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「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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違法な都市計画変更により土地を収用されるXを救済する方法(事例研究行政法第2部問題3を題材に)

2014-11-08 23:00:00 | 行政法学
 都市計画のもともとの決定(原決定)通りなら、自宅の土地を収用されることはなかったのに、原決定とは異なる形の道路工事が先になされ、後追いで、そのなされた道路工事の形の都市計画変更決定がなされ、第2次都市計画事業認可がなされました。
 第2次都市計画事業認可により、自宅の土地を収用されるXを救済するには、どうすればよいか。

 第2次都市計画事業認可の取り消しを争えばよいのであるが、すでに時が経ってしまっていたとして。




(事例研究行政法 第二部問題3を題材にして、2013/11/08第3稿)


 第1、土地収用裁決取消訴訟の提起について(設問1に関連して)

1、都市計画変更決定における違法について

(1)手続的違法について
ア、本件では、都市計画変更決定において、都市計画審議会手続の瑕疵を主張しうると考える。
イ、都市計画変更決定において、都市計画決定と同様に、変更内容を公告し(21条2項、17条1項)、その計画変更に対し、住民及び利害関係人は、意見書を提出することができる(21条2項、17条2項)。都道府県は、関係市町村の意見を聴き、かつ、都道府県の都市計画審議会の議を経て、都市計画の変更を決定する(21条2項、18条1項)。その都市計画審議会では、意見書の要旨が提出されることになっている(21条2項、18条2項)。
 都市計画審議会を経ることは、判断の適正と公正を担保することにあり、住民及び利害関係人の意見書が同審議会に提出されるのは、重大な利害関係を有する者に対しても、意見を提出する機会を与え、判断の基礎及びその過程の客観性と公正を保障する趣旨に出たものと考えられる。
 従って、審議会手続については、都市計画法が審議会の諮問を経ることを要求した趣旨に反するような瑕疵が認められる場合、違法になることが考えられる。
ウ、本件では、Xは、原決定の変更に対して意見書を提出し、その意見書は都市計画審議会に要旨が提出された。同審議会において、一委員から変更決定に対して地元では反対がでていないか懸念が示されたが、事務局が、自治会が反対するなどのような特に強い反対運動は見られていないと説明しただけであり、Xからの意見書提出のことやXが反対していることが説明されることはなかった。Xのような反対者がいた場合は、慎重に審議されるはずのところ、事務局の説明は、本件計画変更に反対者がいないことを委員に意識付けたものと考えられる。
エ、従って、事務局から審議会委員に、正しい情報提供がなされたとはいえず、反対者の有無は、決議を左右する重要な情報である以上、同審議会の決議は、重大な瑕疵がある。
 よって、都市計画変更決定には、審議会における手続き上の瑕疵があって違法である。


(2)実体的違法について
ア、本件では、都市計画変更決定において、都市計画法21条違反を主張しうると考える。
 都市計画法21条は、都市計画の変更の事由を規定する。すなわち、①都市計画区域または準都市計画区域が変更されたとき、②調査(同法6条1項、2項、13条1項各号)の結果都市計画を変更する必要が明らかになったとき、③「その他都市計画を変更する必要が生じたとき」である。
 これら変更事由にあたるかどうかは、都市計画変更が、各地域の状況、将来予測、地域の人々の意向、合意形成の過程など総合的に判断して決定変更していくべきことがらであるため、広範な行政庁の裁量によるべきものであると考えられる。ただし、その裁量も無制約のものではなく、都市計画法1条の目的、2条の基本理念、13条の都市計画基準などの制約を受けつつ、裁量権の逸脱濫用があった場合、違法であると考えられる。
イ、形質的違法理由
 本件では、既になされた都市計画施設区域外の事業を追認的に適法化しようとするものであって、21条のいずれの要件にも該当しないにも関わらず、該当するとして計画変更したことは、行政権の逸脱濫用があり、形式的には、違法である。

ウ、実質的違法理由
 ただし、本件では、本来、第1次事業認可の際に都市計画変更をすべきものが、手順を前後したとの行政庁の主張もありうるのであって、本件裁決取消事由の瑕疵を判断する上では、形式的違法事由のみならず、実質的な都市計画変更理由も合わせて検討すべきと考える。
 当初計画では、①中学校設置基準の問題、②土地R1とR2の所有者Zとの関係、③国の施設の問題があって、都市計画変更をしている。
 ①③は、公共的な理由であるが、①は、当初計画を是正する理由として正当であるが、ただし、校舎の位置自体を道路に面する計画から移動することにより対処可能である。③は、当初から、都市計画道路と面するはずであったのであって、理由とはなりえない。②は、土地所有者個人の希望であり他事考慮であるが、Zの反対で収容が長引き、施設設置の時期に間に合わなくなるおそれを考慮したものと考えられる。
 すると、①の公共的な理由はありうるが対応が可能なことがらであり、②③という本来考慮すべきでないものを考慮して、都市計画変更を判断しており、行政権の逸脱濫用があり、実質的にも違法である。


2、都市計画変更決定における違法を、収用裁決の取消訴訟で主張することについて

 1において、都市計画決定変更の違法はあるとしても、では、後続の収用裁決の取消訴訟で主張しうるか問題である。
(1)都市計画変更決定の処分性
道路は、都市計画に掲げられた施設であり(11条1項1号)、都市計画により定められる(4条6項)。都市計画の決定や変更は、都市計画審議会を経て、都道府県が決定し(18条1項)、都市計画で定められた道路などを整備する「都市計画事業」(4条15項)は、市町村が、都道府県知事の認可を受けて施行することとなっている(59条1項)。都市計画事業認定は、収容適格事業であって(69条)、土地収用法の事業認定の要件は、都市計画事業認可によって代えられる(70条)。
 従って、都市計画変更決定は、一種の立法類似の行為としての性格をもつもので国民の権利義務は形成しておらず、処分性はない。
一方で、都市計画決定事業認可は、公権力の行使である公用収用又は公用換地の手法によって、その法的実現が担保されており、処分性がある。
 よって、都市計画変更決定の違法性は、本来、都市計画事業認可の取消訴訟において主張することとなる。


