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最高裁判所が、執行停止の「重大な損害」の存否について初めて明示的な判断H19.12.18

2014-11-22 23:00:01 | 行政法学

H19.12.18 弁護士懲戒処分執行停止申立事件

1、本判決の意義

 最高裁判所が、「重大な損害」の存否について初めて明示的な判断をしたもの。

2、参照法令

(懲戒事由及び懲戒権者)

第五十六条  弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。

2  懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う。

3  弁護士会がその地域内に従たる法律事務所のみを有する弁護士法人に対して行う懲戒の事由は、その地域内にある従たる法律事務所に係るものに限る。

(懲戒を受けた者の審査請求に対する裁決)

第五十九条  日本弁護士連合会は、第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分について行政不服審査法 による審査請求があつたときは、日本弁護士連合会の懲戒委員会に事案の審査を求め、その議決に基づき、裁決をしなければならない。

(訴えの提起)

第六十一条  第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分についての審査請求を却下され若しくは棄却され、又は第六十条の規定により日本弁護士連合会から懲戒を受けた者は、東京高等裁判所にその取消しの訴えを提起することができる。

2  第五十六条の規定により弁護士会がした懲戒の処分に関しては、これについての日本弁護士連合会の裁決に対してのみ、取消しの訴えを提起することができる。

 

 

3、訴訟選択

○ 日本弁護士連合会を被告とした裁決取消しの訴え

○ 本件懲戒処分の効力の停止を求めて、日本弁護士連合会を相手方とした執行停止の申立て

 

4、 事案の概要

所属弁護士会から業務停止3月の懲戒処分(以下、「本件懲戒処分」という。)を受けた弁護士XはY(日弁連)に審査請求したが、審査請求を棄却する裁決を受けたため、上記最決の取消しの訴えを提起するとともに、本件懲戒処分の効力の停止を求める旨の執行停止の申立てをした。原決定は、本件懲戒処分の効力を停止することにつき、行政事件訴訟法25条2項の「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当するとして、翻案判決が確定するまで本件懲戒処分の効力を停止することとした。

 本決定は、最高裁が、Yからの許可抗告を棄却したものである。

 

5、 争点

 Xの主張する事実が「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」にあたるか

 

6、原審の判断

本件懲戒処分の内容は業務停止3月であって,本件懲戒処分を受けた申立人は,相手方の定めた措置基準に従い,依頼者が委任契約等の継続を求めている場合であっても,依頼者との委任契約の解除,訴訟代理人等の辞任手続,顧問契約の解除を行わなければならないのであって,これにより,申立人の弁護士としての社会的信用が低下し,それまでに培われた依頼者との業務上の信頼関係も損なわれる事態が生じると認められる。そして,このような依頼者との委任契約の解除等によって生じる弁護士としての社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損は,業務停止という本件懲戒処分によって生じるX自身の被る損害であり,その損害の性質から,本案で勝訴しても完全に回復することは困難であり,また,損害を金銭賠償によって完全に補填することも困難である。

 このような損害の性質に加え,疎明資料によればXが業務停止期間中に期日が指定されているものだけで31件の訴訟案件を受任していると認められることから推認できるXが被る損害の程度を勘案すれば,一旦生じた損害の回復は困難で,本件懲戒処分によってXに重大な損害が生じると認められる。

 そうすると,本件懲戒処分の効力を停止することにつき,重大な損害を避けるために緊急の必要があるというべきである。

 

7、抗告理由

 重大な損害を避けるための緊急の必要性の要件について

 第1に,原決定には,本件処分の内容,性質という法律が要求する考慮事項を考慮していない違法があるし,弁護士の業務停止の懲戒処分は,その弁護士の業務を行い得なくすることを目的とするものであるから,業務停止に当然に伴う損害を特別な損害とは解し得ないものであるところ,原決定は,「「重大な損害」を生ずるか否かを判断するに当たっても,その執行等により維持される行政目的達成の必要性を一時的に犠牲にしてもなお救済しなければならない程度に重大な損害を避ける緊急の必要性があるか否かが勘案されるべきであり,行訴法第25条第3項において考慮すべき事項とされている「処分の内容及び性質」も,このような見地からの検討をもその考慮事項の1つとする趣旨」であるとする抗告裁判所としての東京高等裁判所の決定に反する判断をしている。

