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『大都市制度についての専門小委員会中間報告』(H24.12.20 地方制度調査会専門小委員会)

2012-12-28 17:23:05 | 地方分権改革
 基礎自治体の大きさをどうするか、その事務の負担をどの程度にするか、自治体間の調整はどうするか、そこで暮らす住民にも大きな影響を及ぼす話です。

 ただ、抽象論になりがちで、わかりづらいところもあります。
 個々に事務の内容が変わるわけであり、一概に言えない点もあります。
 うまく配分しないと、「二重行政」の無駄を生むことにもつながります。

 『大都市制度についての専門小委員会中間報告』(H24.12.20 地方制度調査会専門小委員会)が出されましたので、見ておきます。
 

 当然ではありますが、方向性として、

*基礎自治体は小さいほうがよい

*基礎自治体間格差はでないようにしなければならない

*住民自治が強まるようにする

*二重行政の無駄がでないようにする

*自治体間の調整ができるようにする

*国、都道府県、区市町村の力関係は、同等である

*事務権限を委譲すると、それに見合った財源も委譲する

*住民目線で、事務権限移譲を行う

 がきちんとなされ、結論を導く必要があります。

 ある程度、政治主導も必要かもしれません。



**********総務省ホームページより*****
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/chihou_seido/02gyosei01_03000128.html

第30次地方制度調査会第26回専門小委員会


日時

平成24年12月20日(木)

場所

全国都市会館 第1会議室(3階)

議事次第

1.開会
2.議題
(1)大都市のあり方について
 ・大都市制度についての専門小委員会中間報告(案)について
(2)その他
3.閉会

配付資料


・【資料】大都市制度についての専門小委員会中間報告(案)
・【資料】大都市制度についての専門小委員会中間報告(案)(見え消し版)


(下線は、小坂による)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000193237.pdf

大都市制度についての専門小委員会中間報告

平成24年12月20日
地方制度調査会専門小委員会


大都市制度についての専門小委員会中間報告

まえがき

当専門小委員会は、平成24年1月17日の第3回総会以降、諮問事項の一つである社会経済、地域社会などの変容に対応した大都市制度のあり方について、関係団体からの意見聴取を含め、第6回から第26回まで計21回の会議を開き、審議を行った。

人口減少社会に入り、社会経済や地域社会の状況は大きく変容している。人々の暮らしを支える対人サービスの重要性は益々高まっており、その主要な供給主体である基礎自治体のあり方そのものが問われている。また、都市構造や土地利用のあり方についても、基礎自治体が果たすべき役割が問われている。当専門小委員会は、基礎自治体のうち、まず大都市等をめぐる課題について、地方自治制度の改革によって対応すべき点を検証し、具体的な方策について調査審議を進め、ここに中間的な報告を行うものである。

言うまでもなく、大都市はひとり大都市のみで存立できるものではない。他の基礎自治体と相互依存することで成り立っている。また、大都市等のあり方の見直しは、基礎自治体そのものや広域自治体のあり方にも大きく影響するものである。

当専門小委員会としては、この中間報告に対する各方面の意見を踏まえ、残された諮問事項である基礎自治体のあり方と併せて最終的な答申に向けて調査審議を続けていく所存である。



第1 大都市等をめぐる現状と課題
(我が国における大都市等の位置付け)
少子高齢化が進行し、我が国が人口減少社会となったことは否定できない事実である。このことを前提にして、これからの我が国のあり方を真剣に考えていくことが必要である。人口減少下にあっても、経済を持続可能なものとし、国民が全国で安心して快適な暮らしを営んでいけるような国づくりが必要となっている。

このためには、国民の暮らしを支え、経済をけん引していくのにふさわしい核となる都市やその圏域を戦略的に形成していくことが必要である。

人口減少社会に入った我が国において、三大都市圏の人口の比重は再び高まっていく見込みである。

三大都市圏や地方の中枢都市を核とする圏域は、経済の成熟化、グローバル化の進展など、構造的な転換期を迎える中で、引き続き我が国の経済をけん引する役割を果たすことが必要である。


