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短編を読む その24

新年明けましておめでとうございます。
短篇のメモは1年で終わりにするつもりでしたが、まだストックが残っているので、いましばらく続けていきます。

「ハンプルビー」(ギッシング)
「ギッシング短篇集」(岩波書店 1997)

溺れている金持ちの息子を助けた、大人しい少年ハンプルビーは、その父親の斡旋と、浅はかな両親の要望のため、本人の希望とは別に金持ちの会社の事務員になるはめに。その後もハンプルビーは、この金持ち親子に振りまわされる。

「キルジャーリ」(プーシキン)
「スペードの女王」(新潮社 1981)

ブルガリア人で、モルダヴィアを荒らしまわった盗賊キルジャーリの物語。ギリシア神聖隊に入り、トルコ軍に掃討され、ロシアに逃げこんだものの官憲の手でトルコに引き渡される。死刑判決を受けるが、見張りをだまし、まんまと逃げおおせる。

「魔法の書」(エンリケ・アンデルソン=インベル)
「魔法の書」(国書刊行会 1994)

古本屋でみつけた、さまよえるオランダ人が書いた本。一見ただのアルファベットの羅列なのだが、目をこらすと文章になる。しかし一度目をはなすと、アルファベットに羅列にもどってしまうため、また最初から読まなくてはならなくなる。かくして主人公の古代史教師は、ひたすら本を読み続ける。まるでセーブポイントのないゲームのよう。

「将軍、見事な死体となる」(エンリケ・アンデルソン=インベル)
同上

推理小説を読みすぎて完全犯罪を志すようになった外科医。まず殺す相手の名前を決定するのが肝要と思うのだが、その名前をもつ相手がみつからない。少しほっとしたものの、その名前をもつ指導者があらわれる。外科医は覚悟を決める。

「屋根裏の犯罪」(エンリケ・アンデルソン=インベル)
同上

刑事が屋根裏部屋につくられた暗室に入ると、そこには背中にナイフを突き立てられた男が倒れていて――と、典型的なミステリの場面がファンタージーに一変する。

「解放者パトリス・オハラ」(エンリケ・アンデルソン=インベル)
同上

サン・マルティンの軍隊に参加したアイルランド人のパトリス・オハラは、インディオとともに、〈眠りの村〉の人々を解放しに向かう。そのアラウコ族の神々は、村人たちの夢を食って生きているのだという。

「友達同士で」(フィリップ)
「朝のコント」(岩波書店 1979)

友達同士なのに関係をもってしまった男女。女の夫もまた友達であり、2人は夫のもとへ謝りににいく。

「めぐりあい」(フィリップ)
同上

8年前に離婚した2人。たまたま再会し、コーヒー店に入り、近況を語りあう。なんとも味わい深い。

「マッチ」(フィリップ)
同上

チューリッヒ見物にきた男が、ベッドで煙草を吸っていると、火をつけたマッチをどうしただろうと不安に思う。ベッド脇の絨毯をみると、ベッドの下から手がでて、マッチの火を消すのがみえる。ベッドの下にだれかいるのだ。

「最高傑作」(ポール・ギャリコ)
「ディナーで殺人を 上」(東京創元社 1998)

天候不順で客足がとだえ、借金に苦しむレストランの店主。賞金付きの手配書をみていたところ、当の手配者が客としてあらわれる。警察がくるまで引きとめておこうと、店主は腕によりをかけた料理をふるまう。


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短編を読む その23

「聖なる酔っぱらいの伝説」(ヨーゼフ・ロート)
「聖なる酔っぱらいの伝説」(白水社 1989)

セーヌ川の橋の下で暮らす異国者のアンドレアスは、年配の紳士から200フランを受けとる。お金を返すときは、サント・マリー礼拝堂に寄付すればいいと紳士。かくしてアンドレアスは、むやみに酒を飲んだり、旧友や女と再会したり、仕事にありついたり、散財したりと、パリで浮沈をくり返す。

