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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国際法に関する中国の理解能力欠如は深刻

2017年12月26日 20時22分47秒 | 国際政治
本日、日経新聞の朝刊一面に、「現実味を増す米朝衝突」と題して北京大学国際関係学院院長の賈慶国氏とのインタヴューが掲載されておりました。この記事おいて驚かされるのは、氏の国際法に関する理解能力の欠如です。

 賈院長は、中国の国政助言機関である全国政治協商会議の常務委員をも務めており、同国の対外政策の策定にも深くかかわっているものと推測されます。いわば、中国を代表する知識人なのですが、こうした知的エリートが、実のところ、国際法を理解していない現状こそ、チャイナ・リスクの本質とも言えます。同記事の隅から隅を読みましても、国際法、あるいは、国際法秩序という言葉は見当たりません。

 例えば、習近平国家主席が主張する「新型の国際関係」については、米中の主権と領土保全の相互尊重を基礎とする協力関係であり、両国共同して国際社会を指導すべきとする立場を示しています。この立場に従えば、国際法の原則でもある全ての諸国の間の主権平等は無視され、米中以外の他の諸国の主権や領土は侵害されても構わないという、国際法で禁じる侵略容認の結論が導き出されます。

 また、南シナ海問題をめぐる米国や国際社会との衝突の可能性についても、権益主張の時期を正当化の根拠とする全く以って頓珍漢な回答を示しております(昔から主張していたことは国際法違反の正当化事由とはならないし、仲裁判決で、その主張は否定されている…)。さらに、中国が強大となった今日、“積極的措置”という言葉でその強硬論を説明し、弱肉強食の世界への回帰を平然と肯定しているのです。“周辺諸国との意見の相違は平和的な方式で処理するべき”とは付け足し程度で述べていますが、この見解も、前言である“積極的措置”との整合性がとれていません。

 本記事の主要テーマである米朝衝突についても、北朝鮮をめぐる4つの危機を挙げ、米中韓の三国が対応について協議すべきとしつつも、対北禁輸措置に対する中国の慎重姿勢や米朝直接対話に関する悲観的な展望を述べるに留まり、米朝衝突時における具体的な行動については口を濁しています。しかも、日中関係の改善については、日本国には「一帯一路」での“助け”、即ち、“補助役”を期待すると述べ、全く以って、虫が良すぎるとしか言いようがないのです。

 賈院長の発言を読んでみますと、ついつい“インテリヤクザ”という言葉を思い起こしてしまいます。一見、知的エリートに見えながら、無法者であると言う意味において…。日本国政府は、中国には、法の支配や国際法を理解する能力が欠如しているという残念な現実を直視すべきではないかと思うのです。

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