(大都市圏の抱える課題)
大都市圏、とりわけ三大都市圏は、これまで地方圏に比べて高齢化の進行が緩やかであったが、団塊の世代を中心に今後急速に高齢化が進行していく。これまで地方圏がその高齢化の進行に応じて徐々に対応してきた行政課題について、大都市圏、とりわけ三大都市圏においては今後極めて短期間のうちに対策を講じることが必要である。また、高齢者医療、介護や生活保護などの行政需要が急増することへの対応や、独居老人や老老介護の問題など、家族やコミュニティの機能の低下への対応も必要になる。一方で、人口減少に歯止めを掛けるためには、出生率を回復することが必要となる。大都市圏には若い世代が比較的多いことを踏まえると、大都市圏は少子化対策においても果たすべき役割が大きい。

大都市圏においては、人を支えるコミュニティの機能が低下し、人と人とのつながりが希薄化している。人々の暮らしを支える対人サービスの重要性が高まる中で、住民の視点から公共サービスを考えていくためにも、住民自治を拡充していくことが重要である

また、高度経済成長期に整備した社会資本が一斉に更新時期にきており、これまでと同様の社会資本を維持し続けるのかどうかなど、社会資本整備のあり方の見直しも問われている。東日本大震災を教訓として、人口・産業が集中している大都市圏においては、大規模災害時における住民の避難のあり方、生活機能や経済機能の維持等への対策を講じていくことも必要である。

さらに、三大都市圏のように通勤、通学、経済活動等の範囲が、行政区域をはるかに超えている大都市圏においては、大都市圏域を前提とした行政サービスの提供やその調整などが必要である。


(地方の中枢都市圏の抱える課題)
地方の中枢都市を核とする圏域は、三大都市圏に先行して、すでに高齢化や人口減少といった課題に直面してきた。地域住民が快適で安心して暮らせる都市環境を確保するとともに、三大都市圏から人の流れを作るためにも、地域を支える拠点の構築が課題となる。

このためには、地方の中枢都市を核に、都市機能、生活機能を確保するとともに、都市構造の集約化と都市機能のネットワーク化を図っていくことが必要になる。


(地方自治制度の改革による対応)
大都市等に関する地方自治制度としては、昭和31年に特別市制度に代えて指定都市制度が創設された後、指定都市に準ずる規模の都市に規模・能力に応じた事務移譲を進めるため、平成6年、11年にそれぞれ中核市制度、特例市制度が創設された。その後、中核市については人口要件以外の要件が撤廃され、指定都市については合併団体に対する運用上の人口要件が一時緩和された。現在、指定都市、中核市、特例市に指定されている市の数は、それぞれ20、41、40に増加している。

その結果、指定都市、中核市、特例市に指定されている都市も多様になり、各制度において一律に決められる事項と各都市のそれぞれの状況に対応しなければならない事項とが生じている。

また、都区制度は、昭和18年以降東京のみに適用されており、累次の改革において特別区への事務移譲等が進められてきた。

先に述べた三大都市圏や地方の中枢都市圏の抱える課題に対しては、規制等に係る個別法の見直しや、重点的な社会資本整備など様々な対策を国として戦略的に実施することが必要である。これと並んで、大都市等に関する地方自治制度のあり方を議論することが必要な時期が到来している。

このような中で、新たな大都市制度や、現行の指定都市、中核市、特例市、特別区に係る制度の見直しについて、各方面から様々な提案が行われている。

この際、大都市等における効率的・効果的な行政体制の整備や住民の意思がより適切に行政に反映される仕組みづくりについて、地方自治制度の改革によって対応すべき点を検証し、その解決方策を示すことが必要である。

