ー女と男の観覧車ーWONDER WHEEL
2017年 アメリカ 101分
監督・脚本-ウディ・アレン キャスト=ジム・ベルーシ (ハンプティ) ジュノー・テンプル (キャロライナ) ジャスティン・ティンバーレイク (ミッキー) ケイト・ウィンスレット (ジニー)
【解説】
オスカーの常連ウディ・アレンが監督を務めた人間ドラマ。1950年代のアメリカを舞台に、男女の恋と欲望、人生の切なさが描かれる。安定を願う一方で、刹那的な恋に身を投じる主人公を『愛を読むひと』などのケイト・ウィンスレットが演じるほか、ミュージシャンのジャスティン・ティンバーレイク、『午後3時の女たち』などのジュノー・テンプル、『ゴーストライター』などのジム・ベルーシらが出演。3度のオスカーに輝き、『カフェ・ソサエティ』でもアレン監督と組んだヴィットリオ・ストラーロが撮影を担当した。
【あらすじ】
1950年代のコニーアイランド。遊園地のレストランでウエイトレスとして働く元女優のジニー(ケイト・ウィンスレット)は、再婚同士の夫と自分の連れ子と一緒に、観覧車の見える部屋に住んでいた。平凡な日々に幻滅し、海岸で監視員のアルバイトをしている脚本家志望のミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)とひそかに交際するジニーだったが、ある日久しく連絡がなかった夫の娘が現われたことで歯車が狂い始め……。(シネマトゥデイ)
【感想】
ここのところコメディー色の強い作品が多いウディ・アレン監督。
私は、シリアスな感じよりコメディタッチの作品が好きなんですが、2014年のアカデミー賞にノミネートされたケイト・ブランシェット主演の「ブルー・ジャスミン」のような雰囲気の作品。
コニー・アイランドのある遊園地のカフェでウェイトレスをしているジニー(ケイト・ウィンスレット)は、夫のハンプティ(ジム・ベルーシ )と自分の連れ子である小学生の息子と、観覧車の裏側にある元見世物小屋で暮らしている。
ギャングと結婚したハンプティの娘のキャロライナ(ジュノー・テンプル)が帰ってきたところから、この一家の歯車が狂い始める。
キャロライナは夫と不仲になり、警察にギヤングの秘密をしゃべったことから、ギャング一味から命を狙われていた。
ハンプティは怒り狂いながらも、娘が可愛い。
結局は匿うことに。
ジニーには深刻な悩みがあった。
息子のリッキーに放火癖のあること。
問題行動を起こしては警察沙汰になり、校長から呼び出されることを繰り返していた。
かつては有望な舞台女優だったのに、今は40歳で、遊園地のウェイトレスなんかやっている私。
ジニーはこれまでの人生を悔い、自分の起こした数々の失敗を嘆く。
夫には禁酒を強いながら、隠れて酒をあおる日々です。
この映画の案内人でもある、大学生で海水浴で監視人をしているミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)。
脚本家志望なんて自己紹介するから、インテリかと思いきや、何のことはない、迷えるジニーの浮気相手。
しかもキャロラインに恋するゲス野郎です。
ジニーの憂鬱はキャロラインの登場によって、ますます募るばかり。
リッキーの悪い癖もどんどんエスカレートしていくし、ハンプティにはもううんざり。
そのジニーがドツボにはまり、とうとう取り返しのつかないことをしてしまって、精神的におかしくなっていくところが見所です。
まるで、「サンセット大通り」のグロリア・スワンソンみたい。
「欲望という名の電車」のブランチみたい。
ケイト・ウィンスレットの鬼気迫る演技にぞーっとしますよ。
私は「ブルー・ベルベット」よりこちらの方が好きだな。
現実を受け入れられない、痛い女。
この弱さ哀れさが好きだなあ。
多分、監督もそう思っていると思うな。
夫の名前がハンプティ(マザーグースからとってきたような名前)とか、舞台がコニー・アイランドの大衆化されたリゾート地とか、音楽にオールドジャズを使っているところとか、ウディ・アレンのオシャレ心が溢れていて、ジニーの哀れさを優しく包んでいました。
タイトルの「観覧車」もいいよね。
乗り込んでもたどり着くのは同じ場所。
結局どこにも行けません。
吹き寄せられるように集まった登場人物にぴったりです。