短編を読む その21

「じっと見ている目」
「アイリッシュ短編集3」(ウィリアム・アイリッシュ 東京創元社 1988)

息子の妻が息子を殺そうとしていることを知った老母。車椅子に乗り、ほとんどまばたきしかできない老母は、なんとか息子にそのことを伝えようとする。

「帽子」
同上

食堂でとりちがえた帽子のなかには、何枚もの偽の20ドル札が隠されていた。最近世間を騒がせている偽札づくりの仕業なのか。驚いていると、2人組の落とし主がアパートを訪ねてくる。

「ローズヴィルのピザショップ」
「休日はコーヒーショップで謎解きを」(ロバート・ロプレスティ 東京創元社 2019)

夫婦が経営する田舎町のピザ屋に、引退したマフィアと思われる男がやってきて常連となる。男は他の困った常連客に良い影響をあたえていくのだが、ある日、男を狙って騒動が起こる。点描される客の描写が楽しい。コージー・ノワールというへんてこなジャンルに属する作品とのこと。

「残酷」
同上

殺し屋がスマートに任務を遂行したと思ったら、逃亡の過程で次から次へとひどい目にあう。

「二人の男、一挺の銃」
同上

押し入ってきた男に拳銃を向けられながら、ひとりの女をめぐる3人の男の話を聞かされるはめになった〈わたし〉。男の指示通り警察を呼ぶのだが。ジャック・リッチー風を狙ったと作者。

「敵」(シャーロット・アームストロング)
「世界傑作推理12選&one」(光文社 1978)

可愛がっていた子犬が毒殺されたことで、少年たちは近所の偏屈な男がやったにちがいないと思いこむ。男を敵視し、報復を考えるのだが、近所にすむ判事の若い友人のとりなしで、少年たちは事実関係の調査に乗りだす。

「我々が殺す番」
「シャーロック伯父さん」(ヒュー・ペンティコースト 論創社 2020)

これは中編。殺人現場を目撃してしまった少年が犯人に狙われ、少年の伯父らが殺人犯を捕えようとする。素晴らしい緊迫感。

「旅商人の話」
「ディケンズ短篇集」(ディケンズ 岩波書店 1986)

旅商人が大雨のなか一夜の宿をもとめた家で、椅子の精霊(?)の力を借りて、未亡人にいいよる男をしりぞけ、自分が未亡人と結婚する。「ピクウィック・クラブ」の一挿話とのこと。

「グロッグツヴィッヒの男爵」
同上

狩りにでかけてはクマと一騎打ちをするのが趣味の、むやみに元気な男爵が結婚。奥方の尻に敷かれ、子どもはどんどん生まれ、義母はやかましく、借金までかかえ、男爵は死を決意する。すると目の前に奇妙な男があらわれる。「ニコラス・ニクルビー」の一挿話とのこと。読むと元気がでる一編。思えば、読むと元気がでる短編というのはめずらしいのではないか。

「チャールズ2世の時代に獄中で発見された告白書」
同上

嫌っていた兄の遺児を引きとり育てていた弟が、遺産目当てで遺児を殺害。が、思いがけずその犯罪が露見する。犯行におよび、そしておよんだあとの心理描写と、露見するまでのサスペンスが素晴らしい。倒叙もののミステリとしても読める。


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