「皇帝の胸像」(ヨーゼフ・ロート)
同上

滅亡した君主国を思慕する伯爵は、自分の館の戸口にフランツ・ヨーゼフ皇帝の胸像をそなえつけるが、新政府の役人から撤去の命令を受ける。今は亡き帝国への哀惜に満ちた一編。

「埃まみれの辻説法」(アーウィン・ショー)
「サマードレスの女たち」(小学館 2016)

戦時中、陸軍にもどる息子をグランド・セントラル駅で見送る父親。息子との日々を回想し、自分は有罪だと父親は思う。おれは有罪だ。こんな事態にならぬよう何か手を打つべきだった。

「ホーキンズ一等兵の受難」(アーウィン・ショー)
同上

戦後のパレスチナ。船に乗ってきたユダヤ人たちの上陸を阻止する任務についた、イギリス軍に所属するアイルランド人が、戦時中よりも複雑になってしまった世界に思いをめぐらせる。船は入港し、ユダヤ人たちはその場で別の船に乗りかえさせられるが、その最中に騒動が起きる。アーウィン・ショーはフラッシュ・バックが上手い。

「いばら姫の物語」(R・A・ラファティ)
「とうもろこし倉の幽霊」(早川書房 2022)

学術エセーの体裁をとった小説。紀元1000年に世界は滅びたが、ひとりの女性が生き残り、彼女は眠り、夢をみている。彼女を目覚めさせてはならない。なぜなら、われわれは彼女の夢のなかの存在なのだ。

「詩人の旅行かばん」(ギッシング)
「ギッシング短篇集」(岩波書店 1997)

詩人志望の青年が、自作の詩をかばんにつめてロンドンにやってくる。下宿をみつけるが、案内してくれた娘にかばんを盗まれてしまう。それから8年後、文筆家として成功し、いまでは片田舎で暮らす青年のもとに、盗まれたかばんに入っていた詩をもっているという人物から手紙が届く。青年はその人物と面会をすることに。ちょっとO・ヘンリのような作品。

「ホール・イン・ツー」(ラルフ・マキナニー)
「夜汽車はバビロンへ」(扶桑社 2000)

頭を撃ち抜かれ、クローゼットに吊るされていた教授の死体。犯人は教授のゴルフ仲間なのか。

「銀幕のスター」(ジャニス・ロウ)
同上

暴力にたえかねギャングの夫のもとを去った女性。たまたまTVでやっていたモノクロ映画に魅せられ、そのヒロインと同じ服装をする。そして、必ず自分を殺しにくるであろう夫に用心しながら、判で押したような、隠者めいた日々を送る。

「碑(いしぶみ)」(中山義秀)

幕末から明治にかけて、武家の子として生まれた頑固者の兄弟がたどった生涯をえがく。性格とは運命のことだということばを思いだした。

「黎明」(中山義秀)

日本人としてはじめてシベリアを横断した嵯峨壽安。シベリアは横断したものの、世渡りは下手で、傲慢で潔癖な性分から、ついに落伍者として終わる。

ことしの更新はこれが最後。
皆様よいお年を。



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短編を読む その22

「レオポルド警部のバッジを盗め」(エドワード・D・ホック)
「怪盗ニック対女怪盗サンドラ」(早川書房 2004)

美術館から絵を盗んだサンドラが、空港でレオポルド警部に逮捕される。美術館では同時に別の絵画の盗難と殺人も起こっており、すべての事件の犯人と疑われたサンドラは、ニックに助けをもとめる。シリーズ・キャラクターの3人がそれぞれ活躍をみせる。まったくうまいものだ。

「ニューヨークの喧騒」(アーウィン・ショー)
「心変わり」(王国社 1985)

妊娠7か月の妻をもつ男が、レストランで食事をしていると客から声をかけられる。客は死刑制度についてなど面倒なことを話かけてくるのだが、レストランの主人から、この男が不幸にあったことを聞く。男は家に帰り、妻のいるベッドに入り、祈る。

