kabu達人への道

マスコミで深く触れられることのない投資の裏側や
投資にあたっての疑問など赴くままに綴っていきます。

成功体験がアダになる

2015-10-25 09:56:24 | 日記
25日の経済紙一面では「中国、液晶で世界一に」と大きく報じています。中国企業
が今後3年間で3兆円を液晶事業に投資し2018年にも中国が韓国を上回り世界一
の液晶パネル生産国になると記事は伝えています。人件費の高騰や人民元の高
止まりから中国の輸出競争力に陰りが出ています。

中国当局はハイテク産業の育成を通じて産業の高度化を図り輸出の立て直しを
国益として推し進めようとしています。ハイテク分野でも特に力を入れているのが
液晶事業や半導体事業です。設備投資に巨額な資金が必要な分野で政府の直
接的、間接的な支援策で育成を図るというのが国の方針です。中国政府が旗振
りをしているインフラ輸出も同じ構図です。中国企業の巨額の設備投資で今後予
想されることは液晶分野での熾烈な競争です。シャープやジャパンディスプレイの
先行きにも大きな影響が出そうです。

液晶事業を切り開いたのはシャープです。シャープが1999年に20型液晶テレビを
発売しました。2000年代前半にはそれまで主流だったブラウン管テレビがあっと
いう間に液晶テレビに置き換わりました。液晶はその後テレビだけでなくPCや携
帯電話、カーナビ、ゲームといった分野に広がっていきます。この時点では液晶の
シャープの未来は明るいものでした。

しかし韓国勢の猛追でその優位性は永く続きませんでした。まずテレビ用の大型
パネルで劣勢に立たされたシャープは得意の中小型パネルでも急速に競争力を
失い液晶がシャープの未来をも奪ってしまった格好です。液晶で一世を風靡した
シャープは液晶で足元を掬われました。

東芝のパソコン事業も同じ構造です。ノートパソコンを世に広めたのは東芝でし
た。東芝のノートPCは2000年のITバブル時は世界一を手中に収めダイナブック
はノートPCの代表的なブランドを確立しました。ノートPC時代を牽引したのは
東芝だったのです。しかし会社の代名詞だったパソコン事業がお荷物事業にな
ったのはシャープの液晶事業と同じでした。

両社とも過去の成功体験が忘れられず競争力を失ったにも拘わらずずるずると
事業を展開して赤字を垂れ流しました。こんな例は海外企業でもあります。写真
フィルムで世界のトップ企業だったコダックはその後に訪れるデジタル革命に乗
り遅れダウ銘柄に採用される程、米国を代表する優良企業だったにも拘わらず
凋落の一途を辿ります。

会社経営でもっとも難しいのは成功体験にいつまでも捉われ競争力を失っても
その事業に大胆なメスを入れられないことです。経営者の判断でもっとも難しい
決断は新規事業に乗り出すことよりもお荷物になった事業からの撤退です。両
社の躓きの原因は多くの企業が陥るケースでもあります。



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