(2)都市計画事業認可の違法性の承継
ア、しかし、本件では、都市計画事業認可は、2005年の段階で認められ、都市計画事業認可の取消訴訟の出訴期間はすでに徒過してしまっている。
 先行行為である都市計画事業認可に後続の収用裁決において、都市計画事業認可の違法を主張しうるのは、違法性が承継される場合である。
イ、違法性の承継
先行行為と後行行為とが相結合して一つの効果の実現をめざし、これを完成させるものである場合には、先行行為の違法性が後行行為に承継され、従って、後行行為の取消訴訟で先行行為の違法性を主張できる。
ウ、都市計画事業認定の違法性が収用裁決に承継されることについて
 土地収用の事業認定と収用裁決の関係においては、違法性の承継が認められる。なぜならば、先行の事業認定が、起業者の申請に基づき起業者に収用権を付与し、土地所有権の消滅取得という法効果は収用裁決によって完成され、両者は、一連の手続きを構成し、一定の法律効果の発生を目指しているといえるからである。
 アで述べたように、都市計画事業認定は、土地収用の事業認定とみなされ、収用裁決へと至るのであって、土地収用の事業認定と同様に、都市計画事業認定の違法性は、土地収用裁決に承継されると考えられる。
エ、さらに、今回の違法性は、処分性のない都市計画変更決定にあるのであって、本来、都市計画事業認可において争うべきであったとはいえ、手続き保障を与えるうえでも、後行行為の土地収用裁決で争えることを認めることが妥当である。




第2、収用裁決の執行停止の申立て(設問2に関連して)

 仮の権利保護として、収用裁決の執行停止の申立て(行訴法25条)が考えられる。

 以下、行訴法25条の各要件を検討する。
1、重大な損害をさけるための緊急の必要(積極要件)について
 執行による重大な損害とは、執行により、原状回復が困難である場合や金銭賠償が不可能な場合であり、損害の回復の困難の程度も考慮し損害の性質・程度、処分の内容・性質を勘案すべき(行訴法25条3項)とされる。
 本件では、夫婦2人で31年間やってきた理髪店・美容室であり、顧客はその地域のなじみの人を中心としたものであると推測できる。そうすると、収用によって移転を余儀なくされた場合には、他の場所で同様の営業を行うことは極めて困難であり、生業の基盤を失うことともなりかねない。金銭補償が
 したがって、積極要件(25条3項)を充足する。
2、公共の福祉への重大な影響(消極要件①)および本案について理由がないとみえるとき(消極要件②)について
 本件執行停止は、あくまでXとの関係における執行停止であり、Xの収用をストップしても、拘束力(行訴法33条4項参照)によって、任意買収も含めてそれまでなされた道路建設に関わる行為のすべての効力を停止しなければならないものではない。
 Xの土地の収用を強行し、道路を完成させることを急ぐ公益上の理由の有無を検討すると、当該道路がG地点で接続する予定の南北に走る道路はさほど基幹道路とは見受けられず、それに接続する本件道路の公益性の必要は、Xの受ける損害の重大性に比して、さほど大きいものとは言えない。従って、消極要件①はない。
 また、裁決の違法性の検討(第1)から、消極要件②はない。
3、小結
 以上から、執行停止は認められるべきと考える。


第3、第2次都市計画事業認可の取消訴訟が提起できたとしたならば (関連問題に関連して)

 第2次都市計画事業認可(以下、「同認可」という。)がなされた際に、Xが、認可取消しの訴えを起こすことで、Xは目的を達することができ、その効力は、第1の収用裁決の取消訴訟を、通常の場合は、上回っていたと考える。以下、論ずる。
 同認可で、事業計画が決定されると、Xを含め道路の周辺に土地を所有する住民の権利に影響を及ぼすことが、一定の限度で具体的に予測することが可能になる。そして、その後の事業計画に定められたことに従って、換地処分が当然に行われることになる。
 Xは、第1のように、土地収用裁決の段階で取消訴訟を提起できるが、その場合に、たとえ違法の主張が認められたとしても、事情判決(行訴法31条1項)がされる可能性が相当程度あり、救済が十分されるとは言いがたい。
 実行的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、事業決定を対象とした取消訴訟の提起することに合理性があると考える。
 ただし、本件の場合は、第2次都市計画事業認可の段階で、すでに工事は進んでいるのであって、事情判決がなされてしまう可能性が同様に残る。

以上
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11月9日(日)午前、月島3丁目こども元気クリニック5547-1191急病対応実施、インフル接種も可能

2014-11-07 17:30:28 | 日程、行事のお知らせ

11月9日(日) 午前 中央区月島3丁目 こども元気クリニック・病児保育室03-5547-1191急病対応致します。
 

 1)咳の風邪、2)お腹の風邪、3)お熱だけの風邪の3つのお風邪がそれぞれ、今、たいへん流行っています。
 急に寒くなって、気候の変化に体が対応できていないことが、流行の原因のひとつと考えます。
 
 咳、鼻水のお風邪が多いように感じます。
 体調崩されておられませんか?
 


 おとなも、こどもの風邪をもらいます。
 そのような場合、お子さんとご一緒に、親御さんも診察いたしますので、お気軽にお声掛けください。



 
 なおったお子さんには、日曜日に、登園許可証も記載します。
 月曜日朝一番から登園できますように、ご利用ください。



 合わせて、平日なかなか時間が作れない場合でも、休日も、予防接種を実施いたしますので、ご利用ください。

 インフルエンザ予防接種(チメロサールの含有のない、より安全なものを使用しています。)も開始し、実施しています。
 
 
 お大事に。

こども元気クリニック・病児保育室
小坂和輝

中央区月島3-30-3
電話 03-5547-1191

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場外車券施設設置に対し大阪の医師が立ち上がった事件「サテライト大阪事件」に学ぶ

2014-11-07 12:38:22 | 医療

 最高裁H21.10.15場外車券発売施設設置許可処分取消請求事件(「サテライト大阪」事件)を考えます。

 重要な判例です。

 場外車券発売施設ができることによる生活環境の悪化を懸念し、周辺住民および医療施設の医師が、大阪で立ち上がった事案です。


 こんなことないと思いますが、
 築地市場を現在地で再整備すべきであるところ、違法な土壌汚染地への移転を東京都が強行し、その跡地に、カジノを誘致するなどの話が出た場合、中央区民としても立ち上がらねばならない状況にになります。

