ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

松竹大歌舞伎 「河内山」「藤娘」「芝翫奴」 @名古屋・日本特殊陶業市民文化会館 ビレッジホール

2015年07月25日 | 歌舞伎・文楽

歌舞伎 「平成二十七年度 松竹大歌舞伎」 (7月24日・名古屋・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール)

酷暑の中、金山の「日本特殊陶業市民文化会館」へ歌舞伎見物。会場の名前は長いが「名古屋市民会館」のこと。自動車のスパークプラグで有名な「NGK」の会社のネーミングライツでこの名前。やっぱりNGK会館だと大阪と混同してまずいか(笑)。歌舞伎の地方公演のチケットは、いつも発売日をつい忘れてしまうので、昨年の11月以来、久しぶり。これも随分あとから取ったので、席は2階席の後ろの方だ。会場の入りはまあまあといったところ。さすがに2階席は空席が目立つ。

この巡業のメインは成駒屋・橋之助。自分は劇場で見るのは初めて。お数寄屋坊主(茶坊主)の河内山は初役だそうだ。豪傑な河内山を堂々と演じ、ちょっと笑える人間臭いところも安心して見ていられる。質屋の店先の場面からだったが、話の筋が分かりやすいので、中盤少し(観ている自分が)ダレるところがあったものの、楽しめた。こういうご無体な人物にモデルがあったのかどうか知らないが、こういう状況を見て笑える文化があったという事なんだよなァ。歌舞伎は数多ある現在の演劇と違い、話の筋は「最初から知っているもの」として観るところがあるので、江戸や、明治の一般の人達には、教養としてこういう話や人間関係が頭に入っていたという事なんだろうか。当時の日本の人々の識字率は世界随一だと聞いた事があるが、教養の高さという意味では文明史的になかなか凄いことなんじゃ…。

藤娘の児太郎も初見かな。暗闇から、パッと藤の木が浮かび上がる演出では観客から感嘆の溜息が。衣装が替わる度に皆がうっとりとしている。もちろん訓練の賜物だが、年頃(つまり男臭くなる盛り)の男性が、どうしてこうも美しい所作で舞えるのかと感心する。ただ、十代目福助の襲名はどうなってしまうのだろう…。

意外なところで楽しめたのが橋之助の息子、国生の芝翫奴。この日の書き割りは、桜が満開の吉原・仲之町だったが、一番手前の目立つ下手(しもて)の店の屋号が「松葉屋」と、上手(かみて)が「山口巴」。昨日たまたま読了した本が、吉原に関する本だったが、この著者は引手茶屋の女将で、店の屋号が「松葉屋」。もともとは歌舞伎の書き割りには出ていなかったのが、先代中村吉右衛門との縁で、戦後から歌舞伎の書き割りに名前が出たのだそう。そのいきさつを読んだばかりだったので、そんな偶然に驚いた。描かれた当時はかなりの宣伝になったというが、さもありなん。吉原で主人を探す奴(国生)の、成駒屋お家芸の踊りも、迫力、メリハリがあって、とても良かった。

 

天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)

一、河内山(こうちやま)
質見世より玄関先まで


河内山宗俊    中村 橋之助
高木小左衛門  坂東 秀調
宮崎数馬      中村 国生
腰元浪路      中村 芝のぶ
北村大膳      中村 橋吾
後家おまき    中村 芝喜松
和泉屋清兵衛  松本 錦吾
松江出雲守    大谷 友右衛門

二、藤 娘(ふじむすめ)
  芝翫奴(しかんやっこ)
 
〈藤娘〉         
藤の精        中村 児太郎
 
〈芝翫奴〉         
奴            中村 国生

コメント
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