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●科学技術ニュース●JAMSTECなど、海洋水柱におけるマイクロプラスチックの全球分布を解明

2025-07-11 09:53:14 |    宇宙・地球
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球環境部門 海洋生物環境影響研究センター 海洋プラスチック動態研究グループのShiye Zhao(シィエ ジャオ)副主任研究員は、同グループの中嶋亮太グループリーダーや世界10の大学や研究機関から集った12人の研究者とともに、海面下の水柱におけるMPsの分布パターンを地球規模の視点から明らかにした。

 地球上の海水の総量は約13億立方kmにも及び、平均水深3,688 mは、ほぼ富士山の高さ(3,776 m)に匹敵する。海は生物にとって地球最大の生息地であり、気候の調整にも重要な役割を果たしている。

 しかし、海洋は様々な人間活動による影響に曝されている。その1つが海洋プラスチック。毎年、陸域から海洋へと大量のプラスチックが流入しており、一説によれば、毎年、900万~1,400万トンものプラスチックが海に流れ込んでいると推定されている。

 大部分のプラスチックは生分解されないため、海洋にはプラスチックごみが蓄積していく。その中には、ペットボトルや包装材のような大きなごみだけでなく、MPsのような微細な粒子も含まれている。

 MPsは非常に小さいため、海の至るところに広がり、海洋生態系に深刻な影響を及ぼす恐れがある。

 例えば、多くの海洋生物がMPsを食べものと間違えて摂取している。MPsに含まれる有害化学物質が生物蓄積や生物濃縮を引き起こし、食物連鎖全体に悪影響を及ぼす可能性も指摘されている。海は生物炭素ポンプと呼ばれる仕組みを通じてCO2を深海へと運び、深海に炭素を長期間閉じ込める役割を担っているが、MPsがこのプロセスを妨げる可能性もでている。

 プラスチック製品が世界で広く利用されるようになって以来約50年間、科学者たちは主に海の表面に浮遊するMPsを対象に研究をしてきた。

 2014年から2024年の10年間にかけて、世界中の研究者によって収集された1,885カ所の水柱MPsデータを統合解析した結果、MPsは水柱のあらゆる水深で高濃度に広く分布しており、水柱がMPsの重要な蓄積場所であることが明らかとなった。

 複数の深度でサンプルを採取した研究データによると、MPs濃度の中央値は1立方mあたり205個であった。

 深海においても高い濃度が一貫して観測されており、たとえば、北南大西洋の横断調査では水深100~270mで1,100粒子/m3、北太平洋亜熱帯循環では水深2,000mで600粒子/m3、北極では水深2,500mで200粒子/m3、マリアナ海溝の水深6,800mでは13,500粒子/m3が確認されている。

 粒子のサイズによって沈降パターンが異なることが分かった。

 微小MPs(1~100µm)は深度とともにゆるやかに濃度が減少し、水柱全体に比較的均一に広がる傾向が見られた。これは、沈降速度が遅く、水柱内での滞留時間が長いためと考えられる。その結果、微小MPsによる生態リスクが水柱全体に広がっている可能性が示唆された。

 一方、100-5000µmの大型MPsは、深度が増すにつれ2桁以上の濃度減少を示し、表層にとどまるか、急速に海底へ沈降する傾向が確認された。

 過去10年間にわたって全球の海洋で実施された水柱MPsの観測データに基づく解析の結果、海洋水柱がプラスチックの重要な蓄積場であることが明らかになった。
 
 MPsの長期的な残存と蓄積は、海洋生態系にとってリスクとなり得ることが示唆されている。同研究は、海中に沈降したMPsの分布に関する初の全球的な基準値を提示し、水柱MPsの拡散や動態に関する理解が大きく前進した。<海洋研究開発機構(JAMSTEC)>
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