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ものづくりへのオマージュその8

2008年07月22日 | Weblog
続、あるビールつくりの話

 『協同商事2代目朝霧重治氏は、当時社会人2年目であったが、自社の中小企業ならではの欠点を見抜いていた。ものつくりには自信があっても、市場や顧客の分析、販売戦略やブランド構築といった視点に乏しい。すなわちマーケティングの欠如だ。重治氏は社長を説得し、現場の職人を説いて既存の商品を一度すべて捨て、新たに統一したブランドを作って売り出すことにした。しかし、多くの人が居酒屋に入るなり「とりあえず生(ビール)」と銘柄さえ気にしない日本で、しかも大手4社による寡占市場では困難な取り組みにも思えた。そんな中、重治氏は挑戦を続ける。

 コンセプトは、「その日の料理や気分によって違うビールを楽しむ」。そのためには1種類だけでは物足りない。職人たちは重治氏を信じその意向を汲んで5種類の全く異なる味わいと風味を持つビールを完成させた。しかし、そこから従来品の10倍以上のカネと3年以上の開発期間を要したブラント構築のためのデザイン改革があった。新進気鋭のプロダクトデザイナーに依頼してのビンからラベルまでデザインの改革を行ったのである。そして「モンドセレクション」での5種類すべてが賞を受ける栄誉を手にする。その中の2種類は最高金賞であった。

 重治氏は、97年一橋大学商学部を卒業後重工メーカーに入社していたが、たまたまガールフレンドの父親の会社すなわち(株)協同商事の拡販イベントなどの手伝いをしていたことで、社長である朝霧幸嘉氏の目に留まる。「うちで働いてみないか」結婚が決まっているわけでもない中、ガールフレンドの父親からの要請に一瞬躊躇はあった。しかし、自社製品を開発し続けるベンチャー型企業を経営する幸嘉氏に興味を覚え、重治氏は力強くうなずいた。』とある。

 絵に描いたような現実のドラマがある。人と人との縁(えにし)がある。そしてものづくりの伝統が進化しながら引き継がれていく。拡販イベントの手伝いに来た娘のボーイフレンドに「うちで働いてみないか」と言える社長があり、それに期待以上に応えた青年がいたのだ。



本稿につきましても、日経ビジネス2007年8月20日号「ひと劇場」からの引用(『 ~ 』)で構成しています。
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