短編を読む その20

「船乗りの王」(フェレイラ・カストロ)
「ポルトガル短篇選集」(彩流社 1988)

丘の上の教会に本を読みにきた青年が、奉納物をもって教会からでてきた男にでくわす。泥棒をしているのではない、この奉納物は私のものだという男は、天地創造から現在にいたるまでの不手際に良心の呵責をおぼえていると青年に告白する。復活したキリストの物語。

「密航者」(ジョゼ・ロドリゲス・ミグイエス)
同上

貨物船の石炭庫のそばに隠れ、ボルチモアに密航してきた男。繋船綱をつたい波止場をめざす。

復活(ドミンゴス・モンテイロ)
同上

キリストのモデルを募集した画家のもとに、本物のキリストを名乗る男がやってくる。父に頼んでもどしてもらったのだと男は話す。こうしてみると、復活したキリストというジャンルもあるのかもしれない。

「開運の願」(上林暁)

妹と義弟との3人暮らしを書いた私小説。皆それぞれ目標をもち努力している。「照覧あれ」という最後の一文が胸を打つ。

「白い屋形船」(上林暁)

脳溢血で倒れた経験を書いた私小説。事実と記憶がごちゃまぜになったことや、入院生活の様子などを端正な筆致で書いている。

「エミリーに薔薇を」(フォークナー)
「エミリーに薔薇を」(福武書店 1988)

屋敷に引きこもって暮らしていたエミリーが亡くなる。愛人が立ち去ってから、エミリーの屋敷はひどい臭気がするようになり、またそれ以前、エミリーは薬局で毒薬を買っていた。町のひとたちがエミリーの屋敷に入って目にしたものは。

「追いつめられて」(ディケンズ)
「ディケンズ短篇集」(岩波書店 1986)

生命保険会社の元総支配人が、保険金目当ての殺人とその復讐について語る。保険金殺人をあつかった作品は、どのくらい昔からあるのだろう。

「鉄の神経お許しを」(エドモンド・ハミルトン)
「太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊」(東京創元社 2013)

「キャプテン・フューチャー」シリーズの1編。フューチャーメンの1人、鋼鉄ロボットのグラッグが気を病み、精神分析医にかかる。そして療養をかね、自動機械による鉱石の搬出がストップしてしまった冥王星第4惑星に調査にでかける。グラッグと精神分析医のかけあいが愉快。

「紙細工の城を盗め」(エドワード・D・ホック)
「怪盗ニック対女怪盗サンドラ」(早川書房 2004)

ある家から紙細工の城を盗むよう依頼を受けたニック。目的の家に入ると、そこには死体があり、ちょうどあらわれた警官に逮捕されてしまう。が、女怪盗サンドラに救いだされ、ニックは紙細工の城と真相を追う。

信号手(ディケンズ)
「ディケンズ短篇集」(岩波書店 1986)

幽霊があらわれるたびに事故が起きるという、鉄道員の怪談。幽霊は何をつたえたいのか、どうして幽霊は事故を回避する方法を教えてくれないのか、などと鉄道員は悩む。


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