 早くから、そのようなものはいれず、守るべきものを守るという強い意志を、私達は、持たねばならないと考えます。


*************************************
 
1、事案の概要
 経済産業大臣が自転車競技法(平成19年法律82号による改正前のもの、以下「法」という。)4条2項に基づき、H17年9月26日付けで訴外株式会社Aに対し場外車券発売施設(以下「本件施設」という。)の設置許可(以下、「本件許可」という。)をしたところ、H18年3月に本件施設の周辺住民(原告・控訴人・被上告人)が本件許可の取消し求めた事案である。被上告人のうち4名は本件施設の設置から約120m、約180m、約200m、約800m離れた場所で病院等を開設する医師であり、その他は本件施設の敷地から1000m以内に居住し、または事業を営む者である。本件施設は、商業地域で建設される7階建て地下1階の建物であり、A社から競輪施行者である大阪市に対して賃貸され運営等を行うとされている。年間340日の営業と1日当たり約1700人の来場が見込まれていた(H19年3月に開業)。

2、訴訟選択
 設置許可処分の取消訴訟
 経済産業大臣が、平成17年9月26日付けで、A株式会社に対してした場外車券発売施設「サテライト大阪」の設置許可処分を取り消す。


3、争点
(1)本件許可の取消しを求める原告適格の有無
(2)①が肯定された場合、本件許可の適否


4、第1、2審等の判断
(1)第1審(大阪地判H19.3.14)
 法や規則等は、原告の生活環境に係わる利益を個々人の個別具体的利益として保護する趣旨を含まないとして原告適格を全面的に否定。
 *通達まで含め原告適格の判断材料にしている。
(2)控訴審(大阪高判H20.3.6)
 法や規則等は、周辺住民の健康や生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護する趣旨であるなどとして全員に原告適格を認めた。
 *通達まで含め原告適格の判断材料としている。
 *風営法が、関係法令性を持たないとしている。


5、判旨(基本的に判決文を抜粋する形で記載)
 一部破棄自判、一部破棄差戻し。

 本判決は、小田急訴訟最高裁判決(最大判H17.12.7)の示した一般的な判断基準を引用して本件の原告適格について以下のように判示し、本件施設から200m以内で医療施設等を開設する3名につき、原告適格の有無に審議を尽くさせるため第1審に差し戻した。

(1)一般的に、場外施設が設置、運営された場合に周辺住民等が被る可能性のある被害は、交通、風紀、教育など広い意味での生活環境の悪化であって、その設置、運営により、直ちに周辺住民等の生命、身体の安全や健康が脅かされたり、その財産に著しい被害が生じたりすることまでは想定しがたい。そして、このような生活環境に関する利益は、基本的には公益に属する利益というべきであって、法令に手掛かりとなることが明らかな規定がないにもかかわらず、当然に、競輪法が周辺住民等において上記のような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解するのは困難である。

(2)ア位置基準は,場外施設が医療施設等から相当の距離を有し,当該場外施設において車券の発売等の営業が行われた場合に文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないことを,その設置許可要件の一つとして定めるものである。場外施設が設置,運営されることに伴う上記の支障は,基本的には,その周辺に所在する医療施設等を利用する児童,生徒,患者等の不特定多数者に生じ得るものであって,かつ,それらの支障を除去することは,心身共に健康な青少年の育成や公衆衛生の向上及び増進といった公益的な理念ないし要請と強くかかわるものである。法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは,第一次的には,上記のような不特定多数者の利益であるところ,それは,性質上,一般的公益に属する利益であって,原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。したがって,場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や,医療施設等の利用者は,位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。

イもっとも,場外施設は,多数の来場者が参集することによってその周辺に享 楽的な雰囲気や喧噪といった環境をもたらすものであるから,位置基準は,そのような環境の変化によって周辺の医療施設等の開設者が被る文教又は保健衛生にかかわる業務上の支障について,特に国民の生活に及ぼす影響が大きいものとして,その支障が著しいものである場合に当該場外施設の設置を禁止し当該医療施設等の開設者の行う業務を保護する趣旨をも含む規定であると解することができる。したがって,仮に当該場外施設が設置,運営されることに伴い,その周辺に所在する特定の医療施設等に上記のような著しい支障が生ずるおそれが具体的に認められる場合には,当該場外施設の設置許可が違法とされることもあることとなる。そうすると、当該場外施設の設置,運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は,位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。そして,このような見地から,当該医療施設等の開設者が上記の原告適格を有するか否かを判断するに当たっては,当該場外施設が設置,運営された場合にその規模,周辺の交通等の地理的状況等から合理的に予測される来場者の流れや滞留の状況等を考慮して,当該医療施設等が上記のような区域に所在しているか否かを,当該場外施設と当該医療施設等との距離や位置関係を中心として社会通念に照らし合理的に判断すべきものと解するのが相当である。

 これを本件についてみると、本件敷地の周辺から約800m離れた場所に医療施設を開設するXが位置基準を根拠として本件許可の取消を求める原告適格を有するとは言えないが、本件施設の周辺から約120mないし200m離れた場所に医療施設を開設するXらについては、上記の考慮要素を勘案することなく上記の原告適格を有するか否かを適格に判断することは困難と言うべきである。

(3)次に、次に,周辺環境調和基準は,場外施設の規模,構造及び設備並びにこれらの配置が周辺環境と調和したものであることをその設置許可要件の一つとして定めるものである。同基準は,場外施設の規模が周辺に所在する建物とそぐわないほど大規模なものであったり,いたずらに射幸心をあおる外観を呈しているなどの場合に,当該場外施設の設置を不許可とする旨を定めたものであって,良好な風俗環境を一般的に保護し,都市環境の悪化を防止するという公益的見地に立脚した規定と解される。また,「周辺環境と調和したもの」という文言自体,甚だ漠然とした定めであって,位置基準が上記のように限定的要件を明確に定めているのと比較して,そこから,場外施設の周辺に居住する者等の具体的利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは困難といわざるを得ない。

 したがって,被上告人らは,周辺環境調和基準を根拠として本件許可の取消しを求める原告適格を有するということはできないというべきである。


6、差し戻し審以後
(1)差戻審(大阪地判H24.2.29)
 差し戻しされた3名の原告適格を認めたものの、業務上の著しい支障の有無を具体的に検討した上その可能性は低いとして請求を棄却。

