万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

金融システムは自己制御不能に?

2008年01月29日 18時22分33秒 | 国際経済
上がったり下がったりの表と裏、揺れる市場が「連動」に直面――フィナンシャル・タイムズ(1)(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース

 サブプライム問題の発生以来、金融危機が国境を超えた不安定要因となっています。この問題に対しては、さまざまな要因が指摘されているのですが、行き過ぎた金融自由化もまた、その一つに挙げられるのではないか、と思うのです。

 そもそも、金融の自由化は、金融機関の効率的な資金運用や競争力強化を旗印に進められたものです。国境を超えた資本移動のグローバル化に加え、国家レベルでも、ユニバーサルバンキング化、デリバティブ等の多彩な金融手法の承認、金利規制やサービス業務の緩和などが行われ、最近では、証券や商品など各種市場の融合を目指す方向にもあります。これらの自由化措置によって、金融サービスのレベルが向上したことも確かなのですが、その反面、金融市場のファイアーウォールを取り払うことにもなりました。いざ、市場において連鎖下落が起きると、それを遮断するものが何もなくなってしまったのです。もちろん、政策金利の調整や公開ぺレーションといった手段をもって、中央銀行が混乱の収拾に乗り出したとしても、到底、その勢いを押しとどめそうにはありません。結局、金融システムは、自己制御が不能となって、政府に損失移転(公的資金の導入・・・)するしかなくなってしまったのです。

 金融自由化に端を発した連鎖性が、現在、金融システム全体を揺るがしているするならば、良い自由化と悪い自由化を慎重に見極める必要がありましょう。金融部門におけるコンピュータ技術の導入が飛躍的に取引速度を加速させている状況にあって、何所かにファイアーウォールや制御システムを築きませんと、金融危機の暴走を止めることはできないと思うのです。

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