タナカの読書メモです。
一冊たちブログ
短編を読む その14
「荻寺の女」(久生十蘭)
「平賀源内捕物帳」(朝日新聞出版 1996)
三人の娘がそろって脳天から切りつけられるという死に方をする。あたりには下手人の影すらない。この謎を、御用聞の出尻伝兵衛に口説かれた源内先生が解き明かす。
「預り姫」(久生十蘭)
(同上)
北町奉行所の御用聞、出尻伝兵衛の姪お才が大活躍。狙われた田沼意次を救う。
「書類第16号」(ジョルジュ・シムノン)
「13の秘密」(東京創元社 1980)
解決した事件の話を、ルボルシェ探偵が〈ぼく〉に聞かせるという、安楽椅子探偵もの。今回は、毒を盛ったのは夫人だといい残して死んだ、夫にまつわる事件。会話が多く、無駄がなく、読みやすい。
「マレトロワの扉」(スティーヴンスン)
「新アラビア夜話 第2部」(光文社 2022)
15世紀のフランス。夜回りを避けるため偶然入りこんだ屋敷には、若者を待っていたという老人と、花嫁衣装を着た老人の姪がいた。若者の一夜の冒険をえがいた作品。一夜の冒険というのもアンソロジーのテーマとなりそう。
「薔薇色のヌード」(A・S・バイアット)
「マティス・ストーリーズ」(集英社 1995)
マティスの「薔薇色のヌード」が飾られている美容院に通う女性。店主は妻子のある身で恋人をつくっており、髪をセットされながら女性はその話を聞かされる。若いころの情事を思いだし、また現在の年齢を確認させられた女性は大いにとり乱す。
「氷の部屋」(A・S・バイアット)
(同上)
女子大院生にセクハラで訴えられた老教授に話を聞くため、女子学生部長のガータは老教授と中華料理店でランチをとる。マティスと女子大学院生の訴えを仲立ちに、老教授と部長は思いがけず互いを認めあう。
「サンペナタス断崖の縁で」(R・A・ラファティ)
「とうもろこし倉の幽霊」(早川書房 2022)
カメが空を飛び、ヘビがしゃべりだし、カモが歌いだす跳躍進化が発生。進化をうながす薬剤を自ら飲んだ研究者の子どもたちは、カモのような姿になる。さらにその薬剤を貯水池に入れたため、町中みんながカモのようになる。同著者の長編「蛇の卵」を思いだす。
「臨海楼綺譚」(スティーヴンスン)
「新アラビア夜話 第2部」(光文社 2022)
これは中編。秘密結社のカネを使いこんだため命を狙われた銀行家が海辺の楼閣にかくまわれる。そこは〈私〉の学生時代の思い出の土地。たまたまその地を訪れていた〈私〉は旧友と再会し、また銀行家の令嬢と恋に落ち、あらそいに巻きこまれていく。
「切り口」(フランシスコ・アラーヤ)
「世界短編名作選スペイン編」(新日本出版社 1978)
内戦時、たまたま鉢あわせた同郷人を殺害した兵士が、戦後その家族を訪ねる。
「ホン・コンおばさん正義を行使す」(ジョイス・ポーター)
「ユーモアミステリ傑作選」(講談社 1980)
ホン・コンが危険だと訴えていたバイパスで死亡事故が発生。犠牲者はうつ病の薬を服用していたというが、これは警察による捏造にちがいない。かくして傍若無人なホン・コンおばさんは独自の捜査を開始する。
「平賀源内捕物帳」(朝日新聞出版 1996)
三人の娘がそろって脳天から切りつけられるという死に方をする。あたりには下手人の影すらない。この謎を、御用聞の出尻伝兵衛に口説かれた源内先生が解き明かす。
「預り姫」(久生十蘭)
(同上)
北町奉行所の御用聞、出尻伝兵衛の姪お才が大活躍。狙われた田沼意次を救う。
「書類第16号」(ジョルジュ・シムノン)
「13の秘密」(東京創元社 1980)
解決した事件の話を、ルボルシェ探偵が〈ぼく〉に聞かせるという、安楽椅子探偵もの。今回は、毒を盛ったのは夫人だといい残して死んだ、夫にまつわる事件。会話が多く、無駄がなく、読みやすい。
「マレトロワの扉」(スティーヴンスン)
「新アラビア夜話 第2部」(光文社 2022)
15世紀のフランス。夜回りを避けるため偶然入りこんだ屋敷には、若者を待っていたという老人と、花嫁衣装を着た老人の姪がいた。若者の一夜の冒険をえがいた作品。一夜の冒険というのもアンソロジーのテーマとなりそう。
「薔薇色のヌード」(A・S・バイアット)
「マティス・ストーリーズ」(集英社 1995)
マティスの「薔薇色のヌード」が飾られている美容院に通う女性。店主は妻子のある身で恋人をつくっており、髪をセットされながら女性はその話を聞かされる。若いころの情事を思いだし、また現在の年齢を確認させられた女性は大いにとり乱す。
「氷の部屋」(A・S・バイアット)
(同上)
女子大院生にセクハラで訴えられた老教授に話を聞くため、女子学生部長のガータは老教授と中華料理店でランチをとる。マティスと女子大学院生の訴えを仲立ちに、老教授と部長は思いがけず互いを認めあう。
「サンペナタス断崖の縁で」(R・A・ラファティ)
「とうもろこし倉の幽霊」(早川書房 2022)
カメが空を飛び、ヘビがしゃべりだし、カモが歌いだす跳躍進化が発生。進化をうながす薬剤を自ら飲んだ研究者の子どもたちは、カモのような姿になる。さらにその薬剤を貯水池に入れたため、町中みんながカモのようになる。同著者の長編「蛇の卵」を思いだす。
「臨海楼綺譚」(スティーヴンスン)
「新アラビア夜話 第2部」(光文社 2022)
これは中編。秘密結社のカネを使いこんだため命を狙われた銀行家が海辺の楼閣にかくまわれる。そこは〈私〉の学生時代の思い出の土地。たまたまその地を訪れていた〈私〉は旧友と再会し、また銀行家の令嬢と恋に落ち、あらそいに巻きこまれていく。
「切り口」(フランシスコ・アラーヤ)
「世界短編名作選スペイン編」(新日本出版社 1978)
内戦時、たまたま鉢あわせた同郷人を殺害した兵士が、戦後その家族を訪ねる。
「ホン・コンおばさん正義を行使す」(ジョイス・ポーター)
「ユーモアミステリ傑作選」(講談社 1980)
ホン・コンが危険だと訴えていたバイパスで死亡事故が発生。犠牲者はうつ病の薬を服用していたというが、これは警察による捏造にちがいない。かくして傍若無人なホン・コンおばさんは独自の捜査を開始する。
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短編を読む その13
「チゼリック卿の遺産」
「ヴァルモンの功績」(ロバート・バー 東京創元社 2020)
ヴァルモン譚の一編。貧乏な青年貴族にほだされて、意地の悪い伯父さんが残したはずの遺産をさがすため、ヴァルモンはその屋敷の訪れる。
「不老長寿の霊薬」(バルザック)
「フランス幻想小説傑作集」(白水社 1985)
ドン・ジュアン伝説をもとにした短編。父から霊薬を手に入れたドン・ジュアンは自身のいまわのきわに霊薬をつかうよう息子にいい残す。最後は悪党のドン・ジュアンが聖遺物になってしまうという皮肉な結末。老人の妄執に迫力がある。訳注が助かる。
