「中国の安保、侵害しない」=初訪問前に韓国大統領
北朝鮮問題が拗れる一つの要因として指摘し得るのは、朝鮮戦争当時、中国は、国連の加盟国でも、安保理の常任理事国でもなかったことです。中国がこれらの地位を獲得したのは、1971年10月25日にアルバニア決議が成立したことに依ります。
この時、国際社会において、朝鮮戦争における中国の立場に関する何らかの決定や取極めが為されていたとしたら、あるいは、今日の混乱は避けられたかもしれません。しかしながら、各国の戦略上の打算から中国を国連に招き入れたことは、今日に至っても、“国連加盟国、かつ、常任理事国でありながら”国連の敵”という中国の極めて曖昧な立場をもたらしているのです。
朝鮮戦争の経緯からすれば、韓国が最も恐れるべき軍事的脅威は、中国のはずです。中国の義勇軍(中国人民志願軍)の参戦がなければ、朝鮮半島全域は国連軍によって占領され、程なくしてアメリカ主導による南北統一が達成されていたことでしょう。中国の兵力こそ、このシナリオに”待った”をかけたのであり、北朝鮮の軍事力は怖れるに足りなかったのです。1953年7月に成立した休戦協定の正式名称も、「朝鮮における軍事休戦に関する一方国際連合軍司令部総司令官と他方朝鮮人民軍最高司令官および中国人民志願軍司令員との間の協定」であり、中国は、紛れもない当事国であると共に、国連の敵国です。今日では北朝鮮領域から兵を撤退させているとはいえ、休戦協定が破棄されれば、中国は、即、戦争当事国となります。しかも、1961年9月に発効した中朝友好協力相互援助条約がなおも生きており、関係が冷却化したとはいえ、中国と北朝鮮は軍事同盟関係にもあります。
朝鮮戦争が停戦中である現実に鑑みますと、THAAD配備に反対する中国に配慮する韓国の姿勢は、極めて奇妙です。仮に朝鮮戦争が再開された場合には、人民解放軍の介入のみならず、中国の参戦さえもあり得るからです。韓国の文在寅大統領は、「今後、THAADが北朝鮮の核・ミサイルに対する防衛目的を超え、中国の安保上の利益を侵害することがないよう、韓国は格別に留意していく」と述べたと報じられていますが、自国の防衛を確実にするには、北朝鮮のみならず、中国に対しても防衛を目的としたTHAADの配備・運用が必要となるはずです。文大統領は、“中国から自国が核やミサイル攻撃を受ける可能性は絶対にない”、と確信しているのでしょうか。
防衛戦略としてはTHAADの配備・運用は対北限定では不十分であるにも拘わらず、中国に対して自国の防衛・安全保障に関わる大幅な譲歩を見せたとしますと、あり得る可能性は、”韓国が中国から朝鮮半島有事不介入の確約を取り付けた”、というものです。しかしながら、こうした約束がいとも簡単に反故にされるのは、中国大陸や朝鮮半島では日常茶飯事です。不都合が生じたり、勢力拡大の好機と見れば、中国は、迷わずに軍事介入を決断することでしょう。
軍事戦略の常識からかけ離れた韓国の行動からしますと、もしかしますと、韓国は、米韓同盟からの離脱と中国陣営への参加を内々には伝えており、THAAD配備をめぐる配慮は、そのプロセスの最初の段階に過ぎないのかもしれません。韓国は、朝鮮戦争の文脈においては、国連軍、並びに、同盟国のアメリカを置き去りにして、既に中国に対しては“降伏”したのかもしれないのです。
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北朝鮮問題が拗れる一つの要因として指摘し得るのは、朝鮮戦争当時、中国は、国連の加盟国でも、安保理の常任理事国でもなかったことです。中国がこれらの地位を獲得したのは、1971年10月25日にアルバニア決議が成立したことに依ります。
この時、国際社会において、朝鮮戦争における中国の立場に関する何らかの決定や取極めが為されていたとしたら、あるいは、今日の混乱は避けられたかもしれません。しかしながら、各国の戦略上の打算から中国を国連に招き入れたことは、今日に至っても、“国連加盟国、かつ、常任理事国でありながら”国連の敵”という中国の極めて曖昧な立場をもたらしているのです。
朝鮮戦争の経緯からすれば、韓国が最も恐れるべき軍事的脅威は、中国のはずです。中国の義勇軍(中国人民志願軍)の参戦がなければ、朝鮮半島全域は国連軍によって占領され、程なくしてアメリカ主導による南北統一が達成されていたことでしょう。中国の兵力こそ、このシナリオに”待った”をかけたのであり、北朝鮮の軍事力は怖れるに足りなかったのです。1953年7月に成立した休戦協定の正式名称も、「朝鮮における軍事休戦に関する一方国際連合軍司令部総司令官と他方朝鮮人民軍最高司令官および中国人民志願軍司令員との間の協定」であり、中国は、紛れもない当事国であると共に、国連の敵国です。今日では北朝鮮領域から兵を撤退させているとはいえ、休戦協定が破棄されれば、中国は、即、戦争当事国となります。しかも、1961年9月に発効した中朝友好協力相互援助条約がなおも生きており、関係が冷却化したとはいえ、中国と北朝鮮は軍事同盟関係にもあります。
朝鮮戦争が停戦中である現実に鑑みますと、THAAD配備に反対する中国に配慮する韓国の姿勢は、極めて奇妙です。仮に朝鮮戦争が再開された場合には、人民解放軍の介入のみならず、中国の参戦さえもあり得るからです。韓国の文在寅大統領は、「今後、THAADが北朝鮮の核・ミサイルに対する防衛目的を超え、中国の安保上の利益を侵害することがないよう、韓国は格別に留意していく」と述べたと報じられていますが、自国の防衛を確実にするには、北朝鮮のみならず、中国に対しても防衛を目的としたTHAADの配備・運用が必要となるはずです。文大統領は、“中国から自国が核やミサイル攻撃を受ける可能性は絶対にない”、と確信しているのでしょうか。
防衛戦略としてはTHAADの配備・運用は対北限定では不十分であるにも拘わらず、中国に対して自国の防衛・安全保障に関わる大幅な譲歩を見せたとしますと、あり得る可能性は、”韓国が中国から朝鮮半島有事不介入の確約を取り付けた”、というものです。しかしながら、こうした約束がいとも簡単に反故にされるのは、中国大陸や朝鮮半島では日常茶飯事です。不都合が生じたり、勢力拡大の好機と見れば、中国は、迷わずに軍事介入を決断することでしょう。
軍事戦略の常識からかけ離れた韓国の行動からしますと、もしかしますと、韓国は、米韓同盟からの離脱と中国陣営への参加を内々には伝えており、THAAD配備をめぐる配慮は、そのプロセスの最初の段階に過ぎないのかもしれません。韓国は、朝鮮戦争の文脈においては、国連軍、並びに、同盟国のアメリカを置き去りにして、既に中国に対しては“降伏”したのかもしれないのです。
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