「おとなしい凶器」(ロアルド・ダール)
「16品の殺人メニュー」(新潮社 1997)

警官の夫から、衝撃的な話を聞かされた妊娠6か月の妻が、夕食をつくるために冷凍のラム・レッグ(仔羊の脚)をもちだす。

「ギデオンと焼栗売り」(J・J・マリック)
同上

焼栗売りのベン爺さんの屋台が、2組の若者グループに襲われ、爺さんはけがを負った。屋台はなぜ襲われたのか。長年爺さんの屋台で焼栗を買っていた、犯罪捜査部長のギデオンが事件を解決する。ミステリというより犯罪小説といった趣き。

「追いつめられて」(アシモフ)
「16品の殺人メニュー」(新潮社 1997)

編集者が原稿をいつまでたっても掲載しないと憤慨する物書き。なぜその編集者は原稿を掲載しようとしないのか。黒後家蜘蛛の会のメンバーが頭をひねる。

「二本の調味料壜」(ダンセイニ卿)
同上

調味料の行商をしている男が、一緒に住んでいる頭の切れるリンリーさんに探偵仕事をもちかける。その殺人事件では、殺された少女の遺体がどうしてもみつからない。犯人がカラマツを切った理由が、ずいぶんひとを食っている。

「死の卵」(ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリング)
同上

復活祭の日曜日、木にぶら下がった死体や、毒の入ったチョコレート製のイースターエッグを食べて重体となった女性の事件のために、2人の警官がアムステルダムの町を右往左往する。

「経帷子の秘密」(岡本綺堂)
「鷲」(光文社 1990)

質屋の娘とその母が横浜見物の帰りに、道ゆく老婆に同情し駕篭に乗せる。が、いつのまにか老婆は消え失せ、駕篭のなかには経帷子が残っている。その後、娘は母の伯父の媒酌で酒屋に嫁ぐことになるが、この酒屋にはある婆さんがたたっており、子どもが生まれてもみな死んでしまうという。娘はすべてを呑みこんで、この家に入り、子をなす。因縁があるのかないのかわからないといった怪談。波間に浮かぶ白い経帷子の場面が印象的。

「あの夕陽」(フォークナー)
「エミリーに薔薇を」(福武書店 1988)

自分の夫に待ち伏せされ、殺されるとおびえるナンシーの話。異様な迫力。

「愛しい死体」(リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク)
「皮肉な終幕」(扶桑社 2021)

妻を殺した男が、さまざまな偽装工作をほどこし、アリバイづくりをするが、偶然がかさなって計画は破綻してしまう。TVドラマ「刑事コロンボ」誕生の端緒となった作品とのこと。


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短編を読む その21

「じっと見ている目」
「アイリッシュ短編集3」(ウィリアム・アイリッシュ 東京創元社 1988)

息子の妻が息子を殺そうとしていることを知った老母。車椅子に乗り、ほとんどまばたきしかできない老母は、なんとか息子にそのことを伝えようとする。

「帽子」
同上

食堂でとりちがえた帽子のなかには、何枚もの偽の20ドル札が隠されていた。最近世間を騒がせている偽札づくりの仕業なのか。驚いていると、2人組の落とし主がアパートを訪ねてくる。

「ローズヴィルのピザショップ」
「休日はコーヒーショップで謎解きを」(ロバート・ロプレスティ 東京創元社 2019)

夫婦が経営する田舎町のピザ屋に、引退したマフィアと思われる男がやってきて常連となる。男は他の困った常連客に良い影響をあたえていくのだが、ある日、男を狙って騒動が起こる。点描される客の描写が楽しい。コージー・ノワールというへんてこなジャンルに属する作品とのこと。

「残酷」
同上

殺し屋がスマートに任務を遂行したと思ったら、逃亡の過程で次から次へとひどい目にあう。

「二人の男、一挺の銃」
同上

押し入ってきた男に拳銃を向けられながら、ひとりの女をめぐる3人の男の話を聞かされるはめになった〈わたし〉。男の指示通り警察を呼ぶのだが。ジャック・リッチー風を狙ったと作者。