「時の網」(ミリアム・アレン・ディフォード)
「密室殺人傑作選」(早川書房 1971)
悪魔と契約した男の話。男はうまく悪魔をだし抜く。ずいぶん人間の法を尊重する悪魔だ。
「図書館の本を盗め」
「怪盗ニック対女怪盗サンドラ」(エドワード・D・ホック 東京創元社 2004)
怪盗ニック・シリーズの一編。図書館の本を盗む理由が面白い。古本屋でもいいような気がするけれど。
「ダム通りの家」
「最期の言葉」(ヘンリー・スレッサー 論創社 2007)
傲慢な映画プロデューサーが、自分が子どものころ暮らしていた、そしてよくいじめっ子にいじめられていたオンボロの家を、映画のセットとして再現する。オチがなくても充分ではないか。
「オルラ」(モーパッサン)
「フランス幻想小説傑作集」(白水社 1985)
精神病院に入れられた男が、透明で触れることができない謎の生き物があらわれたと主張する。幽霊でなく、謎の生き物であるところが新しい。オルラはどうも本に興味があるようだ。
「怪物」(ジェラール・クラン)
「フランス幻想小説傑作集」(白水社 1985)
別の星からきたモノが公園に着陸。公園のそばに住むマリオンは、夫の身を案じながら、ラジオが流すニュースに耳をすます。
「海児魂」(ジョゼフ・カミングス)
「密室殺人傑作選」(早川書房 1971)
沈んだヨットの確認のため海にもぐった潜水士が、胸に包丁を刺されて引き上げられる。容疑をかけられた探偵役のペッパー船長のキャラクターもよく、最後までサスペンスがあり読ませる。
「サマードレスの女たち」
「サマードレスの女たち」(アーウィン・ショー 小学館 2016)
町ゆく女性に目をやる夫が、妻から苦情を受ける。最後、夫は妻の魅力を再認識したのか。それとも性懲りもないだけか。あるいはその両方か。
「いやな話」
(同上)
女優と知りあいだったことから、夫が妻にからまれる。「サマードレスの女たち」の続編のようだ。
「ヴァルモンの功績」(ロバート・バー 東京創元社 2020)
ヴァルモン譚の一編。貧乏な青年貴族にほだされて、意地の悪い伯父さんが残したはずの遺産をさがすため、ヴァルモンはその屋敷の訪れる。
「不老長寿の霊薬」(バルザック)
「フランス幻想小説傑作集」(白水社 1985)
ドン・ジュアン伝説をもとにした短編。父から霊薬を手に入れたドン・ジュアンは自身のいまわのきわに霊薬をつかうよう息子にいい残す。最後は悪党のドン・ジュアンが聖遺物になってしまうという皮肉な結末。老人の妄執に迫力がある。訳注が助かる。
「時の網」(ミリアム・アレン・ディフォード)
「密室殺人傑作選」(早川書房 1971)
悪魔と契約した男の話。男はうまく悪魔をだし抜く。ずいぶん人間の法を尊重する悪魔だ。
「図書館の本を盗め」
「怪盗ニック対女怪盗サンドラ」(エドワード・D・ホック 東京創元社 2004)
怪盗ニック・シリーズの一編。図書館の本を盗む理由が面白い。古本屋でもいいような気がするけれど。
「ダム通りの家」
「最期の言葉」(ヘンリー・スレッサー 論創社 2007)
傲慢な映画プロデューサーが、自分が子どものころ暮らしていた、そしてよくいじめっ子にいじめられていたオンボロの家を、映画のセットとして再現する。オチがなくても充分ではないか。
「オルラ」(モーパッサン)
「フランス幻想小説傑作集」(白水社 1985)
精神病院に入れられた男が、透明で触れることができない謎の生き物があらわれたと主張する。幽霊でなく、謎の生き物であるところが新しい。オルラはどうも本に興味があるようだ。
「怪物」(ジェラール・クラン)
「フランス幻想小説傑作集」(白水社 1985)
別の星からきたモノが公園に着陸。公園のそばに住むマリオンは、夫の身を案じながら、ラジオが流すニュースに耳をすます。
「海児魂」(ジョゼフ・カミングス)
「密室殺人傑作選」(早川書房 1971)
沈んだヨットの確認のため海にもぐった潜水士が、胸に包丁を刺されて引き上げられる。容疑をかけられた探偵役のペッパー船長のキャラクターもよく、最後までサスペンスがあり読ませる。
「サマードレスの女たち」
「サマードレスの女たち」(アーウィン・ショー 小学館 2016)
町ゆく女性に目をやる夫が、妻から苦情を受ける。最後、夫は妻の魅力を再認識したのか。それとも性懲りもないだけか。あるいはその両方か。
「いやな話」
(同上)
女優と知りあいだったことから、夫が妻にからまれる。「サマードレスの女たち」の続編のようだ。
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短編を読む その12
「二十日鼠」
「サキ傑作集」(サキ 創土社 1969)
列車に乗った男が服のなかにハツカネズミがいるのに気がついたものの、合席のご婦人の前で服を脱ぐわけにもいかず苦境に立たされる。
「家庭」
(同上)
求婚をしにでかけた男が、予定の女性ではなく、時間つぶしに訪ねた帽子づくりをしている遠縁の女性に求婚してしまう。最後の一行がなければO・ヘンリ風の作品になっただろうに。
「ラプロシュカの霊魂」
(同上)
知人に金を貸した悲しみがもとで死んでしまった男。男の霊をなぐさめるため、知人は男の意にそった方法で借りた金を手放そうと苦心する。
「重要美術品」
(同上)
刺青が重要な美術品となってしまったため、男は行動の自由を失ってしまう。
「神護」
(同上)
大雪のため列車に閉じこめられた男。同乗の女性に食べ物を乞うが、ひどい高値で売りつけられる。ユーモア小説。
「幸福の黄色いハンカチ」
「ニューヨーク・スケッチブック」(ピート・ハミル 河出書房新社 2009)
出所した男は服役中、やり直す気があるなら黄色いハンカチを木につるしておいてほしいと妻に手紙をだしていた。はたしてハンカチはつるされているのか。
「島」(アステリア・マクラウド)
「記憶に残っていること」(新潮社 2008)
島で灯台守をしている女性の一代記。神話のような筆致が美しく、読み終わると長い時間がたったような感じがする。傑作。
「死者の悪口を言うな」(ジョン・コリア)
「ニューヨーカー短篇集 3」(早川書房 1976)
家の地下でセメント塗りをしていた医師のもとに、知人2人が顔をだす。医師の妻は不在。もしやと思った知人たちは、医師に口裏を合わせる約束をする。コリアはほのめかすのがじつに上手い。
「州民一同によって証言された不可解な事件」(サド)
「フランス幻想小説傑作集」(白水社 1976)
悪魔と契約した男の話。実話のような体裁が面白い。
「手掛かりは銀の匙」
「ヴァルモンの功績」(ロバート・バー 東京創元社 2020)
