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経営に活かす品質管理第8回

2012年05月22日 | Weblog
商品開発とマーケットイン

 1980年代、ものづくりで世界を席巻した感のあった日本の、そのまた優として称賛された二人の技術者の商品開発に関する言葉がある。「なぜ物をつくる専門家が、素人の大衆に聞かなければならないのだろう。それでは専門家とはいえない。どんなのがいいか大衆に聞けば、これは古いことになってしまう。大衆の意表に出ることが、発明、創造、ニューデザインだ。それを間違えて新しいものをつくるときにアンケートをとるから、たいてい総花的なものになる」。これはホンダの創業者本田宗一郎氏の言葉*9)。

 「わが社のポリシーは、消費者がどんな商品を望んでいるか調査して、それにあわせて商品を作るのではなく、新しい商品を作ることによって彼らをリードすることにある。消費者はどんな商品が技術的に可能かを知らないが、われわれはそれを知っている。だからわれわれは、市場調査などにはあまり労力を費やさず、新しい製品と用途についてあらゆる可能性を検討し、市場を開拓していくことを考えている」。こちらはソニーの創業者の一人盛田昭夫氏の言葉だ*9)。

 マーケティングは、新商品開発に始まるが、「品質管理」は製品をお客さまにお届けする際の検査による不良品のふるい分けに始まり、工程管理、設計管理と遡り商品開発に辿りついた。

 「プロダクトアウト」*10)の時代から「マーケットイン」*11)へとマーケティングも「品質管理」も時代と共に進歩したけれど、商品開発を語る時は、「マーケットイン」ではダメだというような解釈がある。しかし、前述の言葉をもって本田氏や盛田氏が、市場に重きを置かず、作る側の都合からの「プロダクトアウト」の思想で商品開発を行ったというのは誤解であろう。市場の声を聴いてそれだけに従うことと、自身の発想を信じ、真に顧客の役に立とうとすることは、マーケットインへのスタンスが異なるだけだ。

 新商品開発に際して市場調査は必要であり、その手法にはインタビュー調査やアンケート調査がある。しかし、確かにそれらは参考にはなっても結論ではなかろう。顧客の潜在的なニーズやウォンツをそこから探り当てる努力は開発者に必要である。

 商品開発者が顧客をそして時代を先取りしなければ、感動商品は作れない。だからといってヒット商品づくりには「マーケットイン」ではなく、「プロダクトアウト」でなければならないということではない。時代の先取りとは、「マーケットイン」を先取りしているだけなのだ。

 しかし、商品開発にもセオリーはある。我々は常に本田氏や盛田氏やスティーブ・ジョブズのような天才的な開発者に恵まれるわけではない。次回品質管理(TQM)の商品開発手法を覗いてみたい。






*9)平成23年9月、千葉経済大学オープンアカデミー「解釈学的ブランド論」同校経済学部経営学科、高橋孝次教授の講義資料から
*10)メーカー主体のマーケティングコンセプトで、メーカーが生産した製品をいかに販売していくかという発想のマーケティング。
*11)消費者志向の考え方に基づき、消費者ニーズを把握し、市場に求められている製品を製造・販売する考え方によるマーケティング。
  *10)、*11)TAC2005年度中小企業診断士頻出用語集から引用
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