「敵」(シャーロット・アームストロング)
「世界傑作推理12選&one」(光文社 1978)

可愛がっていた子犬が毒殺されたことで、少年たちは近所の偏屈な男がやったにちがいないと思いこむ。男を敵視し、報復を考えるのだが、近所にすむ判事の若い友人のとりなしで、少年たちは事実関係の調査に乗りだす。

「我々が殺す番」
「シャーロック伯父さん」(ヒュー・ペンティコースト 論創社 2020)

これは中編。殺人現場を目撃してしまった少年が犯人に狙われ、少年の伯父らが殺人犯を捕えようとする。素晴らしい緊迫感。

「旅商人の話」
「ディケンズ短篇集」(ディケンズ 岩波書店 1986)

旅商人が大雨のなか一夜の宿をもとめた家で、椅子の精霊(?)の力を借りて、未亡人にいいよる男をしりぞけ、自分が未亡人と結婚する。「ピクウィック・クラブ」の一挿話とのこと。

「グロッグツヴィッヒの男爵」
同上

狩りにでかけてはクマと一騎打ちをするのが趣味の、むやみに元気な男爵が結婚。奥方の尻に敷かれ、子どもはどんどん生まれ、義母はやかましく、借金までかかえ、男爵は死を決意する。すると目の前に奇妙な男があらわれる。「ニコラス・ニクルビー」の一挿話とのこと。読むと元気がでる一編。思えば、読むと元気がでる短編というのはめずらしいのではないか。

「チャールズ2世の時代に獄中で発見された告白書」
同上

嫌っていた兄の遺児を引きとり育てていた弟が、遺産目当てで遺児を殺害。が、思いがけずその犯罪が露見する。犯行におよび、そしておよんだあとの心理描写と、露見するまでのサスペンスが素晴らしい。倒叙もののミステリとしても読める。


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短編を読む その20

「船乗りの王」(フェレイラ・カストロ)
「ポルトガル短篇選集」(彩流社 1988)

丘の上の教会に本を読みにきた青年が、奉納物をもって教会からでてきた男にでくわす。泥棒をしているのではない、この奉納物は私のものだという男は、天地創造から現在にいたるまでの不手際に良心の呵責をおぼえていると青年に告白する。復活したキリストの物語。

「密航者」(ジョゼ・ロドリゲス・ミグイエス)
同上

貨物船の石炭庫のそばに隠れ、ボルチモアに密航してきた男。繋船綱をつたい波止場をめざす。

復活(ドミンゴス・モンテイロ)
同上

キリストのモデルを募集した画家のもとに、本物のキリストを名乗る男がやってくる。父に頼んでもどしてもらったのだと男は話す。こうしてみると、復活したキリストというジャンルもあるのかもしれない。

「開運の願」(上林暁)

妹と義弟との3人暮らしを書いた私小説。皆それぞれ目標をもち努力している。「照覧あれ」という最後の一文が胸を打つ。

「白い屋形船」(上林暁)

脳溢血で倒れた経験を書いた私小説。事実と記憶がごちゃまぜになったことや、入院生活の様子などを端正な筆致で書いている。

「エミリーに薔薇を」(フォークナー)
「エミリーに薔薇を」(福武書店 1988)

屋敷に引きこもって暮らしていたエミリーが亡くなる。愛人が立ち去ってから、エミリーの屋敷はひどい臭気がするようになり、またそれ以前、エミリーは薬局で毒薬を買っていた。町のひとたちがエミリーの屋敷に入って目にしたものは。

「追いつめられて」(ディケンズ)
「ディケンズ短篇集」(岩波書店 1986)

生命保険会社の元総支配人が、保険金目当ての殺人とその復讐について語る。保険金殺人をあつかった作品は、どのくらい昔からあるのだろう。

「鉄の神経お許しを」(エドモンド・ハミルトン)
「太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊」(東京創元社 2013)

