語ってしまったのですから。

 バイデン副大統領の発言は、トランプ候補の日本核武装容認論に対する批判として飛び出してきたものです。トランプ候補の核武装論も日本国に衝撃を与えましたが、バイデン副大統領の米国製憲法論も、幾つかの点で日本国を唖然とさせました。第一に、従来、日本国憲法の草案がGHQによって作成されたことは周知の事実であったにも拘わらず、建前としては、アメリカ側も、”日本国憲法は日本国が制定したもの”とのスタンスを保ってきました。しかしながら、バイデン副大統領は、にべのもなく”アメリカが作った”と言ってしまったことで、この建前が崩れてしまいました。日本国としましては、独立主権国家としての揺らぎを覚えざるを得ませんので、今後の憲法改正議論に影響を与える可能性があります。第二に、日本国憲法が”米国製”であると明言されたことは、憲法第9条の評価にも影響を与えます。しばしば、日本国憲法の制定は日本が世界に誇る偉業であり、ノーベル平和賞に値するとの意見が見受けられますが、当憲法が”米国製”であるならば、受賞者はアメリカということになります。もっとも、この点に関しては、バイデン副大統領は、第9条を念頭に”日本国が核保有国になり得ないため”と理由を付しています。ここでも建前の崩壊が起きており、憲法第9条の真の意図が、核不保持を含む日本国の軍縮にあったことを図らずも漏らしているのです。この目的の暴露が第三の点です。

 アメリカの大統領選挙における”暴言”とは、根も葉もない誹謗中傷ではなく、これまで隠されていたり、タブーとされてきた事実や真実の公言という性格が見受けられます。暴言が暴言を呼び、結果的に、情報公開の場となっているアメリカ大統領選挙は、日本国もまた、無関心ではいられないのです。

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4 コメント

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はじめまして (小平次)
2016-08-17 18:03:47
はじめまして

小平次申します

先生のように理論的に、冷静な分析をなさるこうしたブログにたどりつくことができて大変うれしく思います

読者登録もさせて頂きました
ありがとうございました

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小平次さま (kuranishi masako)
2016-08-17 22:01:45
 こちらこそ、初めまして。
 本ブログへのご訪問、並びに、読者登録をいただきまして、ありがとうございました。拙いブログではございますが、今後とも、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
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Unknown (北極熊)
2016-08-18 10:04:27
占領国が非占領国の法制度を変えてはならないという国際法違反になるから、表立っては言えないハズだし、そのために大日本帝国憲法の改正手続きに従って国会決議をさてた訳なのに、70年たって、もう良いやと開き直ると、、、、もしかして、日本国憲法は無効であって、正統に有効な憲法は大日本帝国憲法という事になったりして、、、。 
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北極熊さま (kuranishi masako)
2016-08-18 10:26:01
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 本発言に対する日本政府のコメントを聞いておりますと(駐米大使?)、と草案を作成したのはアメリカであっても、大日本国帝国憲法の改正手続きに従って、日本国憲法として制定したのは日本という立場のようです。少なくとも、憲法改正議論に一石を投じたことは確かなように思えます。
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