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土佐いく子の教育つれづれ~またあしたね〈43〉

2016年03月16日 | 土佐いく子の教育つれづれ

聴いてもらえたら元気~子育て相談から①

 いろんなところで子育て講座をさせていただいている。ご質問や相談を受けることも度々ある。今回から何回かに分けて、子育て相談を紹介したい。
 
 と言っても私に的確な解決策が示せるわけではないが、とにかくみなさん胸の内を吐き出せて、聴いてくれた、と思うだけでほっとするようだ。

◎着替えが遅い

 「もうすぐ一年生なのに、あれもできないと気になることばかりで、心配が絶えなくて…」

 聞くと、衣類の着替えが遅い。近所の人に会っても挨拶もできない。つい「そんなことできなかったら学校に行かれへんよ」と怒鳴ってしまうと言うのだ。初めて我が子が学校に上がるんだから、わからないことだらけで心配するのは当たり前ですよ。私もそうでした。

 大丈夫!衣類の着替えなんかみんなと一緒にするので、すぐにできるようになりますよ。挨拶ね、お母さんがご近所の方にニコニコ挨拶なさっていたら、そのうちするようになります。

 入学前の禁句は「○○できなかったら学校に行かれへんよ」という言葉。学校というところはコワイところだという緊張感を与えてしまいますから。それよりちょっとお茶碗運んでくれたら「さすが一年生になるから頼りになるわ」と背中を押してやってください。

◎友達ができない

 「二年生の女の子です。なかなか仲の良い友達ができなくて…。本人は友達ほしがっているんですけどね。親としてはどうしてやったらいいのかと…」

 友達をほしがっている気持ちがあるのがいいですよね。二年生くらいだと特定の子と仲良くなるというより、その日その時でいろんな子と遊んだりしますからね。

 四年生くらいになるとできますよ。親ができることは「友達つくりなさい」とやいやい言うことではなく、たっぷり愛情を届けてやることです。いっぱい抱いて、おいしいごはんを作ってあげてください。愛されて育った子は必ず人を自分の中に受け入れて仲良くできますから。(拙著『子育てがおもしろくなる話』参照)

◎うそをつく

 「五歳の男の子です。うそをつくんです。どうしたら直るでしょうか」

 ハハハハ…うそをつくのは、自分の身を守るためのちょっとした知恵が出てきたんですよ。すぐバレそうなうそでしょ。いちいちカーッとせず、う
そをつかれて笑っていてください。ときにはうその中に子どもの願いが込められてもいるので、そこに寄り添ってあげたいですね。

 「おとうさんといっしょに公園でいっしょに野球してホームランを打ったよ」。「いっしょ」が2回も出てくる日記には(実はうそでしたが)この子の願いが込められていたのです。父ちゃんといっしょに公園で野球したいよ、ホームランを打ってみたいなという切ない願いです。うそをついたと叱るより、一緒に野球をしてやりましょと話したことでした。

◎自分から話さない

 「先生が子どもの話を聞いてあげてくださいと言うのですが、うちの子、自分からなかなか話をしてくれません。どうしたら…」

 私たち教師も同じですが、お母さんが忙しオーラやイライラオーラを出していると、近寄って来ませんよね。それにせっかく「あのね、今日ね…お弁当のとき…あのね」ともたもたでも話をしようとしているのに、話をとって「ああそれ、先生から聞いたよ」とやってしまうと、ますます自分から話さなくなります。

 それにもまして一番の反省は、子どもの目を見て、話に共感してなかったなあと思いますよ。「ケンちゃんとこの犬な、めっちゃ賢いで。ぼくの言葉わかるんやで」と言っているのに、「はよ宿題してしまいなさい。もうごはんやで」とやっていませんか。

 自分の方から「今日どんな勉強したの」と聞き出すよりも「お母さん今日うれしかったわ、種から植えてた椿の花が咲いたんやで。あれや、見てごらん、ホラ」と言うと、「ぼくもうれしいことあってん。ゆうちゃんがな『ぼくの絵うまいなあ』って言うてくれてん」と語り出すのです。そうです。大人も自分を語ることで、子どもも心を開くようです。

 みなさん、こんな時代の子育てですから、悩みもいっぱい。いいのです。人を育てるってそんなもんです。子どもは思い通り育つ、子育ては楽だ、と言う人こそ危ないですよ。

(とさ・いくこ 和歌山大学講師・大阪大学講師)

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