万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

何故、北朝鮮はグアムを狙うのか?

2017年08月31日 14時59分43秒 | 国際政治
 8月29日に発射され、日本国上空を通過して太平洋上に落下した中距離弾道ミサイル「火星12号」について、北朝鮮の最高指導者とされる金正恩委員長は、「侵略の前哨基地であるグアム島を牽制するための意味深長な前奏曲だ」と述べたと伝わります。予告していたグアム周辺海域に向けた4発のミサイル発射は、一時は手控えたように見せながら、なおも、グアムに対する執着を示しています。

 それでは、何故、北朝鮮は、遠く大洋を隔たるグアム島を狙うのでしょうか。距離的に最も北朝鮮に近く、開発済みの弾道ミサイルでも射程内に入ることが最もあり得る理由なのですが、それだけではないように思えます。真に交戦状態を覚悟しているのであれば、命中率は低いとはいえ、言葉だけでもアラスカを標的に据えた方が対米脅迫効果は高いはずですし、距離からすれば“前哨基地”は、日本国や韓国の米軍基地であるはずです。グアム攻撃予告は、戦略としては、どこか中途半端なのです。

 グアム島には米軍基地が設けられており、民主党政権時代の米軍再編計画では、沖縄駐留米軍海兵隊の一部もグアム島への移転が予定されていました。トランプ政権誕生後もこの計画は維持されており、今年4月におけるハリス米太平洋軍司令官の公聴会での発言に因れば、移転の時期は、2024年から2028年頃となるそうです。何れにしても、米軍の拠点としての戦略的重要性を増しており、地政学的には太平洋東部海域を睨み、南シナ海にも面する要衝と言っても過言ではありません。

 グアム島の戦略的価値が高いとしますと、これを脅威として感じる国があるとすれば、それは、北朝鮮ではなく、太平洋への進出を虎視眈々と狙っている中国です。グアム島こそ、フィリピンを手懐けた中国にとりましては太平洋上の米軍の“前哨基地”であり、海洋覇権を阻む邪魔な存在なのです。案の定、グアム島では、北朝鮮からの核ミサイル発射実験の表明を受けて、アメリカからの独立運動も起きているそうです。米領であるからグアム島が北朝鮮から狙われる、として…。

 沖縄県でも観察されているように、米軍基地のお膝元では、中国等の工作員の活動により、組織的な独立運動が仕組まれています。この一件が火付け役となって、グアム島において独立運動が活発化するとしますと、北朝鮮の背後には中国があり、北朝鮮は、中国の戦略的目的のため、あるいは、中国からの指令を受けて敢えてグアム島を攻撃の標的にした可能性も否定はできないのではないでしょうか。

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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (北極熊)
2017-09-01 12:48:16
習近平がオバマさんに「太平洋は広いから、東西二つに分けて管理しよう」と言い、オバマさんですら苦笑した、、、と言うのを思い出しました。 
まあ、制海権を本当に中国に与えたら、太平洋にはお魚が無くなっちゃうのではないでしょうか。 数年前の小笠原海域での珊瑚密漁も記憶に新しいですが、去年は東北北海道の太平洋側で秋刀魚、今年は日本海でスルメイカがやられているそうですよね。 
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北極熊さま (kuranishi masako)
2017-09-01 13:35:54
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 中国の独裁体制とは、突き詰めてみますと、古来から変わらない、”頭(かしら)”による”利権・利益分配システム”なのではないかと推測しております。つまり、配分可能な”利権・利益”は、多ければ多い程、強大な権力を振るえるわけですので、太平洋を”我が物”とすることで、中国が、生物資源や鉱物資源など、太平洋の海洋資源をも根こそぎ奪うリスクも想定しておくべきではないかと思います。
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