「キャプテン・フューチャー」シリーズの1編。フューチャーメンの1人、鋼鉄ロボットのグラッグが気を病み、精神分析医にかかる。そして療養をかね、自動機械による鉱石の搬出がストップしてしまった冥王星第4惑星に調査にでかける。グラッグと精神分析医のかけあいが愉快。

「紙細工の城を盗め」(エドワード・D・ホック)
「怪盗ニック対女怪盗サンドラ」(早川書房 2004)

ある家から紙細工の城を盗むよう依頼を受けたニック。目的の家に入ると、そこには死体があり、ちょうどあらわれた警官に逮捕されてしまう。が、女怪盗サンドラに救いだされ、ニックは紙細工の城と真相を追う。

信号手(ディケンズ)
「ディケンズ短篇集」(岩波書店 1986)

幽霊があらわれるたびに事故が起きるという、鉄道員の怪談。幽霊は何をつたえたいのか、どうして幽霊は事故を回避する方法を教えてくれないのか、などと鉄道員は悩む。


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短編を読む その19

「不思議の国の悪意」
「不思議の国の悪意」(ルーファス・キング 東京創元社 1999)

幼いころ親友が誘拐されたという経験をもつ女性。結婚を目前に、婚約者が事故を起こしてしまう。が、その事故は昔の誘拐事件にかかわりをもつものだった。伏線がぎゅうぎゅう詰め。最後、いくつもの要素が見事に収斂する。

「ピアノ教師の上達ぶり」(S・N・ベアマン)
「ニューヨーカー短篇集 3」(早川書房 1976)

少年時代、突如ピアノを習いはじめたころのことをユーモラスに回想した作品。友人の献身により、部屋とピアノとピアノ教師をあてがわれたのだったが、才能の乏しさと経済的な理由から、ピアノ教師に長くピアノを弾いてもらうよう仕向けていく。

「古写本の呪い」
「タラント氏の事件簿」(デイリー・キング 東京創元社 2018)

見張っていたのに消えてしまった古文書の謎をタラント氏が解き明かす。タラント氏は変なところから登場する。

「〈第四の拷問〉」
(同上)

〈第四の拷問〉と名づけられた湖のボートから、乗っていたひとたちが身投げするように亡くなる事件が起こる。この怪事件をタラント氏が解決する。ミステリよりもモンスター小説というべきか。大変恐ろしい。

「釘と鎮魂歌」
(同上)

タラント氏が住んでいるアパートのペントハウスで密室事件が発生。犯人はまだ室内に潜んでいるのか。

「エミリーがいない」
「クライム・マシン」(ジャック・リッチー 晶文社 2005)

妻を殺したと思しき夫と、それを探りだそうとする妻の従姉妹。2人の攻防をえがいたサスペンス小説と思ったら…。状況だけなら、ジョン・コリアの「死者の悪口を言うな」に似ている。夫婦殺人はなんとヴァリエーションに富んでいることか。

「ルーレット必勝法」
(同上)

ルーレット必勝法を編みだしたという男に、カジノ経営者が悩まされる。カジノ経営者の視点から書いてあるところがミソ。

「カーデュラ救助に行く」
(同上)

路上で強盗にあっている女性を助けたものの、女性には去られ、警察には疑われてしまったカーデュラ。しかも翌日、まったく同じことがくり返される。吸血鬼探偵カーデュラ物の一編。

「フェスティヴァル」
「時は老いをいそぐ」(アントニオ・タブッキ 河出書房新社 2012)

警察国家で弁護士をしていた人物から、記録係として法廷を撮影しにきた映画監督のおかげで裁判が有利になったという話を聞く。

「墓堀り男をさらった鬼の話」
「ディケンズ短篇集」(ディケンズ 岩波書店 1986)