また、このことは、明治以来の区域を継承している都道府県についての議論、ひいては広域自治体のあり方の議論にもつながっていくものとなる。



第2 現行制度の見直し
1.指定都市制度
(1)指定都市制度の現状
指定都市は、地方自治法制定時に制度上存在したが実際には適用されなかった特別市に代わる制度として、昭和31年に創設された。以来、現在に至るまで、50年以上にわたり制度の基本的な枠組みは変更されていない。

(効率的・効果的な行政体制の整備)
この間、指定都市と都道府県との実際の行政運営の中で、いわゆる「二重行政」の問題が顕在化している。大都市における効率的・効果的な行政体制の整備のためには、この「二重行政」の解消を図ることが必要である。

もとより「二重行政」は、必ずしも指定都市と都道府県の間に固有の課題ではないが、指定都市の規模能力が高く、都道府県庁所在地であることも多いこと等から、特に指定都市と都道府県の間で深刻化してきたものと考えられる。

「二重行政」を解消するためには、指定都市の存する区域においてはできる限り同種の事務を処理する主体を一元化するとともに、事務処理に際しての指定都市と都道府県との間の調整のあり方を検討することが必要である。


(住民意思の的確な反映)
指定都市においては、市役所の組織が大規模化し、そのカバーするサービスも幅広くなるため、個々の住民との距離は遠くなる傾向にある。このため、住民に身近な行政サービスを適切に提供することや、住民の意思を行政運営に的確に反映させることが課題となっている。

指定都市においては、住民に身近な行政サービスを住民により近い組織において提供することや、住民がより積極的に行政に参画しやすい仕組みを検討することが必要である。少なくとも、指定都市のうち特に人口規模が大きい都市については、住民に身近な行政区の役割を強化し、明確にすることについて検討することが必要である。


(2)具体的な方策
①「二重行政」の解消を図るための見直し
(事務移譲及び税財源の配分)
指定都市と都道府県との「二重行政」の解消を図るためには、まず、法定事務を中心に、都道府県が指定都市の存する区域において処理している事務全般について検討し、指定都市が処理できるものについては、できるだけ指定都市に移譲することによって、同種の事務を処理する主体を極力一元化することが必要である。

都道府県から指定都市に移譲する事務としては、都市計画と農地等の土地利用の分野や、福祉、医療分野、教育等の対人サービスの分野を中心として検討すべきであるその際、少なくとも、県費負担教職員の給与負担や、都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に関する都市計画決定など、既に地方分権改革推進委員会第1次勧告によって都道府県から指定都市等へ移譲対象とされたにもかかわらず移譲されていない事務は移譲することを基本として検討を進めるべきである。

事務の移譲により指定都市に新たに生じる財政負担については、適切な財政措置を講じる必要があり、県費負担教職員の給与負担等まとまった財政負担が生じる場合には、税源の配分(税源移譲や税交付金など)も含めて財政措置のあり方を検討すべきである。


(指定都市と都道府県の協議会)
これまで言われてきた「二重行政」を解消するためには、このような事務の移譲及び税財源の配分に加え、指定都市と都道府県が公式に政策を調整する場を設置することが必要である。このため、任意事務を中心に指定都市と都道府県が同種の事務を処理する場合等に適切に連絡調整を行う協議会を設置し、協議を行うことを制度化し、公の施設の適正配置や効率的・効果的な事務処理を図ることを検討すべきである。

協議会においては、例えば、都道府県による指定都市の区域内における公の施設の設置や指定都市と都道府県が処理している同種の事務のうち指定都市又は都道府県が協議を求めた事項等について協議の対象とすることを検討すべきである。また、指定都市と都道府県が処理している同種の事務のうち協議会で定めたものについてお互いに処理状況を報告することもこれに併せて検討すべきである。

協議会の構成員としては、指定都市と都道府県の執行機関と議会が共に参画することが協議の実効性を高める上で重要である。例えば、会長は市長又は知事とし、委員は、市長又は知事と各議長を充てるほか、その他の議員又は職員から選任することを検討すべきである。

