科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業において、戦略的創造研究推進事業総括実施型研究(ERATO)石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクトの石黒 浩 研究総括らは、マルチモーダル対話制御システムとマルチロボット対話制御システムを開発し、人間らしい存在感や対話感を対話相手に与えるロボットを実現した。また、車輪移動機構を持つ子供型アンドロイド「ibuki(イブキ)」を開発した。
近年、対話ロボットの研究開発が盛んになりつつある。しかし、従来のロボットとの対話では、人間との対話で得られる対話感や存在感、社会性を感じることができない。同プロジェクトは、カメラやマイクロフォンアレイを用いたマルチモーダル認識システムや、意図や欲求に基づく対話制御システムにより、人間らしい存在感を実現した。
さらに、自然で多様な相づち生成や焦点語に基づく聞き返し技術により人間らしい対話感を実現し、アンドロイドが傾聴や面接を行える可能性を示した。
また、対話感を演出する社会的対話ロボットの研究では、ロボット同士の掛け合いや役割交代をさせるなど、複数のロボットの発話や非言語的表現の表出タイミングを制御するマルチロボット対話制御システムを開発した。
ロボット同士の対話を人間に見せることで、ロボットが人間の発言や意図を認識できない場合でも、対話相手である人間に強い対話感を与えることを実現した。
今後はより多様な状況や目的において、ロボットの自然な対話を実現する研究開発に取り組んでいく。また、単に移動が必要なタスクを遂行するロボットの開発に取り組むのではなく、移動の仕方や位置関係を利用した、移動を伴う人間との親和的なインタラクション技術を開発し、日常生活で活躍する自律対話型アンドロイドを実現する。
さらに、これらの研究開発を通して得られた知見を活用することで、情報提供、生活支援、学習支援を目的とした社会的対話ロボットのアプリケーションの開発に取り組んでいく。