元フランス国家警察の刑事局長で、いまはロンドンで探偵をしているヴァルモン譚の、諧謔味あふれる一編。上流階級の窃盗事件を探偵ヴァルモンがあばく、というか、穏便に解決するため使い走りをさせられる。
「サキ傑作集」(サキ 創土社 1969)
列車に乗った男が服のなかにハツカネズミがいるのに気がついたものの、合席のご婦人の前で服を脱ぐわけにもいかず苦境に立たされる。
「家庭」
(同上)
求婚をしにでかけた男が、予定の女性ではなく、時間つぶしに訪ねた帽子づくりをしている遠縁の女性に求婚してしまう。最後の一行がなければO・ヘンリ風の作品になっただろうに。
「ラプロシュカの霊魂」
(同上)
知人に金を貸した悲しみがもとで死んでしまった男。男の霊をなぐさめるため、知人は男の意にそった方法で借りた金を手放そうと苦心する。
「重要美術品」
(同上)
刺青が重要な美術品となってしまったため、男は行動の自由を失ってしまう。
「神護」
(同上)
大雪のため列車に閉じこめられた男。同乗の女性に食べ物を乞うが、ひどい高値で売りつけられる。ユーモア小説。
「幸福の黄色いハンカチ」
「ニューヨーク・スケッチブック」(ピート・ハミル 河出書房新社 2009)
出所した男は服役中、やり直す気があるなら黄色いハンカチを木につるしておいてほしいと妻に手紙をだしていた。はたしてハンカチはつるされているのか。
「島」(アステリア・マクラウド)
「記憶に残っていること」(新潮社 2008)
島で灯台守をしている女性の一代記。神話のような筆致が美しく、読み終わると長い時間がたったような感じがする。傑作。
「死者の悪口を言うな」(ジョン・コリア)
「ニューヨーカー短篇集 3」(早川書房 1976)
家の地下でセメント塗りをしていた医師のもとに、知人2人が顔をだす。医師の妻は不在。もしやと思った知人たちは、医師に口裏を合わせる約束をする。コリアはほのめかすのがじつに上手い。
「州民一同によって証言された不可解な事件」(サド)
「フランス幻想小説傑作集」(白水社 1976)
悪魔と契約した男の話。実話のような体裁が面白い。
「手掛かりは銀の匙」
「ヴァルモンの功績」(ロバート・バー 東京創元社 2020)
元フランス国家警察の刑事局長で、いまはロンドンで探偵をしているヴァルモン譚の、諧謔味あふれる一編。上流階級の窃盗事件を探偵ヴァルモンがあばく、というか、穏便に解決するため使い走りをさせられる。
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短編を読む その11
「刺絡」(カルル・ハンス・ストロオブル)
「諸国物語」
ホラー小説。「諸国物語」にこんな作品が入っているとは知らなかった。「諸国物語」の、収録作品の幅の広さには恐れ入る。
「最後のユニコーン」(エドワード・D・ホック)
「ユーモア・スケッチ大全 4」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2022)
一角獣がこの世に残っていないのはなぜか。そのいきさつを書いたショートショート。
「九本の針」(ジェイムズ・サーバー)
「ユーモア・スケッチ大全 4」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2022)
友人宅に泊まったさい、薬戸棚から落ちてきた9本の針を拾うのに苦心惨憺する話。状況がどんどん悪化していくさまが痛ましくも可笑しい。
「住むならクジラの腹のなか」(リチャード・ヒューズ)
「ユーモア・スケッチ大全 4」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2022)
ナンセンスな童話といった趣きの一編。クジラの腹のなかに住むことになった女の子。ベッドがほしいという女の子のために、クジラはハロッズに買い物にでかけたりする。
「鈴と道化服亭」
「クィン氏の事件簿」(アガサ・クリスティ 東京創元社 1982)
嵐のなか、車のパンク修理のために「鈴と道化服亭」(ベル・アンド・モトリイ)で食事をするはめになったサターウェスト氏は、そこで旧知のハーリークィン氏に出会う。2人はこの村の屋敷に住む娘と結婚した男が、突如いなくなってしまったという、3か月前の事件について語りあい、その謎を解く。
「前科(まえ)」(マイルズ・トリップ)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
脱獄した男が、少女が連れ去られるところを目撃し、通報するかどうか悩む。人情味に富んだミステリ。
「塵に還る」(エリス・ピーターズ)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
お金持ちの伯母さんから送られてきた趣味の悪い机をめぐる騒動。文章が愉快。
「ころころ」
「カフカの父親」(トンマーゾ・ランドルフ 国書刊行会 1996)
犯人が、死体を自殺にみせかけるため、ピストルを右手にもたせるか左手にもたせるかで煩悶し、貴重な時間を失っていく。屁理屈悲喜劇小説というべきか。
「開いた窓」
「サキ傑作集」(サキ 創土社 1969)
神経衰弱の男が、姪のヴェラから開いた窓についての怖い話を聞かされる。サキの代表作というと、この作品になるだろうか。
「話上手」
(同上)
列車に乗りあわせた子どもをおとなしくさせるために、男は教育的でない話をして子どもたちの喝采を得る。「列車に乗りあわせた子ども」というのもアンソロジーのテーマになるかもしれない。
「諸国物語」
ホラー小説。「諸国物語」にこんな作品が入っているとは知らなかった。「諸国物語」の、収録作品の幅の広さには恐れ入る。
「最後のユニコーン」(エドワード・D・ホック)
「ユーモア・スケッチ大全 4」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2022)
一角獣がこの世に残っていないのはなぜか。そのいきさつを書いたショートショート。
「九本の針」(ジェイムズ・サーバー)
「ユーモア・スケッチ大全 4」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2022)
友人宅に泊まったさい、薬戸棚から落ちてきた9本の針を拾うのに苦心惨憺する話。状況がどんどん悪化していくさまが痛ましくも可笑しい。
「住むならクジラの腹のなか」(リチャード・ヒューズ)
「ユーモア・スケッチ大全 4」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2022)
ナンセンスな童話といった趣きの一編。クジラの腹のなかに住むことになった女の子。ベッドがほしいという女の子のために、クジラはハロッズに買い物にでかけたりする。
