入管法改正の国会審議に「拙速」 経済同友会の代表幹事
参議院において審議が始まった入国管理法改正案。日本国政府のみならず、識者をはじめ入国管理法改正案に賛意を示している人々は、口を揃えて移民・難民問題に苦しんできた欧米諸国と同じ轍を踏んではならず、社会的摩擦や対立を回避し、外国人の受け入れ態勢に万全を期すことが重要であると主張しています。いわば、同法案成立の前提条件として、日本国政府による社会統合政策の実施があるのですが、この主張を吟味しますと、幾つかの矛盾点が見えてきます。
第1の自己矛盾点は、社会統合政策を行うならば、政府は、外国人労働者の受け入れが移民政策であることを認めざるを得なくなることです。‘移民’については、日本国政府は、‘日本国での定住を前提として入国してくる外国人’とし、極めて狭い定義づけを行っておりますが、国際的にはより広義―国境を越える人の移動程度―に用いられています。同法案には、家族帯同が許され、かつ、永住資格の取得に繋がる特定技能2号への移行規程も設けておりますので、社会統合政策については2号資格を想定しているのでしょう。つまり、社会統合政策の条件化は、これまで‘移民政策ではない’と主張してきた‘移民政策’の定義に関する政府の詭弁を明らかにしてしまうのです。
第2に挙げられる点は、社会統合政策については、移民問題で苦しんできた欧米諸国の制度を参考にすると述べている点です。特に移民・難民に対するドイツ語教育等に熱心に取り組んでいるドイツの政策をモデルにしたいようですが、シリア難民問題の発生から僅か数年しか経過しておらず、この政策が成功しているとする報告もありません。むしろ、テロの頻発を受けてドイツ社会では移民との間の緊張が高まっており、ドイツ以外の諸国でも、社会統合に成功した国は皆無に近いのです(反移民政党の勢力伸長が移民問題のさらなる深刻化を証明している…)。このことは、成功モデルが存在しないにも拘わらず、政府は、あたかも社会統合政策を実施すれば移民問題は起きないとする幻想を、無責任にも国民に対して振りまいていることとなるのです。
そして、何よりも救いがたい自己矛盾は、社会統合には、受け入れ国側の国民の幅広い合意を要する点です。世論調査等を見ましても、今国会での成立に反対する意見が大多数を占めております。街角のインタヴューでも懸念の声が強く、仮に、政府が参議院においても強硬に法案を可決させますと、国民の不満が高まることが予測されます。一般国民が不満を抱えての出発は、国民と外国人労働者、あるいは、移民との間に摩擦が生じる土壌となります。シリア難民の受け入れを唐突に表明したメルケル首相は、‘難民を勝手に呼び入れた政治家’と見なされ、シリア難民に対してドイツ国民が冷たい視線を投げかける原因となりましたが、今般の政府による入管法改正案の強行突破もまた、むしろ、外国人労働者に対して日本国民が温かい感情を寄せることができない要因となるかもしれないのです。政府が社会統合を力説すればこそ、何よりも、日本国民が納得し、不安を完全に払拭するような制度を設計しなければならないはずなのです。社会統合政策については、外国人の人権擁護にばかり関心が向いていますが、受け入れ国側の国民の権利が蔑にされ、生活が脅かされるのでは、それは、社会統合ではなく、社会分離政策と言わざるを得ないのです(多文化共生主義も社会分離政策では…)。この点においても、政府は、自己矛盾に陥っているのです。
‘初めに結論ありき‘で始められた法改正であるためにか、政府の説明は矛盾に満ちております。政治の世界には、時にして反対する勇気、そして、途中でやめる勇気こそ必要とされ、それが国や国民を救うこともあるのですから、入国管理法改正案につきましても、亡国の法改正とならないよう、政府与党はその成立を断念すべきではないかと思うのです。
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参議院において審議が始まった入国管理法改正案。日本国政府のみならず、識者をはじめ入国管理法改正案に賛意を示している人々は、口を揃えて移民・難民問題に苦しんできた欧米諸国と同じ轍を踏んではならず、社会的摩擦や対立を回避し、外国人の受け入れ態勢に万全を期すことが重要であると主張しています。いわば、同法案成立の前提条件として、日本国政府による社会統合政策の実施があるのですが、この主張を吟味しますと、幾つかの矛盾点が見えてきます。
