ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

喜納昌吉&チャンプルーズ

2019年08月21日 | ロック(日本)

喜納昌吉 & チャンプルーズ (1977)

「ハイサイおじさん」で有名な喜納昌吉&チャンプルーズのデビュー・アルバム。「ハイサイおじさん」を初めて聴いたのはいつだったかしっかり覚えていないが、何かのテレビ番組じゃなかったかな(久保田麻琴のヴァージョンではなかった)。当時は能天気な酔っ払いの歌くらいにしか説明されておらず、その独特なリズムや音階、女性の掛け声(囃子)が単に気持ちの良い音楽という認識しかなかった。すぐに志村けんの「へんなおじさん」のフレーズが席巻してしまったので、その元歌ぐらいにしか捉えられていないけれど…。最近ある文献を目にして、この「ハイサイおじさん」は実在の人物をモデルとしていることを知り、その背景がえらく衝撃的だったのでアルバムごと聴いてみようという気になって購入。その背景を某ペディアから一部引用すると…

”この「おじさん」はかつて喜納家の隣人であったが、妻が精神に異常をきたして実の娘の首を切り落とし鍋で煮るという事件を起こしたために村八分同然の身となり、以前から交友のあった喜納家に酒を無心に来るようになったのだという。この孤独な「おじさん」との触れ合いの中で「おじさんに歌を作ってあげよう」と思い立った昌吉が生まれて初めて作詞作曲したのがこの「ハイサイおじさん」である”

元々はマルフクレコードという地元のレーベルから「喜納昌吉と喜納チャンプルーズ」名義で発売されたそうで、そちらはここに収録されたものよりスローテンポで、より沖縄音楽らしいゆったりさがある。その後にテレビなどで観た喜納のライヴ映像などでは、大抵このアルバムに収録されたものよりももっとハイテンポにアレンジされており、何だか馴染めなかった覚えがある。

アルバムに収録された曲は基本的に沖縄・コザの「ミカド」という喜納自身のライヴハウスで録音されたものだそうで、それに矢野誠(音楽プロデューサー、矢野顕子の元夫)が、シンセサイザー等を加えてまとめあげた物のようだ。その加えられた部分のクレジットを見てびっくりしたのだが、キーボードでは矢野顕子、ドラムでは林立夫、ギター井上憲一、シンセ・プログラムでは松武秀樹らが参加している(ティン・パン・アレーにYMO!)。

ライヴ音源を元にしているが、喜納昌吉の飄々としたヴォーカルと、全体的には緩いのにも関わらず一体感のあるバンドとの掛け合いが素晴らしい。それに沖縄音楽に欠かせない女性バックヴォーカルの”囃子”(正確には何と言うんだろう)がやはり素敵。歌詞は沖縄ことばの部分は正直全然意味が分からず、対訳を読まなければならないが、何となく流れで分かるものもある。社会風刺的な歌詞も多く、当時の首相(田中角栄)の名が出てきたり(04)、東京の都会を揶揄する曲(10)がボーナス収録されたりしている。沖縄の三線の音色と特徴的な音階の音楽を聴くと、本土とは違う諸外国との歴史的関係、戦場になって占領されたという悲しい歴史と、実際に行った時ののどかな風景とのギャップを思い起こしていつも複雑な気分になる。喜納がこの後どんな音楽を作ったのかちょっと興味が沸いてきた。

オークションにて購入(¥670)

  • CD  (1994/6/25)
  • Disc : 1
  • Label : 徳間ジャパンコミュニケーションズ

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