「鈴と道化服亭」
「クィン氏の事件簿」(アガサ・クリスティ 東京創元社 1982)
嵐のなか、車のパンク修理のために「鈴と道化服亭」(ベル・アンド・モトリイ)で食事をするはめになったサターウェスト氏は、そこで旧知のハーリークィン氏に出会う。2人はこの村の屋敷に住む娘と結婚した男が、突如いなくなってしまったという、3か月前の事件について語りあい、その謎を解く。
「前科(まえ)」(マイルズ・トリップ)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
脱獄した男が、少女が連れ去られるところを目撃し、通報するかどうか悩む。人情味に富んだミステリ。
「塵に還る」(エリス・ピーターズ)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
お金持ちの伯母さんから送られてきた趣味の悪い机をめぐる騒動。文章が愉快。
「ころころ」
「カフカの父親」(トンマーゾ・ランドルフ 国書刊行会 1996)
犯人が、死体を自殺にみせかけるため、ピストルを右手にもたせるか左手にもたせるかで煩悶し、貴重な時間を失っていく。屁理屈悲喜劇小説というべきか。
「開いた窓」
「サキ傑作集」(サキ 創土社 1969)
神経衰弱の男が、姪のヴェラから開いた窓についての怖い話を聞かされる。サキの代表作というと、この作品になるだろうか。
「話上手」
(同上)
列車に乗りあわせた子どもをおとなしくさせるために、男は教育的でない話をして子どもたちの喝采を得る。「列車に乗りあわせた子ども」というのもアンソロジーのテーマになるかもしれない。
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短編を読む その10
「みょうが斎の武術」
「侍はこわい」(司馬遼太郎 光文社 2005)
幕末の大阪。犬猫を師とする剣術の流派をたてた、けったいな浪人の恋と活躍をえがく。大阪弁の会話が愉しい。
「床兵衛稲荷」
(同上)
好色の道に生きる気儘人(きままじん)、猿霞堂庄兵衛(えんかどうしょうべえ)が天誅組とのいくさのどさくさにまぎれ、先年夫を亡くした大和高取藩の国家老の妻お婦以(ふい)と情を通じようと奮闘する。
「不信」
「予期せぬ結末 1」(ジョン・コリア 扶桑社 2013)
妻とその愛人による夫殺し。だが夫は生きており、思いがけない結末を迎える。語り口がユーモラス。
「豚吉とヒョロ子」
「夢野久作全集 1」(夢野久作 1992)
これは中編。むやみに太った豚吉と、たいそうヒョロ長いヒョロ子の夫婦が、並みの体形になろうと旅にでる。ナンセンスな珍道中。豚吉が意気地がないのが愉快。
「あのジョークを憶えているか、ハリー」(ジェイムズ・マクルーア)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
下町担当の警官が奇妙な殺人事件にでくわす。女性の部長刑事を筆頭に登場人がみな際立っており、シリーズ化できそうだ。
「パアテル・セルギウス」(レオ・トルストイ)
「諸国物語」
中編。武官のステパンはある令嬢と結婚の約束をしたが、その令嬢が陛下のお手付きだったことを知り僧院に入る。セルギウスという名前になり、山にこもり、世間からはなれて暮らすように。セルギウスには他から抜きんでたいという高慢さがあり、自身もそのこころに振りまわされる。映画「太陽は夜も輝く」の原作とのことだが、映画は未見。
「完全犯罪」
「予期せぬ結末 1」(ジョン・コリア 扶桑社 2013)
会員制のクラブで語られる、夫が妻に贈ったチョコレートによる完全犯罪の物語。ミステリのパロディ。絵本「こねこのチョコレート」を思い出した。
「階下(した)で待ってて!」
「アイリッシュ短編集 1」(ウィリアム・アイリッシュ 東京創元社 1986)
仕事帰りに、婚約者のアパートに荷物を届けにいった〈ぼく〉。階下で待っていたものの婚約者は降りてこない。部屋を訪ねてみると、そこは空き家になっていた。サスペンス小説。アイリッシュは冒頭の状況づくりが達者だ。
「どこかで聞いた名前」(マイクル・ギルバート)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
銀行強盗と警察の攻防をえがいた作品。前半は銀行の襲撃。後半はひと月ほど後、強盗たちが銀行の重役宅に押し入り、再度銀行からの強奪をこころみるという展開に。が、その計画は警察が察知していた。オチが秀逸。
「無月物語」
「無月物語」(久夫十蘭 社会思想社 1986)
院政期を舞台に、無法者の夫を、その妻と娘が殺すいきさつが書かれる。文体が緊密で、読むとくたびれる。スタンダールの「チェンチ一族」が種本だと解説で都築道夫が指摘している。
「侍はこわい」(司馬遼太郎 光文社 2005)
幕末の大阪。犬猫を師とする剣術の流派をたてた、けったいな浪人の恋と活躍をえがく。大阪弁の会話が愉しい。
「床兵衛稲荷」
(同上)
好色の道に生きる気儘人(きままじん)、猿霞堂庄兵衛(えんかどうしょうべえ)が天誅組とのいくさのどさくさにまぎれ、先年夫を亡くした大和高取藩の国家老の妻お婦以(ふい)と情を通じようと奮闘する。
「不信」
「予期せぬ結末 1」(ジョン・コリア 扶桑社 2013)
妻とその愛人による夫殺し。だが夫は生きており、思いがけない結末を迎える。語り口がユーモラス。
「豚吉とヒョロ子」
「夢野久作全集 1」(夢野久作 1992)
これは中編。むやみに太った豚吉と、たいそうヒョロ長いヒョロ子の夫婦が、並みの体形になろうと旅にでる。ナンセンスな珍道中。豚吉が意気地がないのが愉快。
「あのジョークを憶えているか、ハリー」(ジェイムズ・マクルーア)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
下町担当の警官が奇妙な殺人事件にでくわす。女性の部長刑事を筆頭に登場人がみな際立っており、シリーズ化できそうだ。
「パアテル・セルギウス」(レオ・トルストイ)
「諸国物語」
中編。武官のステパンはある令嬢と結婚の約束をしたが、その令嬢が陛下のお手付きだったことを知り僧院に入る。セルギウスという名前になり、山にこもり、世間からはなれて暮らすように。セルギウスには他から抜きんでたいという高慢さがあり、自身もそのこころに振りまわされる。映画「太陽は夜も輝く」の原作とのことだが、映画は未見。
「完全犯罪」
「予期せぬ結末 1」(ジョン・コリア 扶桑社 2013)
会員制のクラブで語られる、夫が妻に贈ったチョコレートによる完全犯罪の物語。ミステリのパロディ。絵本「こねこのチョコレート」を思い出した。
「階下(した)で待ってて!」