協議会において、協議が調わない事項が生じた場合には、現行制度上、自治紛争処理委員による調停を利用することが可能である。しかしながら、調停は全ての当事者が受諾することが必要であるため、それでも解決が見込まれない場合を想定した何らかの新しい裁定等の仕組みを設けることを検討すべきである。


②「都市内分権」により住民自治を強化するための見直し
指定都市、とりわけ人口が非常に多い指定都市において、住民に身近な行政サービスについて住民により近い単位で提供する「都市内分権」により住民自治を強化するため、区の役割を拡充することを検討すべきである。

区の役割を拡充する方法としては、まず、条例で、市の事務の一部を区が専ら所管する事務と定めることを検討すべきである。また、区長が市長から独立した人事や予算等の権限、例えば、区の職員の任命権、歳入歳出予算のうち専ら区に関わるものに係る市長への提案権、市長が管理する財産のうち専ら区に関わるものの管理権などを持つこととすることを検討すべきである。

このように、区長に独自の権限を持たせる場合には、現在は一般の職員のうちから命ずることとされている区長について、例えば副市長並みに、市長が議会の同意を得て選任する任期4年の特別職とし、任期中の解職や再任も可能とすることを検討すべきである。また、区長を公選とすべきかどうかについても引き続き検討する。さらに、区単位の行政運営を強化する方法として、区地域協議会や地域自治区等の仕組みをこれまで以上に活用することも検討すべきである。

なお、現在、区には区の事務所の長(区長)、区の選挙管理委員会、区会計管理者を置くこととされているが、これに加え、現行の教育委員会制度を前提とする場合には、小中学校の設置管理等をできる限り区で処理できるようにする観点から、条例で、区に教育委員会や区単位の市教育委員会の事務局を置くことを可能にすることを検討すべきである。区の教育委員会等は、小中学校の設置管理など、必ずしも市で一体的に処理する必要がない事務のうち条例で定めるものを処理することとすることを検討すべきである。

以上のような新たな区の位置付けを踏まえ、区を単位とする住民自治の機能を強化すべきである。区単位の議会の活動を推進するため、市議会内に区選出市議会議員を構成員とし、一又は複数の区を単位とする常任委員会を置き、区長の権限に関する事務の調査や区に係る議案、請願等の審査を行うこととすることを検討すべきである。



2.中核市・特例市制度
(1)中核市・特例市制度の現状
中核市と特例市は、市町村への権限移譲を規模能力に応じて段階的に進めるため、それぞれ平成6年と平成11年に設けられた制度である。これまで、住民に身近な権限を適切に行使するとともに、地域の中心的な都市として地域を支える役割を果たしてきたものと評価できる。

その後、平成23年8月に公布された義務付け・枠付けの見直し等に関する第2次一括法(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律)等により、まちづくりや環境規制の分野において一般市への事務の移譲が進展した。これを踏まえて、特例市に対して更なる事務の移譲を進めることが必要である。


(2)具体的な方策
①両制度の統合
人口20万以上であれば保健所を設置することにより中核市となるという形で、中核市・特例市の両制度を統合することにより、一層の事務の移譲を可能とすることを検討すべきである。その際には、現在の特例市については、少なくとも引き続きこれまで処理してきた事務を処理し続けることとすることを前提として検討すべきである。


②都道府県からの事務移譲
今後、都道府県から中核市・特例市に移譲すべき事務としては、例えば児童相談所の事務などが考えられるが、中核市・特例市が多様である現状を踏まえると、一定の事務の移譲は法令で行うが、その他については条例による事務処理特例制度を活用することについて検討すべきである。

条例による事務処理特例制度は、本来都道府県から市町村に事務の移譲を行う際に、両者間で適切に協議を行い、事務処理に必要な財源を適切に措置することにより、各市町村の規模・能力や地域の実情に応じた事務の移譲を行うことを企図した制度である。