 第2に,上述のとおり弁護士の業務停止の懲戒処分においては,業務停止に当然に伴う損害は,行政事件訴訟法第25条第2項の特別な損害とは解し得ないものであるところ,自己が懲戒処分を受けたことを依頼者に告げることによって,依頼者との業務上の信頼関係に一定の影響が生じることがあるが,それだけでは回復困難な損害を避けるため緊急の必要があるということはできないと判断した2つの東京高等裁判所の決定があるのに,懲戒処分を受けたことを依頼者に告知すれば弁護士としての社会的信用の低下等を招くので「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」(行政事件訴訟法第25条第2項)に該当すると判断できるのかという点で,本件は,法令の解釈に関する重要な事項を含むものである。

8、最高裁の判断

Xは,その所属する弁護士会から業務停止3月の懲戒処分を受けたが,当該業務停止期間中に期日が指定されているものだけで31件の訴訟案件を受任していたなど本件事実関係の下においては,行政事件訴訟法25条3項所定の事由を考慮し勘案して,上記懲戒処分によって相手方に生ずる社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損等の損害が同条2項に規定する「重大な損害」に当たるものと認めた原審の判断は,正当として是認することができる。

以上

 

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総合設計許可の取消訴訟における原告適格について最高裁判所として初めて判断H14.1.22

2014-11-22 23:00:00 | 行政法学

最判H14.1.22建築確認取消・〇〇〇生命総合設計事件  

1、事案の概要

本件は,〇〇〇保険相互会社(以下「A社」という。)に対し,平成4年7月7日付けで被上告人Y1東京都知事が建築基準法(平成4年法律第82号による改正前のもの。以下同じ。)59条の2第1項に基づいてしたいわゆる総合設計許可(以下「本件総合設計許可」という。)及び都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの。以下同じ。)8条1項3号に規定する都市計画である「東京都市計画高度地区」(東京都渋谷区決定・平成元年東京都渋谷区告示第61号)に基づいてした許可(以下「本件都市計画許可」といい,本件総合設計許可と併せて「本件各許可」という。)並びに同5年5月17日付けで被上告人Y2東京都建築主事がした建築確認(以下「本件建築確認」という。)が違法であるとして,上告人らが被上告人らに対しこれらの取消しを請求する事案である。 

2、訴訟選択 取消訴訟

請求の趣旨

1 被告東京都知事が〇〇〇命相互会社に対し別紙物件目録記載の建築物について平成4年7月7日付けでした建築基準法(平成4年法律第82号による改正前のもの。以下同じ。)59条の2第1項の許可及び東京都市計画高度地区(東京都渋谷区決定・平成元年東京都渋谷区告示第61号)に基づく許可をいずれも取り消す。

2 被告東京都建築主事が〇〇〇生命保険相互会社に対し別紙物件目録記載の建築物について平成5年5月17日付けでした建築確認を取り消す。

3、争点

(1)本件許可の取消しを求める原告適格の有無
(2)(1)が肯定された場合、本件許可の適否

4、第1審、原審の判断

(1)第1審

ア、Y1に対する本件総合設計許可の取消し請求に係る訴えはすべて却下した。

イ、Y1に対する本件都市計画許可の取消し請求に係る訴えについては、X1,X2,X3及びX4外5名の請求に関する部分は適法とした上で請求を棄却し、X5及びX6の請求に関する部分を却下した。

ウ、Y2に対する本件建築確認の取消請求に係る訴えについては、X1,X2,X3及びX4外5名の請求に関する部分は適法とした上で請求をいずれも棄却し、X5及びX6の請求に関する部分を却下した。

(2)原審

 原判決は、付加訂正の上、第1審判決を引用して控訴を棄却した。

5、判旨

一部破棄自判、一部棄却 

(1)主文抜粋

1 原判決中上告人X1,同X2,同X3及び同X4の被上告人東京都建築主事に対する請求に関する部分を破棄し,第1審判決中同部分を取り消し,同部分につき同上告人らの訴えを却下する。

2 上告人X1,同X2,同X3及び同X4のその余の上告並びに同X5及び同X6の上告を棄却する。

(2)原告適格の規範

 最判平成4年9月22日(もんじゅ事件)と最判平成9年1月28日(川崎市開発許可)を引用しつつ、「当該行政法規が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは,当該行政法規の趣旨・目的,当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである」とした。