「アイリッシュ短編集 1」(ウィリアム・アイリッシュ 東京創元社 1986)
仕事帰りに、婚約者のアパートに荷物を届けにいった〈ぼく〉。階下で待っていたものの婚約者は降りてこない。部屋を訪ねてみると、そこは空き家になっていた。サスペンス小説。アイリッシュは冒頭の状況づくりが達者だ。
「どこかで聞いた名前」(マイクル・ギルバート)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
銀行強盗と警察の攻防をえがいた作品。前半は銀行の襲撃。後半はひと月ほど後、強盗たちが銀行の重役宅に押し入り、再度銀行からの強奪をこころみるという展開に。が、その計画は警察が察知していた。オチが秀逸。
「無月物語」
「無月物語」(久夫十蘭 社会思想社 1986)
院政期を舞台に、無法者の夫を、その妻と娘が殺すいきさつが書かれる。文体が緊密で、読むとくたびれる。スタンダールの「チェンチ一族」が種本だと解説で都築道夫が指摘している。
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短編を読む その9
「正義の代行者」(エリザベス・フェラーズ)
「パパとママに殺される」(早川書房 1983)
知人の夫と寝たことを写真に撮られゆすられていた女性。その夫が亡くなり、励ますふりをして写真を手に入れようと、知人宅を訪れ葬儀の手伝いをしていると、こんどは知人の死体に出くわす。エリザベス。フェラーズの作品をはじめて読んだけれど、とても面白い。
「勝負あり」(ジョン・ウェインライト)
「パパとママに殺される」(早川書房 1983)
不倫した妻を殺そうとする夫の話。鼻もちならない夫の1人称が効いている。
「狙撃」(アイザック・アシモフ)
「ユニオン・クラブ綺談」(東京創元社 1989)
グリズウェルド翁の自慢話にクラブのメンバーが煙に巻かれるというシリーズものの一編。ミステリというよりとんち話といった話が多いなか、この作品はサスペンスがある。
「目撃者」(エリス・ピーターズ)
「パパとママに殺される」(早川書房 1983)
修道士カドフェル・シリーズの一編。登場人物が皆ところを得ており無駄がない。
「小柄な靴屋たち」(アイザック・B・シンガー)
「ばかものギンペルと10の物語」(彩流社 2011)
民話の語り口で靴屋一家の絆をえがいた名編。素晴らしい。
「幻談」(幸田露伴)
「幻談・観画談」(岩波書店 1990)
釣りにでた旗本が海中の死人から竿を得る。枯れた味わいの水のような怪談。
「観画談」(幸田露伴)
「幻談・観画談」(岩波書店 1990)
気を病んだ学生が山中を旅し、大雨のなか寺の草庵で一幅の絵をみる。山の描写、寺の描写、雨の描写、一切合財名人芸。
「不可能犯罪」(E・D・ホック)
「こちら殺人課」(講談社 1981)
渋滞中の車から絞殺された死体が発見される。しかし車に乗っていたのはこの死体だけだった。レオポルド警部がこの謎を解く。
「三文作家」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 1」(東京創元社 1986)
カバー絵に合わせた小説をひと晩で書くために、ホテルに缶詰めになった三文小説家。コメディ調の作品。ラストがちょっと気の毒だ。
「蛙のプリンス」(ジョン・コリア)
「予期せぬ結末 1」(東京創元社 2013)
お金持ちで不格好な女性との結婚を考えた男が、おあいにくさまな結末を迎える。なかなか思いがけないおあいにくさまぶり。
「パパとママに殺される」(早川書房 1983)
知人の夫と寝たことを写真に撮られゆすられていた女性。その夫が亡くなり、励ますふりをして写真を手に入れようと、知人宅を訪れ葬儀の手伝いをしていると、こんどは知人の死体に出くわす。エリザベス。フェラーズの作品をはじめて読んだけれど、とても面白い。
「勝負あり」(ジョン・ウェインライト)
「パパとママに殺される」(早川書房 1983)
不倫した妻を殺そうとする夫の話。鼻もちならない夫の1人称が効いている。
「狙撃」(アイザック・アシモフ)
「ユニオン・クラブ綺談」(東京創元社 1989)
グリズウェルド翁の自慢話にクラブのメンバーが煙に巻かれるというシリーズものの一編。ミステリというよりとんち話といった話が多いなか、この作品はサスペンスがある。
「目撃者」(エリス・ピーターズ)
「パパとママに殺される」(早川書房 1983)
修道士カドフェル・シリーズの一編。登場人物が皆ところを得ており無駄がない。
「小柄な靴屋たち」(アイザック・B・シンガー)
「ばかものギンペルと10の物語」(彩流社 2011)
民話の語り口で靴屋一家の絆をえがいた名編。素晴らしい。
「幻談」(幸田露伴)
「幻談・観画談」(岩波書店 1990)
釣りにでた旗本が海中の死人から竿を得る。枯れた味わいの水のような怪談。
「観画談」(幸田露伴)
「幻談・観画談」(岩波書店 1990)
気を病んだ学生が山中を旅し、大雨のなか寺の草庵で一幅の絵をみる。山の描写、寺の描写、雨の描写、一切合財名人芸。
「不可能犯罪」(E・D・ホック)
「こちら殺人課」(講談社 1981)
渋滞中の車から絞殺された死体が発見される。しかし車に乗っていたのはこの死体だけだった。レオポルド警部がこの謎を解く。
「三文作家」(ウィリアム・アイリッシュ)
「アイリッシュ短編集 1」(東京創元社 1986)
カバー絵に合わせた小説をひと晩で書くために、ホテルに缶詰めになった三文小説家。コメディ調の作品。ラストがちょっと気の毒だ。
「蛙のプリンス」(ジョン・コリア)
「予期せぬ結末 1」(東京創元社 2013)
お金持ちで不格好な女性との結婚を考えた男が、おあいにくさまな結末を迎える。なかなか思いがけないおあいにくさまぶり。
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短編を読む その8
「小惑星の力学」
「切り裂きジャックはあなたの友」(ロバート・ブロック 早川書房 1979)
介護士の女性が介護していたのは、元数学の教師で、犯罪者で、探偵と対決したさい滝に落ちて車いす生活となり、以後は著名な科学者にアイデアをさずけたりして暮らしていた人物だった。タイトルはモリアーティ教授が書いたという論文から。
「ワシ像の謎」
「怪盗ニックを盗め」(エドワード・D・ホック 早川書房 2003)
2万ドルの報酬で価値のないものを盗む怪盗ニック・シリーズの一編。本作は宝探しまであり盛りだくさん。
「兎」(志賀直哉)
なにかの日本文学全集で読んだ。娘さんに乞われてウサギを飼う話。短編ではなく随筆かもしれない。ウサギの感じがよくでていて愉しい。ウサギは喜ぶとグウグウと鳴くのだそう。
