万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

オバマ大統領の被爆地訪問-核廃絶か歴史的和解か慰霊か

2016年04月14日 15時15分04秒 | 国際政治
オバマ氏の広島訪問への障害は? 米国務長官が初の被爆地訪問
 オバマ大統領は、来月の伊勢志摩サミットへの出席を合わせて、被爆地広島の訪問を検討していることを明らかにしております。大統領の積極的な姿勢には、就任以来、”核のない世界”を強く訴えてきた政治信条が伺われます。ノーベル平和賞も、まさに核廃絶に向けたリーダーシップを期待しての受賞でした。

 一瞬にして住民もろともに都市を焼き尽くす核兵器の威力からしますと、”核のない世界”は誰もが望む理想であることには異論はありません。核兵器がこの世から消え去れば、人類は、核戦争による滅亡の恐怖からも解放されるのですから。広島訪問もまた、オバマ大統領にとりましては、核廃絶を訴える絶好の機会となることでしょう。しかしながら、その一方で、日本国の側からしますと、懸念材料がないわけではありません。何故ならば、トランプ候補の発言を発端として、核武装の議論が持ち上がっているからです。その背景には、北朝鮮による年初の”水爆実験”がありますが、北朝鮮に限らず、核保有国である中国も、核の先制使用をも辞さない構えを見せています。日本国を取り巻く核の脅威は年々深まっており、仮に、次期政権において米軍撤退ともなれば、軍事的空白を埋めるべく、日本国は、核武装を含めて様々な対応策を検討する必要があります。最近、トランプ候補も、発言を若干修正しているとも伝わりますが、この不安的な時期に、オバマ大統領が、日本国の核武装の可能性を完全に否定する方向で被爆地で演説を行いますと、日本国の核武装には断固反対する一方で、自らは核兵器を脅迫や攻撃兵器として使用したい中国や北朝鮮はほくそ笑むことになりましょう。

 現職のアメリカ大統領による被爆地訪問は、アメリカ世論の反発が懸念されるものの、日米間の歴史的和解の象徴ともなり、日本国側としてはその実現を心待ちにしています。また、核兵器の犠牲者に対する人道主義的立場からの慰霊であっても、誰もが、好意的に受け止めることでしょう。果たして、オバマ大統領は、広島訪問に際して、核廃絶、歴史的和解、そして、慰霊という3つの側面のうち、何れを強く打ち出すのでしょうが。訪問が決まったわけではないのですが、今から注目されるところなのです。

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