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マーケティング第10回

2014年01月28日 | Weblog
ネット時代のマーケティング(下)

 この時代、ビッグデータ*10)活用が、マーケティングをさらに進化させる可能性がある。
一昨日26日の日本経済新聞朝刊一面トップに「ビッグデータ共有し新商品」(ライバル企業が連携)の見出しがあった。『ヤフーとアスクルはビッグデータを活用した商品開発で、食品・日用品メーカーと連携する。P&G日本法人や味の素など12社と、消費者がネット通販で買った商品や検索した単語の履歴などを共同で解析。特定の顧客層や生活シーンに合った新商品の開発につなげる。・・・』というもの。ビッグデータが動き出した。

 マーケティングの4つの要素は4P(製品、価格、広告・宣伝、流通経路)であるが、マーケティングの基本は「商流(支払と所有権の移転)」、「物流」、「情報流(情報の流れ)」といわれる。ネット時代には、企業がマーケティング戦略を構築する際に活用できる情報が大きく変容した。情報流の重要性が飛躍的に高まったのである。

 従前よりクレジットカードは普及しており、これによってもマーケティングに必要な多くの情報は得られていたであろうし、コンビニなどのレジによるポスシステムでも売れ筋、死に筋商品の分別から、これを生産指示にまで活用している場合もあるように聞いていたが、今後は電子マネーの普及がさらに商流と情報流の情報量を拡大させるのではないか。

 プリペイドカードはテレフォンカードや図書カードなど用途を限定した使い捨てカードに始まり、スイカのように同じ用途限定であっても、繰り返し入金できるタイプ(電子マネータイプ)に進化した。このタイプでは使用の履歴が残る。しかもその用途を駅構内の自動販売機や売店での使用から街中のコンビニでも使えるようになった。スイカから得られる情報は、人の流れを捉えることが可能だ。しかも現在鉄道、路線バスなどに地域限定で使われているものを全国共通化する動きがある。ビックデータは拡大する。

 電子マネーは「ナナコ」や「ワオン」など大手スーパーの発行のものをはじめとして急速に普及を始めた。細かいおつりのやりとりが不要で、ポイントの現金化が容易であるなど消費者メリットがある。クレジットカードを使い難いコンビニなどでの少額単品購入にも使用されるところから情報量が拡大する。ポイント付与率をアップし、共通化を進めれば消費者側の利便性も高くなり利用は拡大する。

 高速道路のETCも普及した。これによっても車の流れ、人の流れを解析できるであろう。
新しい乗用車にはナビが標準装備される時代。一般道でも車の流れを把握して、渋滞解消に役立たせて貰いたいものだし、それらの情報をデータとして捉えれば、マーケティングに活用できる筈である。

 情報化の進展は、顧客が製品やサービスを購入する際の意思決定に必要な情報の入手や購入後の評価にさえ、代替品を含めより多くの情報を得ることができる時代だ。当然に高品質でより安い商品が求められる。価格はより消費者主導になり易い。ただでさえグローバル化の進展で良いものなら世界から買えるし、ネットを通じて世界へ売れる時代。商品の価格弾力性は高まるといわれる。すなわち同じ品質なら価格を安くすれば売上は上がり易く、高ければ落ち込みが激しくなる。

 消費者にとっては、情報過多でいいもの良くないものの判別が難しくなる。情報収集能力と本質を見抜くクールさがさらに求められる。企業側からすれば今後ビッグデータの分析と活用がマーケティング戦略の巧拙に大きく関わってくるであろう。




*10)ビッグデータ:ソーシャルデータ(一般の消費者がインターネット上のブログ、交流サイト(SNS)などで提供する情報)、交通データ、取引データ、通信データ、環境データ(細分化された各地域の天候、気温などのデータ)など

本稿は、日本経済新聞に連載中の「経営学はいま」から、この1月に8回に亘って掲載された「ネット時代のマーケティング」慶応大学井上哲浩教授の論文を一部参考にしています。
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