クリスマスの夜、ひねくれ根性の墓堀男が鬼にさらわれ、さまざまな映像をみせられ改心する。解説によれば、「ピクウィック・クラブ」中の一編で、「クリスマス・キャロル」の原型とのこと。


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短編を読む その18

「死体をかつぐ若者」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 3」(東京創元社 1973)

継母を殺した父を救うため、死体を隠そうとする息子。大変な緊張感。

「木石雲」(カーソン・マッカラーズ)
「悲しき酒場の唄」(白水社 1990)

新聞配達の少年が酒場で、妻に逃げられた老人から、愛の哲学を聞かされる。いきなり女に恋をしてはいけない。木石雲を愛することからはじめなくてはいけない、などと老人は語る。

「淵の死体」(ルーファス・キング)
「不思議の国の悪意」(東京創元社 1999)

ギャングが死体を淵に沈めるのを目撃した老婦人。報復を恐れながらも裁判で証言し、ギャングは電気椅子送りになる。ところがある日、家に不審な侵入者があらわれる。どんでん返しが楽しい。

「思い出のために」(ルーファス・キング)
「不思議の国の悪意」(東京創元社 1999)

継母が砒素をつかい夫を殺害。遺灰を海に撒き、証拠はないと勝ち誇る。次に狙われるのは娘と思われたが――。おとぎ話のような設定の一編。

「子守女」(エミリー・ハーン)
「ニューヨーカー短編集 3」(早川書房 1986)

日本軍に占領された香港。〈わたし〉は陸軍捕虜収容所にいる夫に、娘の姿をみせるため、子守女と苦心をする。

「マイアミプレスの特ダネ」(ルーファス・キング)
「不思議の国の悪意」(東京創元社 1999)

勝気な女性が、特ダネを狙ったあげく誘拐されてしまうのだが、最後はすべてがうまくいく。スクリューボール・コメディ風サスペンス。

「いっぷう変わった人々」(レーナ・クルーン)
「木々は八月に何をするのか」(新評論 2003)

嬉しくなると宙に浮かんでしまう女の子。ちゃんとしてちょうだいと親にいわれても、なかなかちゃんとできない。女の子は影をもたない男の子や、鏡に姿がうつらない男の子と友だちになり、3人でクラブを結成する。ロダーリの作品にも似た、児童文学のような味わい。

「悲しき酒場の唄」(カーソン・マッカラーズ)
「悲しき酒場の唄」(白水社 1990)

独立独歩で、訴訟好きで、医者の真似事が好きな女性と、その女性と一緒に暮らすことになった女性のいとこ、そして女性の元夫との奇妙な関係をえがいた中編。西部劇のようだ。

「秘密のコーヒー 葦の物語」(レーナ・クルーン)
「木々は八月に何をするのか」(新評論 2003)

夏、いつもコーヒーを飲む桟橋の上で、少女が見知らぬ少年に出会うという幽霊譚。

「青白い月」(眉村卓)
「ロマンチックSF傑作選」(集英社 1977)

パラレルワールドに迷いこんだ〈ぼく〉は、殺人容疑をかけられ、見知らぬ女性と逃避行をしたあげく、心中をせまられる。編者は豊田有恒。これの一体どこがロマンチックなのか。


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短編を読む その17

「死体をかつぐ若者」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 3」(東京創元社 1973)

継母を殺した父を救うため、死体を隠そうとする息子。大変な緊張感。

「木石雲」(カーソン・マッカラーズ)
「悲しき酒場の唄」(白水社 1990)

新聞配達の少年が酒場で、妻に逃げられた老人から、愛の哲学を聞かされる。いきなり女に恋をしてはいけない。木石雲を愛することからはじめなくてはいけない――などと老人は語る。

「淵の死体」(ルーファス・キング)
「不思議の国の悪意」(東京創元社 1999)

ギャングが死体を淵に沈めるのを目撃した老婦人。報復を恐れながらも裁判で証言し、ギャングは電気椅子送りになる。ところがある日、家に不審な侵入者があらわれる。どんでん返しが楽しい。

