万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

二階幹事長の’側近’が示唆する日本政治の危機

2021年07月01日 14時42分19秒 | 日本政治

 中国によるウイグル人弾圧を非難する国会決議案の採択を見送ったため、自民党も公明党も、すっかり内外からの信頼を落としてしまいました。決議案の内容も、名指しによる批判を避けた生ぬるいものに修正されたにも拘わらず採択が見送られたのですから、両党による強固な拒絶反応が伺えます。その元凶は、親中政党である公明党、並びに、二階俊博幹事長率いる自民党内の親中派にあることは疑い得ません。

 

 国民の多くが二階幹事長に対して批判的な中、メディア各社によって奇妙な記事が報じられることとなりました。それは、6月14日に日本・チベット国会議員連盟の下村博文会長と日ウイグル議連会長の古屋元国家公安委員長等が決議案の採択を求めて二階幹事長の許に直談判に訪れた際に、同幹事長は、一旦、同要請に応じようとした時のことです。ところが、いざ、決議に必要な署名の段となると、二階氏の‘側近’が同幹事長を制止し、結局、了承が得られなかったというのです。

 

 FNNプライムオンラインの記事では、この側近、初出の際には氏名が伏せられており、’側近’とのみ表記されています。しかしながら、翌15日に設けられた最終決定の場となるはずの自公両党間の「二幹二国」にあって、「二階氏側近の林幹事長代理からは、党の部会で協議したことについての説明があった…」とする一文が見えますので、署名を阻止した‘側近’とは、林幹雄自民党幹事長代理なのでしょう(もっとも、何故、はじめから同氏の氏名を表記しなかったのかは謎…)。何れにしましても、日本国の国会による非難決議の成否を決定したのは、‘側近’ということになるのです。

 

 もっとも、同情報は、決議見送りに対する世論の反発に慄いた二階幹事長が、その責任を’側近’に転嫁するために流したフェイクであるのかもしれません。しかしながら、早速、Wikipediaで林幹雄議員を調べてみますと、既に同非難決議をめぐる経緯に関する記事が掲載されており、公明党との協力を重視した同幹事長代理が、「こういうの(ウイグル問題)、あんまり興味ないんだ」と言い放ったとありました。このことから、‘側近’とは、林幹事長代理でおよそ間違いはなさそうです。そして、この‘側近’の存在は、今日、日本国の政治、並びに、民主主義が危機に瀕している証ともなりましょう。

 

何故ならば、今日の日本の政治にあっては、真の決定者が誰であるのか、国民には、分からないからです。以前より、二階幹事長には数人の側近が張り付いており、その言動をチェックしているとする指摘がありました。高齢による認知症が発症しているとの説もありましたが、もしかしますと、同幹事長は、‘側近’によってほぼ完全にコントロールされているのかもしれません。公職とは、その任務を果たすための職権を伴うものですが、誰か別の人物がそれを行使していたとしても、現状では、国民が知ることができないのです。たとえその人物が、中国といった海外勢力のコントロール下にある人物であったとしても…。

 

今般のケースでは、対中非難決議という国民の関心も高い重大問題であったことから’側近’問題が表沙汰となりましたが、水面下にあってはこうした’側近政治’が蔓延していることは想像に難くありません。しかも、’側近政治’の問題は二階幹事長に限ったことではなく、首相をはじめ他の公職にあっても同様のケースを見出すことができましょう。林幹事長代理は、"媚中三人組"の一人としてその名が挙がっているそうですが、事実上の幹事長職の実権を同氏が握っているとしますと、中国が、最も重要視し、目立たないようにバックアップしているのは同氏である可能性もありましょう。二階幹事長は表の‘演じ役’に過ぎず、林幹事長代理らの‘側近’達は、裏の振り付け役であるのかもしれません。そして、シナリオの作成元は、別のところにあるのかもしれないのです。

 

本日は、中国共産党生誕100周年の日に当たります。自民党は、二階幹事長の名義で電報を送ったと報じられており、祝電なのでしょう。中国共産党という政党が暴力革命や文化革命、そして、天安門事件により多くの中国国民を殺害し、今なおもチベット人、ウイグル人、モンゴル人等に対してジェノサイドを行うと共に、香港の自由を奪っている現状を考慮しますと、日本国民の大半は、到底、同党の誕生をお祝いする気持ちにはなれないはずです。そして、今般の一件から、政治と民意とが甚だしく乖離してしまう原因の一つとして、不透明極まりない’側近政治’の問題も見えてきたようにも思えるのです。


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