「教会の猫」(エリス・ピーターズ)
「ある魔術師の物語 イギリス・ミステリ傑作選’76」(早川書房 1980)
強盗殺人の被害者である老婦人からごはんをもらっていた猫が、期せずして老婦人の仇討ちをするというクリスマスストーリー。
「列車に御用心」
「列車に御用心」(エドモンド・クリスピン 論創社 2013)
乗りあわせた列車から運転士が消失。たまたま強盗も乗りあわせていたため、駅は警官が包囲していからどこかにいくはずがない。この謎をフェン教授が解き明かす。
「ここではないどこかへ」
(同上)
四角関係にまつわる殺人をフェン教授が解き明かす。皮肉のきいた結末がついており、それがタイトルにも反映している。
「本の話」(由紀しげ子)
これもなにかの日本文学全集で読んだ。姉の闘病資金を得るため、その夫である義兄があつめた本の買い手をみつけようと〈私〉は奔走する。
「秘めごと」(由紀しげ子)
出生の秘密をもつ友人との、女学生のころから戦後友人が亡くなるまでをえがいた作品。友人はなぜか薄幸の運命をたどる。
「ジェイスン・Dの秘密」(デスモンド・バグリイ)
「ある魔術師の物語 イギリス・ミステリ傑作選’76」(早川書房 1980)
金銭トラブルから甥が伯父を殺したとおぼしき事件が発生。パーカー部長刑事は甥の犯行を確信しているのだが…。こんなに警官がコテンパンにされる作品もめずらしいのではないか。
「女秀才、花を移して木を接(つ)ぐこと」
「今古奇観 5」(平凡社 1975)
男装して塾に通った、蜚蛾(ひが)という少女。受験に合格して秀才になった彼女は、2人の学友のうち、ひとりの嫁になろうと心に決めていた。ところが無実の父を救うため上京したさい、美しいお嬢さんに見染められてしまい、話はいよいよもつれることに。
「切り裂きジャックはあなたの友」(ロバート・ブロック 早川書房 1979)
介護士の女性が介護していたのは、元数学の教師で、犯罪者で、探偵と対決したさい滝に落ちて車いす生活となり、以後は著名な科学者にアイデアをさずけたりして暮らしていた人物だった。タイトルはモリアーティ教授が書いたという論文から。
「ワシ像の謎」
「怪盗ニックを盗め」(エドワード・D・ホック 早川書房 2003)
2万ドルの報酬で価値のないものを盗む怪盗ニック・シリーズの一編。本作は宝探しまであり盛りだくさん。
「兎」(志賀直哉)
なにかの日本文学全集で読んだ。娘さんに乞われてウサギを飼う話。短編ではなく随筆かもしれない。ウサギの感じがよくでていて愉しい。ウサギは喜ぶとグウグウと鳴くのだそう。
「教会の猫」(エリス・ピーターズ)
「ある魔術師の物語 イギリス・ミステリ傑作選’76」(早川書房 1980)
強盗殺人の被害者である老婦人からごはんをもらっていた猫が、期せずして老婦人の仇討ちをするというクリスマスストーリー。
「列車に御用心」
「列車に御用心」(エドモンド・クリスピン 論創社 2013)
乗りあわせた列車から運転士が消失。たまたま強盗も乗りあわせていたため、駅は警官が包囲していからどこかにいくはずがない。この謎をフェン教授が解き明かす。
「ここではないどこかへ」
(同上)
四角関係にまつわる殺人をフェン教授が解き明かす。皮肉のきいた結末がついており、それがタイトルにも反映している。
「本の話」(由紀しげ子)
これもなにかの日本文学全集で読んだ。姉の闘病資金を得るため、その夫である義兄があつめた本の買い手をみつけようと〈私〉は奔走する。
「秘めごと」(由紀しげ子)
出生の秘密をもつ友人との、女学生のころから戦後友人が亡くなるまでをえがいた作品。友人はなぜか薄幸の運命をたどる。
「ジェイスン・Dの秘密」(デスモンド・バグリイ)
「ある魔術師の物語 イギリス・ミステリ傑作選’76」(早川書房 1980)
金銭トラブルから甥が伯父を殺したとおぼしき事件が発生。パーカー部長刑事は甥の犯行を確信しているのだが…。こんなに警官がコテンパンにされる作品もめずらしいのではないか。
「女秀才、花を移して木を接(つ)ぐこと」
「今古奇観 5」(平凡社 1975)
男装して塾に通った、蜚蛾(ひが)という少女。受験に合格して秀才になった彼女は、2人の学友のうち、ひとりの嫁になろうと心に決めていた。ところが無実の父を救うため上京したさい、美しいお嬢さんに見染められてしまい、話はいよいよもつれることに。
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短編を読む その7
「生命保険と火災保険」
「不吉なことは何も」(フレドリック・ブラウン 東京創元社 2021)
誘拐実行中の現場にうっかり勧誘に入ってしまった保険外交員の大冒険。誘拐犯を相手に接客口調をくずさない主人公が愉快。
「よい勲爵士によい夜を」
(同上)
脚本家をゆすって暮らしていた三文役者が起死回生をもとめて役を得ようとする。最後が泣かせる。
「踊るサンドイッチ」
(同上)
これは中編。殺人の濡れ衣を着せられた男ははたして助かるのか。倒叙形式のサスペンスが他視点で書かれ、無類に面白い。フレドリック・ブラウンは中編がもっとも冴えるようだ。
「タレント」
「切り裂きジャックはあなたの友」(ロバート・ブロック 早川書房 1979)
物真似の才能に富んだ不気味な少年についての怪談。最後、少年はついに自分がなりたいものをみつける。
「若き日の悲しみ」(トーマス・マン)
「世界100物語 5」(サマセット・モーム/編 河出書房新社 1997)
家族パーティで出会った若者に、家の幼い娘が恋焦がれてしまい、父親は困惑する。父親の心理や、パーティの様子が微細にえがかれる。
「最後の瞬間」(レーオンハルト・プランク)
(同上)
暴走する列車とその列車に乗りあわせた乗客たちをえがいた作品。すさまじい迫力。このアンソロジーは粒ぞろいだ。
「ワトスン博士の友人」(E・C・ベントリー)
「シャーロック・ホームズの栄冠」(北原尚彦/編訳 論創社 2007)
贋作ホームズもの。密室なのに荒らされてしまった食料貯蔵庫の謎をワトスン博士の友人が解く。ホームズのことをワトスン博士の友人としか書かないところがミソ。
「鈍行列車」(フランク・サラヴァン)
「ユーモア・スケッチ大全2」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2022)
列車に乗った腕白小僧とその祖母の、タマゴをめぐる攻防。乗りあわせた乗客たちがその攻防のゆくえを面白おかしく見守る。
「Qーある怪奇心霊実話」(スティーブン・リーコック)
(同上)
お金を心霊世界に送るという実験に参加した〈私〉。だまされていることに気づかない〈私〉と、怪奇小説風のくだくだしい文章がじわじわと笑いを誘う。
「サセックスの白昼夢」(ベイジル・ラスボーン)