(2)同控訴審(大阪高判H24.10.11)
 請求棄却。


7、本判例の意義と問題点
1、意義
 場外施設をめぐる周辺住民等の原告適格を判断した最初の最高裁判決。
 本判例は、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益は法によって個別的に保護された利益であるとして医療施設等開設者には原告適格が認められる可能性があるが、他方、交通、風紀、教育上の良好な環境または良好な風俗環境は個別的に保護された利益ではないとして周辺住民・医療施設等利用者には原告適格を否定した。

2、問題点
 周辺の生活環境の保護を適切に代弁できるのは、当然、周辺住民であろう。それゆえ、本件で問題となった環境利益を真に適切に代表できる者に原告適格を否定した本判決には大きな欠点がある。こうした欠点を克服するためには、a)個別保護要件を放棄する、b)個別保護要件をより柔軟に解釈適用する、c)生活環境の悪化から生ずる大きなストレス・不安感といった精神的・心理的被害も個別保護要件を満たす方向で解釈する、d)本判決がほとんど検討していない行訴法9条2項の第4考慮事項をより慎重に検討するなどいくつかの戦術があろう。(環境百選第2版98事件、常岡孝好)


8、関係法令
(1)自転車競技法(平成19年法律第82号による改正前のもの)4条1項、2項
第四条 車券の発売等の用に供する施設を競輪場外に設置しようとする者は、経済産業省令の定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。当該許可を受けて設置された施設を移転しようとするときも、同様とする。
② 経済産業大臣は、前項の許可の申請があつたときは、申請に係る施設の位置、構造及び設備が経済産業省令で定める基準に適合する場合に限り、その許可をすることができる。


(2)自転車競技法施行規則(平成18年経済産業省令第126号による改正前のもの)14条1項、2項
(場外車券発売施設の設置等の許可の申請)
第十四条 法第四条第一項の規定により、競輪場外における車券の発売等の用に供する施設(以下「場外車券発売施設」という。)の設置又は移転の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した許可申請書を、当該場外車券発売施設を設置し又は移転しようとする場所を管轄する経済産業局長を経由して、経済産業大臣に提出しなければならない。
一 申請者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
二 場外車券発売施設の設置又は移転を必要とする理由
三 場外車券発売施設を設置し又は移転しようとする場所
四 場外車券発売施設の構造及び設備の状況
五 場外車券発売施設の敷地に係る土地又は建物に関する権利関係
六 入場者数及び車券の発売金額の見込み並びにそれらの計算の基礎
七 場外車券発売施設の設置又は移転に必要とする経費の見積額及びその計算の基礎並びに経費の調達方法
八 場外車券発売施設が払戻金の交付を当該交付に係る競走が実施される日のすべての競走が終了するまで行わない施設であるときは、車券の発売等の時間その他の運用方法
2 前項の許可申請書には、次に掲げる図面を添付しなければならない。
一 場外車券発売施設付近の見取図(敷地の周辺から千メートル以内の地域にある学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設の位置並びに名称を記載した一万分の一以上の縮尺による図面)
二 場外車券発売施設を中心とする交通の状況図
三 場外車券発売施設の配置図(千分の一以上の縮尺による図面)


(3)自転車競技法施行規則(平成18年経済産業省令第126号による改正前のもの)15条1項1号
(許可の基準)
第十五条 法第四条第二項の経済産業省令で定める基準(払戻金又は返還金の交付のみの用に供する施設の基準を除く。)は、次のとおりとする。
一 学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設から相当の距離を有し、文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないこと。


(4)自転車競技法施行規則(平成18年経済産業省令第126号による改正前のもの)15条1項4号
(許可の基準)
第十五条 法第四条第二項の経済産業省令で定める基準(払戻金又は返還金の交付のみの用に供する施設の基準を除く。)は、次のとおりとする。
四 施設の規模、構造及び設備並びにこれらの配置は、入場者の利便及び車券の発売等の公正な運営のため適切なものであり、かつ、周辺環境と調和したものであって、経済産業大臣が告示で定める基準に適合するものであること。

以上

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村道の自由使用に関する判例S39.1.16

2014-11-06 23:00:00 | 行政法学
 村道の自由使用に関する判例S39.1.16です。

 村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有するとのことです。




*********************************************


事件番号

 昭和35(オ)676



事件名

 村道共用妨害排除請求



裁判年月日

 昭和39年1月16日



法廷名

 最高裁判所第一小法廷



裁判種別

 判決



結果

 破棄差戻



判例集等巻・号・頁

 民集 第18巻1号1頁




原審裁判所名

 名古屋高等裁判所



原審事件番号





原審裁判年月日

 昭和35年2月29日




判示事項

 一 村民の村道使用関係の性質
二 村民の村道使用権に対する侵害の継続と妨害排除請求権の成否



裁判要旨

 一 村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有する。

二 村民の右村道使用の自由権に対して継続的な妨害がなされた場合には、当該村民は、右妨害の排除を請求することができる。



参照法条

 地方自治法(昭和38年6月8日法律99号による改正前のもの)10条,民法709条,民法710条,民法198条
*********************
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/244/056244_hanrei.pdf