(3)本件総合設計許可の取消しを求める原告適格(理由第1、4(2)全部抜粋)

上記の見地に立って,まず,上告人らの本件総合設計許可の取消しを求

める原告適格について検討する。

 建築基準法は,52条において建築物の容積率制限,55条及び56条において高さ制限を定めているところ,これらの規定は,本来,建築密度,建築物の規模等を規制することにより,建築物の敷地上に適度な空間を確保し,もって,当該建築物及びこれに隣接する建築物等における日照,通風,採光等を良好に保つことを目的とするものであるが,そのほか,当該建築物に火災その他の災害が発生した場合に,隣接する建築物等に延焼するなどの危険を抑制することをもその目的に含むものと解するのが相当である。そして,同法59条の2第1項は,上記の制限を超える建築物の建築につき,一定規模以上の広さの敷地を有し,かつ,敷地内に一定規模以上の空地を有する場合においては,安全,防火等の観点から支障がないと認められることなどの要件を満たすときに限り,これらの制限を緩和することを認めている。このように,同項は,必要な空間を確保することなどを要件として,これらの制限を緩和して大規模な建築物を建築することを可能にするものである。容積率制限や高さ制限の規定の上記の趣旨・目的等をも考慮すれば,同項が必要な空間を確保することとしているのは,当該建築物及びその周辺の建築物における日照,通風,採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに,地震,火災等により当該建築物が倒壊,炎上するなど万一の事態が生じた場合に,その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことがないようにするためであると解される。そして,同項は,特定行政庁が,以上の各点について適切な設計がされているかどうかなどを審査し,安全,防火等の観点から支障がないと認めた場合にのみ許可をすることとしているのである。以上のような同項の趣旨・目的,同項が総合設計許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等に加え,同法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的とするものである(1条)ことにかんがみれば,同法59条の2第1項は,上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,当該建築物の倒壊,炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命,身体の安全等及び財産としてのその建築物を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると,総合設計許可に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。

 前記事実関係によれば,上告人X5及び同X6以外の上告人らが居住し,かつ,所有する建築物並びに同X5及び同X6の所有する建築物は,いずれも本件建築物が倒壊すれば直接損傷を受ける蓋然性がある範囲内にあるものということができる。

したがって,上告人らは,本件総合設計許可の取消しを求める原告適格を有するものというべきである。してみると,上告人らにつき本件総合設計許可の取消しを求める原告適格を否定し,その取消しを求める訴えを却下すべきものとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。

 ところで,原審は,被上告人東京都知事が本件建築物が東京都総合設計許可要綱所定の各種基準に適合することを確認して本件各許可をしたことを認定した上で,本件建築物は上記基準に適合するものであり,同被上告人が第3種高度斜線制限の適用除外の許可の要件を満たすと判断して本件都市計画許可をしたことに,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法があるということはできないから,上告人X1外3名の同被上告人に対する本件都市計画許可の取消請求は理由がなく棄却すべきものと判断している。そして,後述のとおり,原審の上記認定判断は是認することができるものであり(後記第2参照),上記認定判断に徴すれば,上告人らの同被上告人に対する本件総合設計許可の取消請求もまた,理由のないものであることが明らかである。以上によると,本件総合設計許可の取消請求は理由がないものとして棄却すべきこととなるが,いわゆる不利益変更禁止の原則により,上告を棄却するにとどめるほかはない。

6、本判決の意義と問題点

(1)意義

ア、建築基準法59条の2第1項に基づく総合設計許可の取消訴訟における原告適格について最高裁判所として初めて判断したもの。

イ、平成9年判決と異なり、集団規定の性質に照らし、財産まで保護対象に含めた。

(2)問題点

ア、Xらは、本件総合設計許可の取消訴訟の原告適格を基礎づける権利、利益として、①プライバシーを保護される権利、②良好な住環境を享受する権利、③風害を受けない利益、④巨大建築物による圧迫感を受けない利益、⑤安全かつ快適な歩行をする利益等も主張したが、認められていない。

7、参照法令

○ 行政事件訴訟法9条

 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

○建築基準法59条の2第1項

 その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率、容積率及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率又は各部分の高さは、その許可の範囲内において、第五十二条第一項から第九項まで、第五十五条第一項、第五十六条又は第五十七条の二第六項の規定による限度を超えるものとすることができる。

以上

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