万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

核燃料サイクル破綻論は本当?

2011年08月25日 15時26分05秒 | 日本政治
記者の眼 原発は安いと言ったのは誰だ 発電コストの試算を電事連に頼るな(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 最近、核燃料サイクルは破綻している!とする説をよく聞きます。菅首相の発言にもありましたし、民主党の一部や公明党も、もんじゅの廃炉を主張しているそうです。しかしながら、本当に、核燃料サイクルは破綻しているのでしょうか。

 破綻論の主たる根拠は、(1)もんじゅの事故(2)巨額の予算(3)技術的実現可能性、などです。 (1)については、ナトリウム漏れの原因は突き止められていますし、今年の6月には、落下した装置の回収にも成功しています。ナトリウム漏れ=核爆発でもありませんので、安全対策を強化すれば、危険性を押さえ込むことはできるはずです。
 (2)ついては、既に、もんじゅに2兆4千億、青森県の六ヶ所村の再処理施設の建設費に2兆2千億円の予算がつぎ込まれていることに加えて、「バック・エンド」と呼ばれる再処理には、約19兆円のコストが見込まれていることが、”経済的破綻論”の根拠となっています。しかしながら、原発停止により、年間火力用燃料に3兆円を越える経費がかかることを考えますと、全量リサイクルに要するとされる43兆円も(おそらく40年分の放射性廃棄物)、代替コストの約14年分に過ぎませんし、この額は、MOXなど再利用される燃料費が差し引かれた額ではないようです。そして、高速増殖炉が完成すれば、半永久的にエネルギーを得られるわけですから、巨額の投資分は、容易に回収されることになります。
 最大の難問は(3)ですが、これは、もんじゅを再稼働させてみないことには、商業化の可否を判断することはきません。少なくとも、政治的な理由から廃炉にしては、これまでの努力と苦労が一瞬にして泡と消えることになります。

 以上のように考えますと、核燃料サイクルに関する判断は、もんじゅや六ヶ所村の再処理施設での実験とその結果に基づく検証を待つべきであり、現時点での判断は、時期尚早なのではないかと思うのです。100年をかけてでもこのプロジェクトに成功すれば、核燃料サイクルは、将来のエネルギー問題を解決する切り札となるかもしれないのですから。

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