         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

         理    由
 上告人らの上告理由について。
 上告人らの本件訴の趣旨とするところは次の如くである。すなわち、本件道路は
三重県安芸郡a村の村道であつて、その道路敷の所有権も同村に属し、過去数十年
の間同村の管理の下に、一般住民の共用に供せられてきたものであるが、該道路は
上告人らの住宅及び宅地の西側に接着している関係もあり、又上告人らの耕地が右
道路の西方に密集している関係上、上告人らの生活及び農業経営は、専ら右村道を
通じてなされており、現に過去数十年の永きに亘つて上告人らは居宅及び宅地の出
入に又耕地えの通路として耕作のための肥料、苗、農具、農作物等の運搬のため一
日数回、多いときは十数回も通行、利用して来たものであり、また右のような事情
であつたので、上告人らは自家宅地又は本道えの出入口等数ケ所に自費を以て踏板
を架したり、道路敷保護のため自己の宅地を潰して排水溝を開設したりして来た。
ところが、被上告人は昭和三元年一月頃から、右道路に架設されていた村有の板橋
二個及び上告人Aが架けた溝板を恣に撤去処分し、又右道路上に槇を植栽し或は石
材を堆積したりなどして、上告人ら住宅と通路口に木柵二個(高さ一丈長さ二間位
のものと、高さ四尺長さ五尺位のものと)を設置して上告人らの通行は勿論一般住
民の通行を不可能ならしめている。のみならず、被上告人は上告人らの制止にかか
わらず、右道路上に基礎コンクリート木造平家建の納屋建坪五坪を建築完成した上
更に右建物の北側に前同様の基礎構造を有する建坪二坪の本屋建増工事を完成し、
その余の道路敷もすべて排他的占有をなすに至り、延いて該道路の機能一切を消滅
に帰さしめているのである。よつて、上告人らは被上告人に対し上叙の通行妨害の
- 1 -
排除を求める為め本訴に及んだものであるというのである。これに対し、原判決の
引用する第一審判決は上告人らが本件道路に対し、排他的使用権を有する法律上の
根拠は見当らない。してみれば、上告人らは本件道路に対し単に村民としての通行
の自由を有するに過ぎないものと解すべきであり、云い換えれば上告人らは地方自
治団体が村道を開設していることの反射的効果として村道を使用できる利益を有す
るに過ぎないもので、固有の権利を有するものではない。そしてこのように反射的
利益を享受し得るに過ぎない者は、第三者の行為によつて、その利益の亨受が妨害
されたからといつて、直ちにその第三者に対して妨害排除を請求する権利を存する
ものではないと判示し、依つて上告人らの本訴請求を排斥しているものであること
は判文上明らかである。
 しかしながら、思うに、地方公共団体の開設している村道に対しては村民各自は
他の村民がその道路に対して有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自
己の生活上必須の行動を自由に行い得べきところの使用の自由権(民法七一〇条参
照)を有するものと解するを相当とする。勿論、この通行の自由権は公法関係から
由来するものであるけれども、各自が日常生活上諸般の権利を行使するについて欠
くことのできない要具であるから、これに対しては民法の保護を与うべきは当然の
筋合である。故に一村民がこの権利を妨害されたときは民法上不法行為の問題の生
ずるのは当然であり、この妨害が継続するときは、これが排除を求める権利を有す
ることは、また言を俟たないところである。これを上告人らの主張に即して考える
に、もし、上告人らの主張にして真実に合致するならば、上告人らは被上告人に対
し所論妨害の排除を求め得べき権利あるやも計り難いのである。然るに原判決は上
告人ら主張の事実関係については十分に審究を尽さず、ただ漫然と上叙の法律論に
のみ拘着して、上告人らの請求を排斥し去つているのである。これでは審理不尽理
由不備の欠陥を包蔵するか、或は原判決に影響するところの重大な法令違背を犯し
- 2 -
ているとの誹を免れないものであつて、論旨は結局理由あるに帰し、原判決は到底
破棄を免れないものと言わなければならない。
 よつて、民訴四〇七条一項に従い裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   朔   郎
 裁判官高木常七は退官につき署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
- 3 -
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社会の評価が分かれる分岐点は、会社の言動に“信”がおかれているかどうか

2014-11-06 22:00:00 | 倫理(医療倫理、弁護士倫理、企業倫理…)

 社会の評価が分かれる分岐点は、会社の言動に“信”がおかれているかどうか

 これには、普段からの信頼感と、

 事故時に対応する信頼との二つがある。


 危機発生を想定したことに即して言えば次の点に集約される。


1)事実が公表されているか(真実性)


2)すべてが開示されているか(隠された事実がないか)


3)だれにでもわかる形で公表(表示)されているか(認知の容易性、視認性)


4)危険に対する回避行動が示されているか(ソリューションの提示)


5)回避行動は実現可能なものか(実現可能性)


6)先々の見通しが示されているか(展望)


7)真にステークホルダーのためになったものか(企業エゴ)になっていないか


 以上が疑われたときには、なにを言っても信用してもらえない
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段ボール小屋の撤去に関する判例H14.9.30威力業務妨害罪

2014-11-05 23:00:00 | 行政法学
 段ボール小屋の撤去に関する判例H14.9.30、威力業務妨害罪に関連しています。


***************************


事件番号

 平成10(あ)1491



事件名

 威力業務妨害被告事件



裁判年月日

 平成14年9月30日



法廷名

 最高裁判所第一小法廷



裁判種別

 決定



結果

 棄却



判例集等巻・号・頁

 刑集 第56巻7号395頁




原審裁判所名

 東京高等裁判所



原審事件番号

 平成9(う)853



原審裁判年月日

 平成10年11月27日




判示事項

 1 東京都による動く歩道の設置に伴う環境整備工事が威力業務妨害罪にいう「業務」に当たるとされた事例
2 東京都による動く歩道の設置に伴う環境整備工事に威力業務妨害罪としての要保護性が肯定された事例



裁判要旨

 1 東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため,通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後,通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は,自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反して段ボール小屋を撤去した場合であっても,威力業務妨害罪にいう「業務」に当たる。

2 東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため,通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後,通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は,自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反して段ボール小屋を撤去するに及んだものであっても,同工事が公共目的に基づくものであるのに対し,路上生活者は通路を不法に占拠していた者であり,行政代執行の手続を採ってもその実効性が期し難かったことなど判示の事実関係の下では,威力業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵を有しない。