「シャーロック・ホームズの栄冠」(北原尚彦/編訳 論創社 2007)
ホームズ役者として名高いベイジル・ラスボーンによるホームズ物。サセックスを訪れた〈わたし〉は、隠遁生活を送る人物と会話をかわす。事件を解決したりはせず、しみじみとした味わい。
「不吉なことは何も」(フレドリック・ブラウン 東京創元社 2021)
誘拐実行中の現場にうっかり勧誘に入ってしまった保険外交員の大冒険。誘拐犯を相手に接客口調をくずさない主人公が愉快。
「よい勲爵士によい夜を」
(同上)
脚本家をゆすって暮らしていた三文役者が起死回生をもとめて役を得ようとする。最後が泣かせる。
「踊るサンドイッチ」
(同上)
これは中編。殺人の濡れ衣を着せられた男ははたして助かるのか。倒叙形式のサスペンスが他視点で書かれ、無類に面白い。フレドリック・ブラウンは中編がもっとも冴えるようだ。
「タレント」
「切り裂きジャックはあなたの友」(ロバート・ブロック 早川書房 1979)
物真似の才能に富んだ不気味な少年についての怪談。最後、少年はついに自分がなりたいものをみつける。
「若き日の悲しみ」(トーマス・マン)
「世界100物語 5」(サマセット・モーム/編 河出書房新社 1997)
家族パーティで出会った若者に、家の幼い娘が恋焦がれてしまい、父親は困惑する。父親の心理や、パーティの様子が微細にえがかれる。
「最後の瞬間」(レーオンハルト・プランク)
(同上)
暴走する列車とその列車に乗りあわせた乗客たちをえがいた作品。すさまじい迫力。このアンソロジーは粒ぞろいだ。
「ワトスン博士の友人」(E・C・ベントリー)
「シャーロック・ホームズの栄冠」(北原尚彦/編訳 論創社 2007)
贋作ホームズもの。密室なのに荒らされてしまった食料貯蔵庫の謎をワトスン博士の友人が解く。ホームズのことをワトスン博士の友人としか書かないところがミソ。
「鈍行列車」(フランク・サラヴァン)
「ユーモア・スケッチ大全2」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2022)
列車に乗った腕白小僧とその祖母の、タマゴをめぐる攻防。乗りあわせた乗客たちがその攻防のゆくえを面白おかしく見守る。
「Qーある怪奇心霊実話」(スティーブン・リーコック)
(同上)
お金を心霊世界に送るという実験に参加した〈私〉。だまされていることに気づかない〈私〉と、怪奇小説風のくだくだしい文章がじわじわと笑いを誘う。
「サセックスの白昼夢」(ベイジル・ラスボーン)
「シャーロック・ホームズの栄冠」(北原尚彦/編訳 論創社 2007)
ホームズ役者として名高いベイジル・ラスボーンによるホームズ物。サセックスを訪れた〈わたし〉は、隠遁生活を送る人物と会話をかわす。事件を解決したりはせず、しみじみとした味わい。
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短編を読む その6
「ナツメグの味」(ジョン・コリア)
「美酒ミステリー傑作選」(小鷹信光/編 河出書房新社 1990)
地元のカクテルを愛する男の物語。《彼が飲物を二杯つくり、つぎにわたしが二杯つくりました。》の一文が怖い。
「医者の指示」(ジョン・F・スーター)
「ミニ・ミステリ100 下」(早川書房 1983)
赤ん坊を流産してしまった女性と、医者と話をする夫。うすら寒くなる結末。
「人生の月曜日」(E・B・ホワイト)
「ユーモア・スケッチ大全1」(国書刊行会 2021)
毎週月曜日に歯医者でくり返される、判で押したようななめらかなやりとりに、〈わたし〉は人生の意義をみいだす。透明な水のようなユーモア。
「名人気質」(ロン・スティーヴンス)
「世界ショートショート傑作選1」(各務三郎/編 講談社 1979)
嫉妬深いナイフ投げ師の話。志賀直哉の「范の犯罪」を思い出す。
「夢の家」(アンドレ・モロア)
「世界ショートショート傑作選1」(各務三郎/編 講談社 1979)
尻尾をくわえた蛇のような幽霊譚。
「昨日は美しかった」(ロアルド・ダール)
「世界ショートショート傑作選1」(各務三郎/編 講談社 1979)
ギリシアで撃墜されたイギリス人パイロットが、帰還するため現地人に話しかける。戦争の痛ましさを書いた小品。
「千慮の一矢」(マリア・デ・サヤス)
「笑いの騎士団」(東谷穎人/編 白水社 1996)
女性に裏切られてばかりいる男の艶笑譚。
「探偵をやってみたら」(マイケル・Z・リューイン)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
税金対策のために探偵をはじめた若者。依頼人なんてこなくていいと思っていたのにきてしまい、探偵をするはめに。シリーズ化できそうだ。
「鋏」(パルド・パサン)
「世界短編名作選スペイン編」(新日本出版社 1978)
夫婦がたがいを思って嘘をつく。O・ヘンリの作品のよう。
「とうもろこし倉の幽霊」
「とうもろこし倉の幽霊」(R・A・ラファティ/著 井上央/編・訳 早川書房 2022)
夏の夜2人の少年が、幽霊がでると評判のとうもろこし倉に確かめにいく。幽霊についての話が、登場人物ごとに食いちがっていてにぎやか。ラファティはときどき読みたくなる。読んだことがあるひとには会ったことがないけれど、ときどき新刊がでるのだから、だれかが読んでいるのだろう。
「美酒ミステリー傑作選」(小鷹信光/編 河出書房新社 1990)
地元のカクテルを愛する男の物語。《彼が飲物を二杯つくり、つぎにわたしが二杯つくりました。》の一文が怖い。
「医者の指示」(ジョン・F・スーター)
「ミニ・ミステリ100 下」(早川書房 1983)
赤ん坊を流産してしまった女性と、医者と話をする夫。うすら寒くなる結末。
「人生の月曜日」(E・B・ホワイト)
「ユーモア・スケッチ大全1」(国書刊行会 2021)
毎週月曜日に歯医者でくり返される、判で押したようななめらかなやりとりに、〈わたし〉は人生の意義をみいだす。透明な水のようなユーモア。
「名人気質」(ロン・スティーヴンス)
「世界ショートショート傑作選1」(各務三郎/編 講談社 1979)
嫉妬深いナイフ投げ師の話。志賀直哉の「范の犯罪」を思い出す。
「夢の家」(アンドレ・モロア)
「世界ショートショート傑作選1」(各務三郎/編 講談社 1979)
尻尾をくわえた蛇のような幽霊譚。
「昨日は美しかった」(ロアルド・ダール)
「世界ショートショート傑作選1」(各務三郎/編 講談社 1979)
ギリシアで撃墜されたイギリス人パイロットが、帰還するため現地人に話しかける。戦争の痛ましさを書いた小品。
「千慮の一矢」(マリア・デ・サヤス)
「笑いの騎士団」(東谷穎人/編 白水社 1996)
