万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トランプ政権下での日米交渉の予測

2016年04月29日 14時58分05秒 | アメリカ
「アメリカ大統領選挙」のニュース
 先日、共和党の候補者争いでトップを走るトランプ氏が明らかにした就任後の外交方針は、否が応でも内外の関心を集めることとなりました。米国第一主義を掲げ、同盟国に対して”経費の負担増か、自主防衛か”を迫っておりますが、仮にトランプ政権が誕生するとしますと、同盟国には、厳しい対米交渉が待っております。

 トランプ氏の主張を文字通りに受け止めますと、同盟国である日本国は、どちらを選択しても、安全保障上のリスクとコストが跳ね上がります。前者でも米国第一主義では、有事に同盟が機能するのか不安ですし、後者でも、中ロの脅威に一国で立ち向かうには、相当の防衛力の増強が必要となるからです。そこで、日本側としては、二者択一から抜け出すための同盟内容の見直し交渉をアメリカに打診する必要があります。考えられる交渉案の第一のポイントは、駐留経費の財政的負担、即ち、”思いやり予算”の増額ではなく、現在、アメリカが日本に配備している部隊、兵器、設備といった軍備、あるいは、それらを用いた米軍のオペレーションにかかる費用、人材を肩代わりすることです。

 トランプ氏は、”財政的、政治的、人的負担”と述べておりましたが、アメリカ側としては、日本国の肩代わり=米国の部分撤退によって軍事予算が圧縮される一方で、日本国としても、”政治的、人的負担”に重点を置くことで、有事に際しては、自国の防衛力として展開することができます。第2のポイントは、現行の日米同盟の問題点として指摘されている片務性の見直しです。アメリカが、尖閣諸島を日米安保の対象に含め、核の傘の提供するならば、日本国もまた、アメリカが攻撃を受けた際にアメリカを支援すべきは、理にも信義にも適っています。

 そして第3のポイントは、仮に、アメリカが、万が一にも有事に際し、第2のポイントで示した日本防衛を途中で放棄する可能性があるならば、イギリスやフランスの立場に倣い、日本国の核武装の承認を求めることです(または、ニュークリアシェアリング条約の締結交渉…)。これは、”保険”としての核武装であり、最後の命綱ともなります。現行のNPT体制の下での核武装は困難ですので、日本国の核武装には、NPTの改正、あるいは、正式な脱退手続きを要しますが、少なくとも、国際社会の承認を得る形での合法的な実現を目指すべきです。アメリカの同意の下であり(”トランプ大統領”は、就任前に日本国の核武装を容認…)、かつ、中国の軍拡を押さえる抑止効果が期待できるならば、他の諸国も認める可能性はあります。

 主要なポイントを3つ挙げてみましたが、日米交渉が決裂した場合を想定した対策を練ることも、日本国政府が、予め準備すべき作業となりましょう。この場合には、中国の軍拡が現実的なリスクである以上、やはり、対中包囲網形成のための新たなる同盟を模索するしかないのかもしれません。日米同盟は、アジアの平和と安全、並びに、海洋法秩序の維持に貢献してきたのですから、日米双方が納得いく形態に変えてゆくことで、可能な限り、日米同盟を維持すべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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