参照法条

 刑法234条

*****************
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/001/050001_hanrei.pdf

判決文全文

            主     文
       本件各上告を棄却する。


            理     由
 被告人両名の弁護人大口昭彦,同向井千景,同森川文人及び同萱野一樹の上告趣
意は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑
訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ,本件における威力業務妨害罪の成否について職権で判断す
る。
 1 原判決の認定によれば,本件に関する事実関係は,以下のとおりである。
 (1) 東京都は,東京都庁の新宿移転に伴い,通勤者等の通行人の増加に対処し
,高齢者等のための利便性を高めるという目的から,新宿駅西口から新宿副都心へ
通じる都道新宿副都心4号線(以下「本件通路」という。)に水平エスカレーター
(以下「動く歩道」という。)を設置することを計画し,平成7年12月8日,そ
の設置計画を発表した。
 (2) 本件通路は,地下道となっていて,寒さや雨,風をしのげることから,段
ボールを用いた簡易な小屋(以下「段ボール小屋」という。)等の中で起居する路
上生活者が集まるようになり,その数は,平成8年1月13日の時点で約200名
に達していた。このような状況に対しては,周辺の商店街の事業者や通行人等から
,東京都に対してしばしば苦情が寄せられていた。本件通路上に段ボール小屋を置
いて起居していた路上生活者は,本件通路を占用する何らの権原を有するものでは
なかった。
 (3) 東京都は,動く歩道の設置によって本件通路からの退去を求められる路上
生活者等を保護するため,臨時保護施設を開設することとし,同月中旬,港区aに
- 1 -
保護人員を約200名とする同施設を設け,食事や衣服を提供し,健康診断を行う
とともに,自立支援策として,就労のあっせん等を行うことにした。東京都は,本
件工事に着手するに先立ち,平成7年12月15日から平成8年1月13日までの
間,3回にわたって周知活動を行い,本件工事を実施する旨の事前通告及び上記臨
時保護施設の案内を行うとともに,路上生活者に自主的退去を促した。
 (4) 東京都は,同月24日午前6時から動く歩道の設置に伴う環境整備工事(
以下「本件工事」という。)を実施することとした。本件工事は,①路上生活者が
自主的に退去した後に残された段ボールやごみ等を撤去する作業,②工事区域内に
歩行者が入らないようにするためのバリケードやカラーコーンを設置する作業,③
動く歩道を設置するため床のタイル舗装を撤去する作業から成り,それぞれ民間業
者に請け負わせるものであった。
 (5) 被告人両名は,本件工事を実力で阻止するため,同日午前2時ころから,
多数の路上生活者に指示して,本件通路の都庁側出入口に強化セメント製植木ボッ
クス,ベニヤ板等でバリケードを構築し,その内側で約100名の者とともに座り
込むなどして東京都職員らの同工事区域内への進入を阻止した上,同日午前6時3
0分ころから同日午前8時10分ころまでの間,警備員に補助させて本件工事に従
事していた東京都職員らに対し,鶏卵,旗竿,花火等を投げ付け,消火器を噴射し
,「帰れ,帰れ」とシュプレヒコールを繰り返し怒号するなどして座込みを続けた。
 (6) 警察官は,再三警告を発していたが,同日午前7時34分ころ,座込みを
続ける者らを1人ずつ引き抜く排除行為を始め,排除した者を近隣の公園まで連行
するなどして,同日午前8時10分ころ,これを了した。
 (7) 東京都職員は,予定より遅れて,同日午前8時20分ころ,本件工事に着
手し,臨時保護施設への入所受付を行うとともに,本件通路において説得活動を行
い,残っていた路上生活者数名に自主的に退去するよう促したところ,これらの者
- 2 -
は,自ら本件通路から退去した。
 (8) 東京都職員は,同日午前11時半ころまでに,自主的な退去者のもののほ
か,警察官に排除,連行された者のものを含め,本件通路に放置されていた段ボー
ル小屋を全部撤去し,鍋,釜等の有価物については,返還方法を掲示板に案内する
措置を講じた上保管した。
 2 【要旨1】以上の事実関係によれば,本件において妨害の対象となった職務
は,動く歩道を設置するため,本件通路上に起居する路上生活者に対して自主的に
退去するよう説得し,これらの者が自主的に退去した後,本件通路上に残された段
ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事であって,強制力を行
使する権力的公務ではないから,刑法234条にいう「業務」に当たると解するの
が相当であり(最高裁昭和59年(あ)第627号同62年3月12日第一小法廷
決定・刑集41巻2号140頁,最高裁平成9年(あ)第324号同12年2月1
7日第二小法廷決定・刑集54巻2号38頁参照),このことは,前記1(8)のよ
うに,段ボール小屋の中に起居する路上生活者が警察官によって排除,連行された
後,その意思に反してその段ボール小屋が撤去された場合であっても異ならないと
いうべきである。
 3 さらに,本件工事が威力業務妨害罪における業務として保護されるべきもの
といえるかどうかについて検討する。
 【要旨2】本件工事は,上記のように路上生活者の意思に反して段ボール小屋を
撤去するに及んだものであったが,前記1の事実関係にかんがみると,本件工事は
,公共目的に基づくものであるのに対し,本件通路上に起居していた路上生活者は
,これを不法に占拠していた者であって,これらの者が段ボール小屋の撤去によっ
て被る財産的不利益はごくわずかであり,居住上の不利益についても,行政的に一
応の対策が立てられていた上,事前の周知活動により,路上生活者が本件工事の着
- 3 -
手によって不意打ちを受けることがないよう配慮されていたということができる。
しかも,東京都が道路法32条1項又は43条2号に違反する物件であるとして,
段ボール小屋を撤去するため,同法71条1項に基づき除却命令を発した上,行政
代執行の手続を採る場合には,除却命令及び代執行の戒告等の相手方や目的物の特
定等の点で困難を来し,実効性が期し難かったものと認められる。そうすると,道
路管理者である東京都が本件工事により段ボール小屋を撤去したことは,やむを得
ない事情に基づくものであって,業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法
的瑕疵があったとは認められない。
 4 以上のとおり,本件工事は,刑法上威力業務妨害罪により保護される業務に
当たると解するのが相当であるから,被告人らの行為について同罪の成立を認めた
原判断は正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 町田 顯 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 深澤
武久 裁判官 横尾和子)
- 4 -
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社会福祉法人の設置運営する児童養護施設での子どもの事故に対し、国家賠償請求H19.1.25

2014-11-04 23:00:00 | 行政法学
 社会福祉法人の設置運営する児童養護施設での子どもの事故に対し、国家賠償請求H19.1.25の重要判例です。