しかしながら、移譲事務の内容については都道府県の意向が強く反映されているのではないか、また、事務移譲に伴う財源措置が不十分なのではないかとの懸念も存在する。このような懸念を払拭するため、市町村の事情を十分踏まえて移譲が行われるようにするための方策について、引き続き検討する。


③住民自治の拡充
中核市・特例市においても住民自治の拡充は重要な視点であり、地域自治区等の仕組みを地域の実情に応じて活用することについて検討すべきである。

また、中核市・特例市の市議会議員の選挙区は、指定都市では区の区域をもって選挙区とされているのに対して、特に条例で選挙区を設けない限り市域全体とされている。より地域に密着し、住民との結び付きの深い市議会議員を選出する観点から、選挙区を設けるべきかどうかについて、引き続き検討する。その際には、選挙区の設定方法をどのように考えるかといった視点が必要である。


④中核市・特例市をはじめとする地方の中枢都市の役割の強化
中核市・特例市のうち、地方の拠点である都市については、周辺市町村と適切な役割分担を行い、圏域全体の連携を進めるため、定住自立圏の考え方が有効である。このような都市をはじめとする地方の中枢的な都市の担うべき役割とそれに伴う財政措置について検討すべきである。

また、定住自立圏の中心市と周辺市町村との間における都市機能の分担をはじめ、自治体間での柔軟な連携を可能とする仕組みについて、制度化する方法を基礎自治体についての議論と併せて検討する。


3.都区制度
(1)都区制度の現状
特別区は、昭和39年の福祉事務所等の事務移譲や課税権の法定化、昭和49年の保健所等の事務移譲、区長公選制の復活や都からの配属職員制度の廃止、平成10年の一般廃棄物の収集等の事務移譲や都区財政調整制度の見直しなど、累次の都区制度改革により、平成10年の地方自治法改正後は、「基礎的な地方公共団体」として、都が一体的に処理することが必要な事務を除き、一般的に市町村が処理する事務を処理している。

都区制度は概ね円滑に運営されているが、平成10年以降も、特別区への更なる事務移譲について、都区間で議論が行われている状況である。


(2)具体的な方策
①都から特別区への事務移譲
今後、都から特別区への更なる事務移譲について検討する際には、特別区の区域の再編と関連付ける議論もあるが、特別区の高い財政力や一部の特別区の間での共同処理の可能性等を踏まえると、一般的に人口規模のみを捉えて基準にする必要はないものと考えられる。

都から特別区に移譲すべき事務としては、例えば児童相談所の事務などが考えられるが、専門職を適切に確保する等の観点から小規模な区の間では連携するといった工夫を講じつつ、移譲を検討すべきである。

また、特別区の規模が多様であることから、一定の事務の移譲は法令で行うが、その他についてはそれぞれの事務に必要な規模・能力を踏まえて移譲を進めることとし、その際には、都とそれぞれの特別区の協議により、条例による事務処理特例制度を活用する方向で検討すべきである。


②特別区の区域の見直し
一方、今後の高齢化の進展や公共施設の更新需要の増加など、社会経済情勢の変化を踏まえると、特別区の区域の見直しについても検討することが必要である。


③都区協議会
都区財政調整制度等に関する都区協議会における調整について、仮に協議が調わない事項が生じた場合に備え、現行の自治紛争処理委員による調停に加え、指定都市と都道府県の場合と同様に何らかの新しい裁定等の仕組みを設けることの必要性について引き続き検討する。

④住民自治の拡充
特別区の中には人口が相当多い区もあることから、地域自治区等の仕組みを地域の実情に応じて活用し、住民自治の拡充を図ることについて検討すべきである。

また、特別区の区議会議員についても、中核市・特例市の市議会議員と同様の課題があるため、より地域に密着した区議会議員を選出する観点から、選挙区を設けるべきかどうか、引き続き検討する。その際には、選挙区の設定方法をどのように考えるかといった視点が必要である。