第1の自己矛盾点は、社会統合政策を行うならば、政府は、外国人労働者の受け入れが移民政策であることを認めざるを得なくなることです。‘移民’については、日本国政府は、‘日本国での定住を前提として入国してくる外国人’とし、極めて狭い定義づけを行っておりますが、国際的にはより広義―国境を越える人の移動程度―に用いられています。同法案には、家族帯同が許され、かつ、永住資格の取得に繋がる特定技能2号への移行規程も設けておりますので、社会統合政策については2号資格を想定しているのでしょう。つまり、社会統合政策の条件化は、これまで‘移民政策ではない’と主張してきた‘移民政策’の定義に関する政府の詭弁を明らかにしてしまうのです。
第2に挙げられる点は、社会統合政策については、移民問題で苦しんできた欧米諸国の制度を参考にすると述べている点です。特に移民・難民に対するドイツ語教育等に熱心に取り組んでいるドイツの政策をモデルにしたいようですが、シリア難民問題の発生から僅か数年しか経過しておらず、この政策が成功しているとする報告もありません。むしろ、テロの頻発を受けてドイツ社会では移民との間の緊張が高まっており、ドイツ以外の諸国でも、社会統合に成功した国は皆無に近いのです(反移民政党の勢力伸長が移民問題のさらなる深刻化を証明している…)。このことは、成功モデルが存在しないにも拘わらず、政府は、あたかも社会統合政策を実施すれば移民問題は起きないとする幻想を、無責任にも国民に対して振りまいていることとなるのです。
そして、何よりも救いがたい自己矛盾は、社会統合には、受け入れ国側の国民の幅広い合意を要する点です。世論調査等を見ましても、今国会での成立に反対する意見が大多数を占めております。街角のインタヴューでも懸念の声が強く、仮に、政府が参議院においても強硬に法案を可決させますと、国民の不満が高まることが予測されます。一般国民が不満を抱えての出発は、国民と外国人労働者、あるいは、移民との間に摩擦が生じる土壌となります。シリア難民の受け入れを唐突に表明したメルケル首相は、‘難民を勝手に呼び入れた政治家’と見なされ、シリア難民に対してドイツ国民が冷たい視線を投げかける原因となりましたが、今般の政府による入管法改正案の強行突破もまた、むしろ、外国人労働者に対して日本国民が温かい感情を寄せることができない要因となるかもしれないのです。政府が社会統合を力説すればこそ、何よりも、日本国民が納得し、不安を完全に払拭するような制度を設計しなければならないはずなのです。社会統合政策については、外国人の人権擁護にばかり関心が向いていますが、受け入れ国側の国民の権利が蔑にされ、生活が脅かされるのでは、それは、社会統合ではなく、社会分離政策と言わざるを得ないのです(多文化共生主義も社会分離政策では…)。この点においても、政府は、自己矛盾に陥っているのです。
‘初めに結論ありき‘で始められた法改正であるためにか、政府の説明は矛盾に満ちております。政治の世界には、時にして反対する勇気、そして、途中でやめる勇気こそ必要とされ、それが国や国民を救うこともあるのですから、入国管理法改正案につきましても、亡国の法改正とならないよう、政府与党はその成立を断念すべきではないかと思うのです。
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特に重要なポイントは、先生も御指摘のとおり、『受け入れる側の国民の幅広い同意』があるかどうか、なんですね。
もちろん、そんな同意が望めるとは思えません。
この法律を通しても、一部の国民団体から、激しい外国人労働者排斥運動が起こることは目に見えています。
燎原の火のように、各地で外国人排斥運動がおこれば、政府も手がつけられません。
(まさに、日本人民の怒りに他なりません!)
そのような事態が発生することが好ましくないというならば、『入国管理法改正案』は、廃案にすべきでしょう。
ひとつ考えられるのは、海外向け支援に代えて外国人労働者を受け入れることが約束されたのではという可能性だ。いまひとつは年金制度を外国人労働者からの収入で支えようという謀略だ。考えてもみよ❗外国人労働者が帰国したあと、年金支給年令になって請求できるだろうか?政府は年金の掛け金のただ取りを狙っているのでは、と思うのである。
国民の大多数の反対を押し切って入管法改正案を通したといたしましても、その後に起きる問題は誰もが予測し得るところです。今日でさえ、全国各地に出身国別のコミュニティーが出現しており、また、外国人による犯罪も増加傾向にあります。もしかしますと、政府は、’確信犯’なのかもしれません…。
政府がいかに人手不足を強調したといたしましても、入管法改正案につきましては、国民の大多数が不信感を抱いているのではないでしょか。中国では、研修生の送出しに関する管理機関を設けているそうですので、もしかしますと、中国との間に’密約’がある可能性も否定はできないように思えます。国民に’隠し事’をしつつ、強引に同法案を成立させますと、政府に対する国民の信頼が崩壊しかねない事態に至るのではないかと懸念しております。