女性に裏切られてばかりいる男の艶笑譚。
「探偵をやってみたら」(マイケル・Z・リューイン)
「探偵をやってみたら」(早川書房 1986)
税金対策のために探偵をはじめた若者。依頼人なんてこなくていいと思っていたのにきてしまい、探偵をするはめに。シリーズ化できそうだ。
「鋏」(パルド・パサン)
「世界短編名作選スペイン編」(新日本出版社 1978)
夫婦がたがいを思って嘘をつく。O・ヘンリの作品のよう。
「とうもろこし倉の幽霊」
「とうもろこし倉の幽霊」(R・A・ラファティ/著 井上央/編・訳 早川書房 2022)
夏の夜2人の少年が、幽霊がでると評判のとうもろこし倉に確かめにいく。幽霊についての話が、登場人物ごとに食いちがっていてにぎやか。ラファティはときどき読みたくなる。読んだことがあるひとには会ったことがないけれど、ときどき新刊がでるのだから、だれかが読んでいるのだろう。
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短編を読む その5
「橋の上の天使」(ジョン・チーヴァー)
「橋の上の天使」(河出書房新社 1992)
橋を渡るとき不安に襲われるようになった〈私〉に恩寵というべき出来事が起こる。忘れがたい作品。
「ある魔術師の物語」(デズモンド・コーリイ)
「ある魔術師の物語」(早川書房 1980)
見習い魔術師が最終試験としてある殺人事件を解明するという中編。主人公は自分がみた事実にしがみつき意見を変えようとしない。自分の意見にしがみつくうっかり者が物語作者という人種なのだと、作者はいいたげだ。
「さらば愛しきオードブルよ」(S・J・ペレルマン)
「ユーモア・スケッチ大全1」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2021)
ハードボイルド小説のスタイルを用いたナンセンス小説。ハードボイルドとナンセンスは相性がいい。
「また買いにくる客」(ジョン・コリア)
「ジョン・コリア奇談集」(サンリオ 1983)
ほれ薬を買いにきた若者と薬屋の店主の、会話による作品。読者にその後を悟らせる手並みが鮮やか。
「大晦日の夜の冒険」(ホフマン)
「砂男/クレスペル顧問官」(光文社 2014)
〈私〉が恋の深みにはまったあげく、鏡像を失った男と出会う。特別出演という感じで、影をなくした男も登場。ホフマンはシャミッソーの「影をなくした男」から、鏡像を失った男のアイデアを得たよう。
「侘助」(井伏鱒二)
どこかの日本文学全集で読んだ。生類憐みの令で処罰を受け、富士川の中州に島流しにされた侘助の、その流刑地での生活をえがいた長めの短編。大変な完成度。
「スウェーデン人探検家ポルティファックス」(エンリケ・ハルディエル・ポンセラ)
「笑いの騎士団」(白水社 1996)
中央オーストラリアを探検したものの原住民に会わなかった探検家は、探検記を創作し評判を得る。再び探検にでかけるが、やはり原住民にはで会えず、ついに自分が原住民になりきって暮らすことに。
「ファン・マンソ」(ミゲル・デ・ウナムノ)
「笑いの騎士団」(白水社 1996)
ひとに先をゆずってしまうため、いつまでたっても天国の門に入れないファン・マンソ。寓話的ユーモア小説。
「復讐」(レニエ)
鴎外の「諸国物語」の一編。たしか鴎外選集の、「諸国物語」の上巻だけが手元にあり、それで読んだ(探せばたぶん下巻もあるはず)。本作は女性が男性に手のこんだ復讐をする。
「聖ニコラウスの夜」(カミイユ・ルモンニエエ)
鴎外の「諸国物語」の一編。ルモンニエエはベルギーのひとだそう。内容は実に感動的。クリスマス小説の一種といえるだろうか。ひょっとした聖ニコラウスの日小説というジャンルがあるのかもしれない。他にもハヌカー小説とか、ラマダーン小説とかがあるのかもしれない。上記のホフマンの作品は、さしずめ大晦日小説といったところか。
「橋の上の天使」(河出書房新社 1992)
橋を渡るとき不安に襲われるようになった〈私〉に恩寵というべき出来事が起こる。忘れがたい作品。
「ある魔術師の物語」(デズモンド・コーリイ)
「ある魔術師の物語」(早川書房 1980)
見習い魔術師が最終試験としてある殺人事件を解明するという中編。主人公は自分がみた事実にしがみつき意見を変えようとしない。自分の意見にしがみつくうっかり者が物語作者という人種なのだと、作者はいいたげだ。
「さらば愛しきオードブルよ」(S・J・ペレルマン)
「ユーモア・スケッチ大全1」(浅倉久志/編・訳 国書刊行会 2021)
ハードボイルド小説のスタイルを用いたナンセンス小説。ハードボイルドとナンセンスは相性がいい。
「また買いにくる客」(ジョン・コリア)
「ジョン・コリア奇談集」(サンリオ 1983)
ほれ薬を買いにきた若者と薬屋の店主の、会話による作品。読者にその後を悟らせる手並みが鮮やか。
「大晦日の夜の冒険」(ホフマン)
「砂男/クレスペル顧問官」(光文社 2014)
〈私〉が恋の深みにはまったあげく、鏡像を失った男と出会う。特別出演という感じで、影をなくした男も登場。ホフマンはシャミッソーの「影をなくした男」から、鏡像を失った男のアイデアを得たよう。
「侘助」(井伏鱒二)
どこかの日本文学全集で読んだ。生類憐みの令で処罰を受け、富士川の中州に島流しにされた侘助の、その流刑地での生活をえがいた長めの短編。大変な完成度。
「スウェーデン人探検家ポルティファックス」(エンリケ・ハルディエル・ポンセラ)
「笑いの騎士団」(白水社 1996)
中央オーストラリアを探検したものの原住民に会わなかった探検家は、探検記を創作し評判を得る。再び探検にでかけるが、やはり原住民にはで会えず、ついに自分が原住民になりきって暮らすことに。
「ファン・マンソ」(ミゲル・デ・ウナムノ)
「笑いの騎士団」(白水社 1996)
ひとに先をゆずってしまうため、いつまでたっても天国の門に入れないファン・マンソ。寓話的ユーモア小説。
「復讐」(レニエ)
鴎外の「諸国物語」の一編。たしか鴎外選集の、「諸国物語」の上巻だけが手元にあり、それで読んだ(探せばたぶん下巻もあるはず)。本作は女性が男性に手のこんだ復讐をする。
「聖ニコラウスの夜」(カミイユ・ルモンニエエ)
鴎外の「諸国物語」の一編。ルモンニエエはベルギーのひとだそう。内容は実に感動的。クリスマス小説の一種といえるだろうか。ひょっとした聖ニコラウスの日小説というジャンルがあるのかもしれない。他にもハヌカー小説とか、ラマダーン小説とかがあるのかもしれない。上記のホフマンの作品は、さしずめ大晦日小説といったところか。
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