万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

皇族に関する情報不足問題

2021年11月02日 16時58分29秒 | 日本政治

今般の秋篠宮家の婚姻問題については、記者会見の席で’誹謗中傷’という言葉が使われたことから、国民世論の反発を買うこととなりました。国民からの懸念や疑問の声をも、自らに対する言葉による攻撃として批判したのですから。しかも、’事実に基づかない’と述べたことが、皇室に関わる情報公開の在り方を問うことともなったのです。

 

 同一件については、宮内庁も、今後は、皇室の情報発信の在り方を再検討するとの方針を示しています。もっとも、皇室を護る立場にある宮内庁の基本方針は、皇族を言葉の暴力による被害者と位置付けた上で、できる限り皇室に関係する情報を国民に伏せる、あるいは、ネット等での自由は情報発信を統制する方向で検討しようということなのでしょう。’菊のカーテン’をさらに厚くしたいのでしょうが、この問題、元を質しますと、皇室に関する情報公開に関する国民的なコンセンサスが形成されていない点にも原因が求められるのではないかと思うのです。

 

 皇室とは世襲制ですので、そのメンバーの婚姻は純粋に私事とは言い切れない側面があります。公的支出には法的根拠がないにもかかわらず、慣習的に配偶者に対しても公費が使われることになるからです。目下、メディアやネット上で報じられているように、皇室を離れ、民間人となったケースであっても、その私的生活や活動において国費によるサポートや特別の便宜を受けるとすれば、ネット上などに流れている配偶者をめぐる疑惑や疑問の真偽を確認したいのは国民の当然の心理と言えましょう。しかも、国民の知りたい情報は、今般の秋篠宮家の婚姻に関するもののみではありません。明治の時代に遡って様々な噂が囁かれ、今日、都市伝説やフェイクニュースとされる情報が流布される原因も、国民に対して十分な情報が提供されていないという現実にあるのです。

 

その一方で、皇族や宮内庁側の説明によれば、これらのマイナス情報やそれらに基づく批判は、全て’事実に基づかない’誹謗中傷’ということなのでしょう。また、SNSやネットでは、皇室が反論できない立場にあることを利用して、根も葉もない事をあたかも事実であるかのように言いふらしているとする指摘もあります。しかしながら、被害者ポジションの同姿勢は、そもそも、上述した国民に対する情報提供の不足に起因しています。国民が知りたい情報については、最初から隠すことなくオープンにしていれば、心を痛めるような’偽情報’が流布される心配もなかったはずなのです(もっとも、皇族が発信する情報に虚偽があってはなりませんので、メディアであれ、一般の国民であれ、自由な事実確認や調査を許すべきですし、仮に皇族や宮内庁側が虚偽の情報を提供した場合には、皇室に対する国民の信頼が失墜してしまう…)。そして、事実にまさる反論もないのです。

 

このように考えますと、公的な存在である限り、皇室には、国民に対して誠実に情報を提供する義務があるように思えます。例えば、皇族の婚姻に関しては、一般国民の婚姻に際して要求されるレベルと同程度、あるいは、それ以上の情報の開示は必要となりましょう。正田家、小和田家、並びに、川島家についても父系母系共に様々な疑惑が指摘されてきましたが、小室家についても、トラブルの原因ともされている母方の家系について詳細を知る国民はほとんどいないのではないでしょうか(たとえ外国人の血脈があったとしても、国民に知らせるべきでは…)。また、皇族関連のあらゆる公費の支出についても、国民に対して会計報告の義務があるはずです。

 

情報量が少ない、あるいは、隠蔽する傾向が強いほど、人々の猜疑心は深まるものです。そして、誰もが’事実であることが確認できる情報があってこそ、国民は、今後における皇族の在り方を確かな基礎情報に基づいて考えることができるのではないかと思うのです。


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