第3 新たな大都市制度
1.特別区の他地域への適用
(1)大都市地域特別区設置法の制定
現行の特別区制度は、一般制度ではあるものの、制度創設時には東京都以外の地域に適用することは想定外であった。仮に東京都以外の地域に特別区制度を適用する場合には、人口の集中度合いや経済圏の実情など、社会経済情勢が現在の東京都の特別区に近い地域、例えば大阪市の存する区域に適用することが考えられる。

そのような中、本年8月に、議員立法により「大都市地域における特別区の設置に関する法律」(以下「大都市地域特別区設置法」という。)が制定され、大阪市など、東京都以外の人口200万以上の区域に特別区を設置する場合の手続が確定した。

そこで、大都市地域特別区設置法において総務大臣との協議事項とされている事務分担、税源配分及び財政調整を中心に、同法に基づき特別区を設置する際に留意すべき点を明らかにしておくことが必要である。


(2)具体的な留意点
①総括的な留意点
大都市地域特別区設置法に基づく特別区の設置に当たっては、各地域の判断に委ねられる部分が多いが、いわゆる「二重行政」の排除や行政の効率化といった住民の期待に応じたものとするよう留意すべきである。

また、長年存在してきた指定都市を特別区に分割することにより、分割される事務の処理に係る費用や、特別区間や道府県と特別区の間の調整に係る費用が増大するといった懸念には的確に対応するよう留意すべきである。

さらに、道府県における特別区の設置によって、国や他の地方自治体の財政に影響が生じないよう特に留意すべきである。


②事務分担
事務分担については、指定都市で一体的に処理してきた事務のうち、行政の一体性及び統一性の確保の観点から基礎自治体の事務でありながら都が処理することとされているものについては、道府県の事務とすることを基本とし、専門職員の確保、保険財政の安定等の観点からさらに道府県において処理すべきものがあるかという点にも留意すべきである。

また、特別区において処理すべき事務については、仮に、道府県の特別区が中核市並みの事務を処理することとした場合、現在都の特別区が処理していない事務も処理することとなり、円滑に事務処理を行うことができるかどうかについて特に留意すべきである。

なお、特別区を設置しようとする指定都市の区で現に処理している事務を出発点として、これにどの程度の事務を加えれば特別区を設置したことが意義あるものと考えることができるのかという観点にも留意すべきである。東京都の特別区においては、長期間にわたり段階的に所掌事務を増加してきたことにも留意すべきである。


③税源配分及び財政調整
税源配分及び財政調整については、道府県と特別区が分担する事務の規模に応じて、税財源が適切に配分されることが必要である。その際、税源の偏在がある中で特別区において適切に行政サービスを提供できるよう、税源の配分と道府県と特別区の間の財政調整の仕組みを適切に組み合わせるとともに、特別区間で偏在度の大きい税を道府県と特別区の間の財政調整の財源とすることが基本である。

税源の配分に当たっては、目的税とその使途との関係にも留意すべきである。また、現在指定都市が処理している任意事務についても、道府県と特別区との間の事務分担に応じた財源上の配慮が必要である。

指定都市を特別区に分割した場合、現行制度と同様に、地方交付税の算定については、特別区を一つの市とみなすことが必要である。さらに、道府県と特別区の事務の分担や税源の配分が一般の道府県と市町村と異なることから、現行の都区合算制度と同様の仕組みによることが基本となることに留意すべきである。

特別区において処理すべき事務が多いほど、また、特別区の規模が小さいほど、分割される事務の処理に要する費用が増加するとともに、特別区の間で行うべき財政調整の規模が大きくなることに留意すべきである。

特別区が処理すべき事務や特別区の規模によっては、現行の都区財政調整制度における調整3税以外の何らかの財源を調整財源として活用することが必要となる場合があることに留意すべきである。