「思い出のために」(ルーファス・キング)
同上

継母が砒素をつかい夫を殺害。遺灰を海に撒き、証拠はないと勝ち誇る。次に狙われるのは娘と思われたが――。おとぎ話のような設定の一編。

「子守女」(エミリー・ハーン)
「ニューヨーカー短編集 3」(早川書房 1986)

日本軍に占領された香港。〈わたし〉は陸軍捕虜収容所にいる夫に、娘の姿をみせるため、子守女と苦心をする。

「マイアミプレスの特ダネ」(ルーファス・キング)
「不思議の国の悪意」(東京創元社 1999)

勝気な女性が、特ダネを狙ったあげく誘拐されてしまうのだが、最後はすべてがうまくいく。スクリューボール・コメディ風サスペンス。

「いっぷう変わった人々」(レーナ・クルーン)
「木々は八月に何をするのか」(新評論 2003)

嬉しくなると宙に浮かんでしまう女の子。ちゃんとしてちょうだいと親にいわれても、なかなかちゃんとできない。女の子は影をもたない男の子や、鏡に姿がうつらない男の子と友だちになり、3人でクラブを結成する。ロダーリの作品にも似た、児童文学のような味わい。

「悲しき酒場の唄」(カーソン・マッカラーズ)
「悲しき酒場の唄」(白水社 1990)

独立独歩で、訴訟好きで、医者の真似事が好きな女性と、その女性と一緒に暮らすことになった女性のいとこ、そして女性の元夫との奇妙な関係をえがいた中編。西部劇のようだ。

「秘密のコーヒー 葦の物語」(レーナ・クルーン)
「木々は八月に何をするのか」(新評論 2003)

夏、いつもコーヒーを飲む桟橋の上で、少女が見知らぬ少年に出会うという幽霊譚。

「青白い月」(眉村卓)
「ロマンチックSF傑作選」(集英社 1977)

パラレルワールドに迷いこんだ〈ぼく〉は、殺人容疑をかけられ、見知らぬ女性と逃避行をしたあげく、心中をせまられる。編者は豊田有恒。これの一体どこがロマンチックなのか。


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短編を読む その16

「人間狩り」(都築道夫)
「未来警察殺人課」(徳間書店 1982)

科学技術の発達とテレパシー能力者の存在により殺人がなくなった未来。殺意を事前に発見し処分するのが任務の、警察三課の星野はケニア警察の通報を受けナイロビに赴く。007かスピレーン作品のSF版といった風。

「マルセーユの幻影」(ジャン・コクトー)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

警察から逃れるため女装していた若い男が、たまたま出会った紳士に助けられる。紳士は相手をすっかり女性と思いこみ、部屋をあてがい、うやうやしくもてなす。

「父との再会」(ジョン・チーヴァー)
「橋の上の天使」(河出書房新社 1992)

3年前に母と離婚した父に再会した〈僕〉。父はむやみに大声をだす、高圧的で無作法なひとだった。

「ダイヤモンド」(マンディアルグ)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

裸でダイヤモンドを鑑定していた女性。気がつくとダイヤモンドのなかに入ってしまう。

「ボア」(マルグリット・デュラス)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

日曜の午後、塾の女先生と動物園でボア(王蛇)が若鶏を呑みこむのをみたあと、必ず先生の下着姿をみせられていた少女時代を回想する。なんだか痛ましい。

「アフリカ秘話」(マルタン・デュ・ガール)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

作家の〈わたし〉が聞いた、姉と子をなくした書店員の話。これまた、とびきり痛ましい話だ。

「シルヴィ」(ネルヴァル)
「フランス短篇24」(集英社 1975)

村の幼なじみと、劇団の女優と、いまでは修道院に入った女性と、3人の女性に心惹かれるが、自分の妄想に執着する〈わたし〉の恋心はだれにも理解されない。

「家庭の事情」(カーソン・マッカラーズ)
「悲しき酒場の唄」(白水社 1990)

