短編を読む その24

新年明けましておめでとうございます。
短篇のメモは1年で終わりにするつもりでしたが、まだストックが残っているので、いましばらく続けていきます。

「ハンプルビー」(ギッシング)
「ギッシング短篇集」(岩波書店 1997)

溺れている金持ちの息子を助けた、大人しい少年ハンプルビーは、その父親の斡旋と、浅はかな両親の要望のため、本人の希望とは別に金持ちの会社の事務員になるはめに。その後もハンプルビーは、この金持ち親子に振りまわされる。

「キルジャーリ」(プーシキン)
「スペードの女王」(新潮社 1981)

ブルガリア人で、モルダヴィアを荒らしまわった盗賊キルジャーリの物語。ギリシア神聖隊に入り、トルコ軍に掃討され、ロシアに逃げこんだものの官憲の手でトルコに引き渡される。死刑判決を受けるが、見張りをだまし、まんまと逃げおおせる。

「魔法の書」(エンリケ・アンデルソン=インベル)
「魔法の書」(国書刊行会 1994)

古本屋でみつけた、さまよえるオランダ人が書いた本。一見ただのアルファベットの羅列なのだが、目をこらすと文章になる。しかし一度目をはなすと、アルファベットに羅列にもどってしまうため、また最初から読まなくてはならなくなる。かくして主人公の古代史教師は、ひたすら本を読み続ける。まるでセーブポイントのないゲームのよう。

「将軍、見事な死体となる」(エンリケ・アンデルソン=インベル)
同上

推理小説を読みすぎて完全犯罪を志すようになった外科医。まず殺す相手の名前を決定するのが肝要と思うのだが、その名前をもつ相手がみつからない。少しほっとしたものの、その名前をもつ指導者があらわれる。外科医は覚悟を決める。

「屋根裏の犯罪」(エンリケ・アンデルソン=インベル)
同上

刑事が屋根裏部屋につくられた暗室に入ると、そこには背中にナイフを突き立てられた男が倒れていて――と、典型的なミステリの場面がファンタージーに一変する。

「解放者パトリス・オハラ」(エンリケ・アンデルソン=インベル)
同上

サン・マルティンの軍隊に参加したアイルランド人のパトリス・オハラは、インディオとともに、〈眠りの村〉の人々を解放しに向かう。そのアラウコ族の神々は、村人たちの夢を食って生きているのだという。

「友達同士で」(フィリップ)
「朝のコント」(岩波書店 1979)

友達同士なのに関係をもってしまった男女。女の夫もまた友達であり、2人は夫のもとへ謝りににいく。

「めぐりあい」(フィリップ)
同上

8年前に離婚した2人。たまたま再会し、コーヒー店に入り、近況を語りあう。なんとも味わい深い。

「マッチ」(フィリップ)
同上

チューリッヒ見物にきた男が、ベッドで煙草を吸っていると、火をつけたマッチをどうしただろうと不安に思う。ベッド脇の絨毯をみると、ベッドの下から手がでて、マッチの火を消すのがみえる。ベッドの下にだれかいるのだ。

「最高傑作」(ポール・ギャリコ)
「ディナーで殺人を 上」(東京創元社 1998)

天候不順で客足がとだえ、借金に苦しむレストランの店主。賞金付きの手配書をみていたところ、当の手配者が客としてあらわれる。警察がくるまで引きとめておこうと、店主は腕によりをかけた料理をふるまう。


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