***************************




事件番号

 平成17(受)2335



事件名

 損害賠償請求事件



裁判年月日

 平成19年1月25日



法廷名

 最高裁判所第一小法廷



裁判種別

 判決



結果

 その他



判例集等巻・号・頁

 民集 第61巻1号1頁




原審裁判所名

 名古屋高等裁判所



原審事件番号

 平成16(ネ)1125



原審裁判年月日

 平成17年9月29日




判示事項

 1 都道府県による児童福祉法27条1項3号の措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の職員等と国家賠償法1条1項にいう公権力の行使に当たる公務員
2 国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に加えた損害につき国又は公共団体が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合における使用者の民法715条に基づく損害賠償責任の有無



裁判要旨

 1 都道府県による児童福祉法27条1項3号の措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の長及び職員は,国家賠償法1条1項の適用において都道府県の公権力の行使に当たる公務員に該当する。

2 国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても,当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うときは,使用者は民法715条に基づく損害賠償責任を負わない。



参照法条

 (1,2につき)国家賠償法1条1項 (1につき)児童福祉法27条1項3号 (2につき)民法715条


**********

判決文 全文

- 1 -
主文
1 原判決中,平成17年(受)第2335号上告人敗
訴部分を破棄する。
2 前項の部分につき,平成17年(受)第2335号
被上告人の控訴を棄却する。
3 平成17年(受)第2336号上告人の上告を棄却
する。
4 第1項及び第2項の部分に関する控訴費用及び上告
費用は,平成17年(受)第2335号被上告人の
負担とし,前項の部分に関する上告費用は,平成1
7年(受)第2336号上告人の負担とする。


理由
第1 事案の概要
1 原審が適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 平成17年(受)第2335号上告人(以下「被告Y」という。)は,児
童福祉法(以下「法」という。)41条の児童養護施設であるA学園を設置運営す
る社会福祉法人である。
(2) 平成17年(受)第2335号被上告人・同第2336号被上告人(以下
「原告」という。)は,昭和63年11月生まれであり,母親が病気療養のため家
庭での養育が困難になったことから,平成4年1月10日,平成17年(受)第2
336号上告人(以下「被告県」という。)による法27条1項3号に基づく入所
措置(以下「3号措置」という。)によりA学園に入所した。
- 2 -
(3) 原告は,平成10年1月11日,午後3時30分ころから約30分間にわ
たり,A学園の施設内で,原告と同じく3号措置により同学園に入所中の児童ら4
名から暴行を受け,右不全麻痺,外傷性くも膜下出血等の傷害を負い,入院治療を
受けたが,高次脳機能障害等の後遺症が残った。上記暴行は,直前に同学園の職員
(以下「本件職員」という。)から,上記4名の児童の中の1名が原告を蹴ったこ
とで注意を受けた腹いせに,本件職員が事務室に戻った間に行われたものであっ
た。
(4) 本件職員には,原告の上記受傷につき,入所児童を保護監督すべき注意義
務を懈怠した過失があった。
2 本件は,原告が,本件職員の上記過失によって被った損害について,A学園
の施設長及び職員(以下,併せて「職員等」という。)による入所児童の養育監護
行為は被告県の公権力の行使に当たるから,被告県は国家賠償法1条1項に基づき
賠償責任を負い,被告県が同賠償責任を負う場合も,被告YはA学園の職員等によ
る不法行為につき民法715条に基づき使用者責任を負うと主張して,被告らに対
し,それぞれ損害賠償を求める事案である。
3 原審は,前記事実関係の下,次のとおり判断して,原告の被告らに対する請
求を各3375万1724円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度でい
ずれも認容すべきものとした。
(1) A学園は,民営の児童養護施設であり,その職員等は組織法上の公務員で
はないが,同学園が被告県から委託されて行う入所児童の養育監護行為は,高度な
公共的性質を有する行為であって,純然たる私経済作用ではないから,国家賠償法
1条1項にいう公権力の行使に当たる。
- 3 -
したがって,入所児童を養育監護するA学園の職員等は,被告県のために公権力
の行使たる公務の執行に携わる者として,国家賠償法上の公務員に該当し,被告県
は,国家賠償法1条1項に基づき,A学園の職員である本件職員の前記過失により
原告が被った損害を賠償する責任を負う。
(2) 本件職員は,A学園の入所児童の養育監護という被告Yの事業の執行につ
いて,入所児童の監督上の注意義務違反により原告に損害を与えたものであるか
ら,被告Yは,民法715条に基づき,原告が被った損害を賠償する責任を負う。
国家賠償法1条1項は,公権力の行使に当たる公務員が違法に他人に損害を与えた
ときは,当該公務員との関係で公務員個人の責任を排除したにすぎず,公務員の行
為の違法性が消滅するものではないから,組織法上の公務員ではないが国家賠償法
上の公務員に該当する者の使用者の不法行為責任まで排除するものとはいえない。
第2 平成17年(受)第2336号上告代理人後藤武夫の上告受理申立て理由
について
1 所論は,A学園における入所児童の養育監護行為が被告県の公権力の行使に
当たるとした原審の判断について,法27条1項3号及び国家賠償法1条1項の解
釈の誤りがある旨をいうものである。
2 法は,国及び地方公共団体が,保護者とともに,児童を心身ともに健やかに
育成する責任を負うと規定し(法2条),その責務を果たさせるため,都道府県に
児童相談所の設置を義務付け(法15条〔平成16年法律第153号による改正前
のもの〕),保護者がないか又は保護者による適切な養育監護が期待できない児童
(以下「要保護児童」という。)については,都道府県は,児童相談所の長の報告
を受けて児童養護施設に入所させるなどの措置を採るべきこと(法27条1項3
- 4 -
号),保護者が児童を虐待しているなどの場合には,都道府県は,親権者又は後見
人(以下,併せて「親権者等」という。)の意に反する場合であっても,家庭裁判
所の承認を得て児童養護施設に入所させるなどの措置を採ることができること(法
28条),都道府県が3号措置により児童を児童養護施設(国の設置する施設を除
く。)に入所させた場合,入所に要する費用のほか,入所後の養育につき法45条
に基づき厚生労働大臣が定める最低基準を維持するために要する費用は都道府県の
支弁とし(法50条7号),都道府県知事は,本人又はその扶養義務者から,負担
能力に応じて費用の全部又は一部を徴収することができること(法56条2項),
児童養護施設の長は,親権者等のない入所児童に対して親権を行い,親権者等のあ
る入所児童についても,監護,教育及び懲戒に関し,その児童の福祉のため必要な
措置を採ることができること(法47条)などを規定する。
このように,法は,保護者による児童の養育監護について,国又は地方公共団体
が後見的な責任を負うことを前提に,要保護児童に対して都道府県が有する権限及
び責務を具体的に規定する一方で,児童養護施設の長が入所児童に対して監護,教
育及び懲戒に関しその児童の福祉のため必要な措置を採ることを認めている。上記
のような法の規定及び趣旨に照らせば,3号措置に基づき児童養護施設に入所した
児童に対する関係では,入所後の施設における養育監護は本来都道府県が行うべき
事務であり,このような児童の養育監護に当たる児童養護施設の長は,3号措置に
伴い,本来都道府県が有する公的な権限を委譲されてこれを都道府県のために行使
するものと解される。
したがって,都道府県による3号措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童
養護施設に入所した児童に対する当該施設の職員等による養育監護行為は,都道府
- 5 -
県の公権力の行使に当たる公務員の職務行為と解するのが相当である。原審の判断
はこれと同趣旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することがで
きない。
第3 平成17年(受)第2335号上告代理人多田元ほかの上告受理申立て理
由について
1 所論は,被告Yが使用者責任を負うとした原審の判断について,国家賠償法
1条1項,民法715条の解釈の誤りがある旨をいうものである。
2 国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が,
その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合に
は,国又は公共団体がその被害者に対して賠償の責めに任ずることとし,公務員個
人は民事上の損害賠償責任を負わないこととしたものと解される(最高裁昭和28
年(オ)第625号同30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁,
最高裁昭和49年(オ)第419号同53年10月20日第二小法廷判決・民集3
2巻7号1367頁等)。この趣旨からすれば,国又は公共団体以外の者の被用者
が第三者に損害を加えた場合であっても,当該被用者の行為が国又は公共団体の公
権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく損害賠償
責任を負う場合には,被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わない
のみならず,使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないと解するのが
相当である。
これを本件についてみるに,3号措置に基づき入所した児童に対するA学園の職
員等による養育監護行為が被告県の公権力の行使に当たり,本件職員の養育監護上
の過失によって原告が被った損害につき被告県が国家賠償法1条1項に基づく損害
- 6 -
賠償責任を負うことは前記判示のとおりであるから,本件職員の使用者である被告
Yは,原告に対し,民法715条に基づく損害賠償責任を負わないというべきであ
る。
3 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。論旨は理由があり,原判決中,被告Y敗訴部分は破棄を免れない。
第4 結論
以上によれば,被告Yの上告に基づき,原判決中,被告Y敗訴部分を破棄して同
部分につき原告の控訴を棄却し,被告県の上告は,これを棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官才口千晴裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官
泉治裁判官涌井紀夫)
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弁護士 懲戒の規定 弁護士法より