仕事を終え、2人の子どもとアルコール中毒の妻が待つ家に帰る男。家庭を保つため、男は子どもの世話をし、妻をなだめる。

「ただならぬ部屋」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 3」(東京創元社 1973)

泊り客が次々と自殺するホテルの部屋。真相を突きとめるため、ホテル探偵ストライカーは、自らその部屋に泊まる。

「裏窓」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 3」(東京創元社 1973)

けがのため気晴らしに窓から外をながめるよりほかなくなった男が、隣家で夫が妻を殺害したのではないかと怪しみはじめる。ヒッチコック映画の原作。


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短編を読む その15

「警官と讃美歌」(O・ヘンリ)
「O・ヘンリ短編集3」(新潮社 1989)

O・ヘンリの数ある代表作のひとつ。刑務所で冬を越そうと、浮浪者が無銭飲食しようとしたり、女性に声をかけたり、店のガラスを割ったり、カサを盗んだりと、いろいろするがうまくいかない。

「よみがえった改心」(O・ヘンリ)
「O・ヘンリ短編集1」(新潮社 1988)

出所した金庫破りが靴屋として成功。銀行家の娘と恋をし、前歴を隠して婚約する。が、もうすぐ結婚というとき、子どもが金庫に閉じこめられる。折しも町には、金庫破りを追いかけて探偵がきていた。

「シャーロック伯父さん」(ヒュー・ペンティコースト)
「シャーロック伯父さん」(論創社 2020)

ローカル色が強く、またアウトドア色が強いミステリ・シリーズの一編。未亡人とその番犬が殺害された。犯人はカネに困っていた甥なのか。弁護に立ったジョージ伯父さんは、法廷でホームズ風のやりとりをしながら真犯人をあばく。

「クリスマスは悲しい季節」(ジョン・チーヴァー)
「橋の上の天使」(河出書房新社 1992)

高級マンションのエレベーター係としてはたらく男。住民みんなにクリスマスは悲しい季節だと告げていると、住民からたくさんの食べ物や贈り物をもらう。男はそれを下宿の女主人とその子どもたちにもっていき、女主人はそれを――。クリスマスの慈善を皮肉めかした作品。

「四つの自由」(エドワード・ニューハウス)
「ニューヨーカー短篇集3」(早川書房 1976)

戦時中のカイロでもよおされた慰問パーティ。将軍の部下の目を通してその欺瞞的な雰囲気がえがかれる。

「乗り換えを待つ短い時間」(ロバート・マクラクリン)
「ニューヨーカー短篇集3」(早川書房 1976)

乗り換えの列車を待つ4人の黒人兵士たち。たまたま駅で出会った20名のドイツ人捕虜のほうが、自分たちより待遇がいいことを目にする。

「別離」(モリー・パンター・ダウンズ)
「ニューヨーカー短篇集3」(早川書房 1976)

子どものいない夫婦の、夫が召集された前後のことを妻の視点から書いたもの。最後が意地が悪い。

「コレット」(ウラジミール・ナボコフ)
「ニューヨーカー短篇集3」(早川書房 1976)

10歳の頃、ペテルブルグからフランスのピアリッツに、列車に乗って、家族で2か月間海水浴にでかけた思い出を書いた作品。細部が豊かで生き生きとしている。

「晩餐後の物語」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集1」(東京創元社 1985)

エレベーター事故の復旧作業中、内部に閉じこめられた青年が亡くなる。自殺かと思われたが、青年の父は犯人をあぶりだすため、事故当時エレベーター内に一緒に閉じこめられていたひとたちを晩餐に招待し、罠にかける。

「ヨシハラ殺人事件」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集1」(東京創元社 1985)

ヨシハラにいた休暇中のアメリカ兵士のもとに、ブロンドの女性が助けをもとめにくる。女性は兵士に殺人の濡れ衣を着せられていると訴える。ゲイシャにジュージュツ、ハラキリまででてくる。


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