ジョルジュの窓

乳がんのこと、食べること、生きること、死ぬこと、
大切なこと、くだらないこと、
いろんなことについて、考えたい。

王子さま(笑)

2005-08-28 | マンガ
『わらうサロメ』、これも 深見じゅんのマンガ。

「わらう」は 本当は 口偏に山を書いて虫、
の漢字なのだが
手書き入力しようと思ったけど
字がヘタすぎて(?) 入力できなかった(涙)。

『女神の寝室』という単行本におさめられている。
(集英社、1995・11・27、530円)

プレイガールを装うオンナと
プレイボーイの振りをしているオトコの
オトナ(??)の恋の話。

屈折したシビアな物語のはずだが、
どこかに 可笑しなエピソードが入ってくるのは
この作者の特徴?

サロメ(?かな?)こと宮田奈緒は
制服を着て OLとして働いている会社で

先輩社員と 同僚がティータイムで
お菓子を口に運んでいる時に

お茶も飲まずに 
椅子に座って 足を真っ直ぐ前に突き出し、
足首から先を 曲げたり伸ばしたりしている。



先輩:「何してるの? 宮田さん。」

宮田:「こうすると 足首細くなるんです。」

同僚:「そんなに太くないわよ。」

宮田:「王子さまって
    待ってると やってくると 思います?」

同僚:「なによそれ。」

宮田:「待ってても来ないんです、これが。

    でも お姫さまのふりをして
    宮殿に入れば 
    王子さまがゴロゴロ
   
    特賞! 王子さまのつかみ取り

先輩:「お姫さまのふりなんて。

    男にとって 好きな女はお姫さまよ。

    足首太くても
    鼻が低くても お姫様。

    女だって 好きな男はみんな王子さま。」


思っていなかった言葉に 目をみひらく宮田奈緒。


先輩:「うちの夫は 40歳のハゲ王子。」

同僚:「さあて そろそろ 営業の王子さまたちが
    帰ってくるわ。」



私は 
「王子さまがごろごろ」とか
「王子さまのつかみどり」とか
「営業の王子さま」のところで
クスリと笑わせてもらった。



ウチの王子さまは 40代。

老眼が始まり、眼鏡の調整に四苦八苦している。

眉毛や胸毛や 鼻毛にまで 白髪がある。

お腹が横に出っ張る。

数年前の胃腸炎で
ゲッソリ痩せてからは 筋肉がつかず、
お尻は小さく、足は細くなったのに。



若い頃は50キロ台、
スマートだと足も長く見えた。

かつて つながっていた眉毛は
中央が抜けて
垂れ眉毛になってきている。

がに股は 直らない。



ひっぱっていってくれる頼もしさは
独善に変わり、

細やかな気の使い方は
口うるさい干渉になった。



それもそのはず。

お姫さまが この変わりようだもの。



かつて
私が
毎日 微熱があり、
微熱だから、と動くと
高熱を発して 動けなくなっていた頃。

冬の間中 風邪を引きっぱなしだった頃。

生まれたての息子は
これも しょっちゅう熱を出し、
お腹をこわしてばかりいた。

亭主は 仕事の合間に
私の看病と
息子のオムツ洗いと
保育園児の娘の世話とに
完璧を期して 全力投球しては 
疲労困憊していた。



少しは・・・いや、
かなり 亭主の仕事の助けができるはず、
と思って結婚した私が
何にも出来ないどころか
足を引っ張っている。

情けなくて 情けなくて
自分の存在がなければいいと 思っていた。



「しょうがないなあ。」

そんな言葉が 
鋭く胸に突き刺さって。

「こんな私と なんで結婚なんかしたの?」

不毛な会話のあとに
こんなことを聞いたのだった。



「お前といると
 疲れないから。」

しばらく考えた後に
王子は そう 答えた。

可笑しかった。

実は、姫も、そうだった。



この人だったら、
家事全般なんでもできるから

体力のない私でも 
なんとか 共働きでやっていけるだろう、

とかなんとか、

理由づけは
後からいろいろと 付け加えたのだ。



一緒にいて 疲れない人。

なんか、
消極的な理由だけど、
究極的な理由でもあるな。



生意気盛りの息子は
彼女いない歴を 日々更新している。

ある日
「どんな女の子が 好みなの?」
と聞いたら

「ル・クプルのお姉さん。」
と答えが返ってきて
娘とふたり 目がテンになったことがある。



この子は
将来 どんなお姫さまを 見つけるのだろう。

足が太くて
身体が丈夫なオンナがいいよ、
と 母は思っている。