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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

グローバリストによる巧妙なる民族主義・新興宗教の利用

2025年03月26日 12時56分49秒 | 統治制度論
 昨日、3月25日、東京地方裁判所は、旧統一教会に対して解散を命じました。同解散命令の発端となったのは、安部元首相暗殺事件であったことは言うまでもありません。犯人とされた山上徹也被告が、母親に対して巨額の献金を強要してきた旧統一教会への恨みを理由として犯行に及んだと供述しているからです。もっとも、同事件につきましては、自家製の銃器を用いた山上被告による単独犯行は物理的にあり得ないことから、組織的な背景が強く疑われるのですが、この問題、結局は、グローバリストによる世界支配の問題に行き着くのではないかと思うのです。

 共産主義につきましても、マルクスは、『共産党宣言』において労働者の組織化の重要性をアピールしています。離れた土地を結ぶ広域的な通信・交通網を介して労働者が連絡し合い、結集して階級や政党を結成すれば、共産主義革命も夢ではないとする主張です。しかしながら、マルクス主義の背後にあって、国民並びに国際社会の分断と対立を狙うグローバリストの思惑が隠れているとしますと、共産主義とは、人々を対立・闘争モードに引き込むための罠であったとする見方もあり得ることとなります。

 この視点からしますと、過激な民族主義や新興宗教もまた、共産主義と同様の役割が担わされている可能性があります。近現代において政治的な勢力ともなった思想集団については、自由主義(ここで言う自由主義は新自由主義に近い・・・)、狂信主義(Fanazism?)、及び、社会・共産主義の三者に大別することができますが、狂信主義の母体となる民族主義や宗教につきましては、これまで、人々の間から自然に醸成されてきた自発的、あるいは、自生的なものと見なされてきました。民族主義は国民の自らが属する国に対する愛国心や独立心の現れでもあり、国家統合や植民地からの脱却に向けた原動力ともなってきました。アイデンティティーとも繋がるこうした国民感情は、国家の独立性のみならず、民主主義をも支えています。また、宗教も、神や仏の存在を意識するのはホモサピエンスとしての人のみですし、利己心を戒め、自己抑制を説く教えや戒律は社会の安定と安全に寄与してきました。ところが、近現代にあって、国民の間に広まった過激な民族主義や新興宗教には、これらの一般的な民族主義とも伝統宗教とも違った側面を持つのです。

 ここで狂信主義と表現した理由は、近現代、とりわけ第一次世界大戦後に出現した民族主義が、ファシズムやナチズムに代表されるように、カリスマ独裁ともいうべき政治体制を志向し、全国民に対してパーソナル・カルト(個人崇拝)の受容と独裁者に対する絶対服従を求めたからです。ところが、ナチスを率いたアドルフ・ヒトラーの容貌は、自らが理想とした‘長身金髪碧眼’を特徴とする‘ゲルマン民族’とは著しく異なりましたし(もっとも、アーリア人は中近東系となる・・・)、ナチスの幹部の多くは、その掲げた反ユダヤ主義に反してユダヤ系でもありました(ヒトラー自身もユダヤ系であったとする疑いもある・・・)。こうした誰の目にも明らかな矛盾があったとしても、それを国民は問うてはならず、ひたすらに指導者に心酔して体制に従うことが強制されるのです。これもまた、‘二重思考’の一種とも言えましょう。

 何れにしましても、民族主義は、国民の間に組織を作り出すに際してその核となり得ます。そして、カリスマ的指導者を崇める多くの熱狂的な心酔者や支持者を得ることで、一大政治勢力にのし上がっていくのです。政党を結成さえすれば、民主的選挙での勝利を経て合法的に政権を獲得することができまるのです。もっとも、グローバリストによる民族主義の利用は、‘偽旗作戦’に気がつかれないまでの間なのですが・・・。

 第二次世界大戦における連合国側の勝利により、一先ずは、それ自体が矛盾を含む狂信的な民族主義は歴史の表舞台から姿を消したように見えます。しかしながら、本当に、これらの集団は、戦争の終結と共に消え去ったのでしょうか。ヨーロッパ諸国では、‘極右’と表現される政治団体が、冷戦の終焉並びにグローバリズムの拡大と歩を合わせ、雨後の竹の子のように出現しています。これらの極右団体も、決して反ユダヤ主義ではありません(因みに、ユダヤ系であるウクライナのゼレンスキー大統領が好む黒シャツ姿は、ファシスト党の黒シャツ隊を想起させる・・・)。そしてもう一つ、グローバリストの実行部隊としての組織化という面において注目すべきが、新興宗教団体なのです(つづく)。

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