④財産処分及び職員の移管
特別区の設置に伴う財産処分及び職員の移管に当たっては、事務の分担に応じることを基本に検討すべきである。その際、市町村合併について、合併関係市町村の職員が合併市町村の職員としての身分を保有するよう措置するとともに、合併市町村が職員の身分取扱いに関して職員のすべてに通じて公正に処理しなければならないとされていることとの均衡にも留意すべきである。

なお、東京都と特別区の間では、都職員がその身分を有したまま特別区に配属される制度が昭和49年まで存在したが、これは当時の特別区が都の内部団体的性格を持っていたことの表れであることに留意すべきである。


⑤道府県に置かれる特別区の性格
道府県に置かれる特別区は、道府県と特別区の事務分担や税源配分、財政調整等のあり方によっては、平成10年の地方自治法改正で「基礎的な地方公共団体」と位置付けられた都の特別区とは性格が異なってしまう可能性もあることに留意すべきである。


2.特別市(仮称)
(1)特別市(仮称)を検討する意義
特別市(仮称)は、全ての都道府県、市町村の事務を処理することから、その区域内においてはいわゆる「二重行政」が完全に解消され、今後の大都市地域における高齢化や社会資本の老朽化に備えた効率的・効果的な行政体制の整備に資する点で大きな意義を有する。

また、大規模な都市が日本全体の経済発展を支えるため、一元的な行政権限を獲得し、政策選択の自由度が高まるという点にも意義がある。


(2)特別市(仮称)について更に検討すべき課題
一方で、特別市(仮称)については、以下のように更に検討すべき課題が存在する。

一層制の大都市制度である特別市(仮称)について、法人格を有し、公選の長、議会を備えた区を設置して実質的に二層制とすることが必要とまでは言い切れないが、現行の指定都市の区と同様のものを設置することでは不十分であり、少なくとも、過去の特別市制度に公選の区長が存在していたように、何らかの住民代表機能を持つ区が必要である。

また、特別市(仮称)は全ての都道府県、市町村の事務を処理するため、例えば警察事務についても特別市の区域とそれ以外の区域に分割することとなるが、その場合、組織犯罪等の広域犯罪への対応に懸念がある。

さらに、特別市(仮称)は全ての道府県税、市町村税を賦課徴収することとなるため、周辺自治体に対する都道府県の行政サービスの提供に影響するという懸念もある。

なお、現在の全ての指定都市を特別市(仮称)制度の対象とする場合、現在47の広域自治体が最大67に増加する可能性がある。大都市地域特別区設置法の対象区域と同様に人口200万以上とするなど、一定以上の人口の指定都市に対象を限定する必要がある。


(3)当面の対応
まずは、都道府県から指定都市への事務と税財源の移譲を可能な限り進め、実質的に特別市(仮称)に近づけることを目指すこととし、特別市(仮称)という新たな大都市のカテゴリーを創設する場合の様々な課題については、引き続き検討を進めていく。



3.大都市圏域の調整
三大都市圏においては、社会経済的に一体性のある圏域(例えば通勤・通学10%圏)の広がりは、市町村のみならず都道府県の行政区域も超えているが、地方ブロックほどの広がりとはなっていない。

例えば交通体系の整備や防災対策といった大都市圏域における共通した行政課題に関する連絡調整や、そのような行政課題に関する大都市圏域全体の計画策定を行うための協議会等の枠組みを設けるべきかどうかについて引き続き検討する。

その際、どのような行政課題についての調整を行うべきか、九都県市首脳会議や関西広域連合といった既存の任意の枠組みが果たしている役割との関係をどうするかといった点についてさらに検討する。

仮に新たな枠組みを設ける場合には、大都市圏域計画の実効性を担保するための尊重義務を構成団体に課すことや、国との調整を図るために、必要に応じて、国の関係行政機関に対して、職員の出席及び説明並びに必要な資料の提出を求めることができるようにすることなどについても検討する必要がある。
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