2014-11-03 23:00:00 | 倫理(医療倫理、弁護士倫理、企業倫理…)
 
 弁護士 懲戒の規定 弁護士法より


*******************************


(懲戒事由及び懲戒権者)
第五十六条  弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
2  懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う。
3  弁護士会がその地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対して行う懲戒の事由は、その地域内にある従たる法律事務所に係るものに限る。

(懲戒を受けた者の審査請求に対する裁決)
第五十九条  日本弁護士連合会は、第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分について行政不服審査法 による審査請求があつたときは、日本弁護士連合会の懲戒委員会に事案の審査を求め、その議決に基づき、裁決をしなければならない。

(訴えの提起)
第六十一条  第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分についての審査請求を却下され若しくは棄却され、又は第六十条の規定により日本弁護士連合会から懲戒を受けた者は、東京高等裁判所にその取消しの訴えを提起することができる。
2  第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分に関しては、これについての日本弁護士連合会の裁決に対してのみ、取消しの訴えを提起することができる。


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新着記事

2014-11-02 22:19:27 | ブログ目次 / イベント情報・会議日程

 

薩摩川内市 市長が住民を守るために考えるべきことは何か。


医療関連の独禁法問題:安心安全な医療用材料、医薬品が流通されますように。


1万円以下の政務活動費(政務調査費)「開示を」…最高裁が初判断H26.10.29→当然の判断だと同感です。

弁護士の民事責任6:依頼者の裁判を受ける権利を確保する義務がある(職務基本規定22条)

年齢別の死因構成からみえてくるもの:がん・脳心血管・感染だけでなく自殺や不慮の事故対策の重要性

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11月2日(日)3日(祝)午前、月島3丁目こども元気クリニック5547-1191急病対応実施、インフル接種も可能

2014-11-02 22:18:46 | 日程、行事のお知らせ

11月2日(日),3(祝、月) 午前 中央区月島3丁目 こども元気クリニック・病児保育室03-5547-1191急病対応致します。
 

 1)咳の風邪、2)お腹の風邪、3)お熱だけの風邪の3つのお風邪がそれぞれ、今、たいへん流行っています。
 急に寒くなって、気候の変化に体が対応できていないことが、流行の原因のひとつと考えます。
 
 咳、鼻水のお風邪が多いように感じます。
 体調崩されておられませんか?
 


 おとなも、こどもの風邪をもらいます。
 そのような場合、お子さんとご一緒に、親御さんも診察いたしますので、お気軽にお声掛けください。



 
 なおったお子さんには、日曜日に、登園許可証も記載します。
 月曜日朝一番から登園できますように、ご利用ください。



 合わせて、平日なかなか時間が作れない場合でも、休日も、予防接種を実施いたしますので、ご利用ください。

 インフルエンザ予防接種(チメロサールの含有のない、より安全なものを使用しています。)も開始し、実施しています。
 
 
 お大事に。

こども元気クリニック・病児保育室
小坂和輝

中央区月島3-30-3
電話 03-5547-1191

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薩摩川内市 市長が住民を守るために考えるべきことは何か。

2014-11-01 23:00:00 | 地球環境問題

 ひとの話は、文脈で、理解すべきところです。

 以下、薩摩川内市 岩切秀雄市長の発言のあとには、

 実際に聞いたわけではないので、どのように続けられたのかはわかりませんが、

 「だから、避難計画はいらない」のように続けるのではなく、


 「だからこそ、避難計画の策定は、最低限のなすべきことである」のような言葉が続いている事を期待致します。

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