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煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

お腹の中はブラックボックス

2011-02-06 14:50:32 | 健康・病気

『人の腹の中は読めない』
まさにその通り、
人の腹の中のことはわからない。
バリバリの救急医にとっても、
最も厄介なのは『腹痛』のようである。

2月2日付 TIME.com

Why Belly Pain Is Such a Headache for ER Doctors 腹痛がそれほどまでに ER の医師らの頭痛の種となっているのはなぜか?
By DR. ZACHARY F. MEISEL

Bellypain

 コンピューターの画面には個々の患者名の隣に表示され、救急部の記録用ボードにも繰り返し書かれている文字: “Abd Pn” ―腹痛の略号である。繰り返し現れること12回。
 私のまわりのERのスタッフたちはそのボードをチェックし、うめき声を上げた。救急部門で働く者なら誰もがその理由を知っている。腹痛患者を診ることはERの医師にとって貧乏くじを引いたようなものだからである。たいていの場合、その診療には体液管理、内臓の精査、さらにはめまいがするほど多くの診断的検査や治療の中からの選択への取り組みを要するからである。しかも診断は容易ではない。
 その日の朝、腹痛で来た十何人かの患者が全員同じフィラデルフィア・チーズステーキの店で病気になったのであれば話は別なのだろうが実際にはそんなことはない。個々の症例は完全に異なっていることがわかっている。年老いた患者もいれば、若い患者もいる。その痛みの原因が生命を脅かすものである人も少数ながら存在する一方、単にお腹のガスに過ぎないものもいる。結局その12名の内訳は、手術室行きが1名、一泊入院が3名、帰宅組が8名だった。彼らの4分の1がCTスキャンを受けた。そして、恐らく最も驚くべきことに、その日の腹痛患者のほぼ半数―その中には私たちが100万ドルの精密検査(血液検査と多くの画像診断検査)と呼んでいるものを受けた人たちが含まれる―が確定診断のつかないままERを後にしているのだ。
 米国疾病対策予防センター(Center for Disease Control and Prevention, CDC)によると、腹痛は米国民がERを受診する最も多い理由となっており、年間700万件に上っているという。これは場所を問わず、不安をもたらす症状となっている。そして、腹痛治療の困難さは、全般的に医療制度が現在直面している大きな課題や問題点をしっかり浮き彫りにする。それは、診断のための検査のリスクと有益性の問題、医療費の問題、診療の多様性の問題、医療過誤の問題、そして患者の期待度の問題などである。
 それではなぜ腹痛はそれほど医療にとって厄介なことなのだろうか?第一はそれがちょっとしたブラックボックスとなっているからである。それを起こす疾患が(大動脈瘤破裂や子宮外妊娠などの)即生命を脅かすものである可能性がある一方で、(腸けいれんや卵巣のう腫の破裂といった)痛みは伴うがそれほど深刻でなかったり、その中間であったりする。CDC によると、腹痛でERを訪れる全受診者の約17%が、“ serious diagnosis(重篤な診断)” と CDC が分類する疾患に起因していると見られている。
 2番目に、そのブラックボックスを覗くのに用いるツールが完全とは程遠いものであるということがある。2次元X線検査は腹痛の患者に対して最も頻繁にオーダーされるER検査の一つであるが、ここではCTスキャンを取り上げてみよう。賛成意見:CTスキャンは容易に施行でき、腹部や骨盤内のすべての臓器を調べることができ、ただちに生命を脅かす腹痛の原因の多くを除外するのにきわめて有用である。また CTスキャンは試験開腹の必要性も減ずることができる。反対意見:CTスキャンはER患者の腹痛の真の原因を診断できないことがしばしばある。さらに悪いことに、CTスキャンは患者の腹部や骨盤に相当量の放射線がかかる(胸部レントゲンの100から250回分に相当)。生涯で見ると、2回から3回の腹部CTスキャンを受けた患者は多くの広島原爆の生存者以上の放射線に曝されることになる。
 3番目として、腹痛に対して誰がどのような検査をうけるべきかを厳密に決めるすぐれたエビデンスを持ち合わせていないという問題がある。そういったエビデンスに基づくことで、例えば、頸椎レントゲンを受ける必要のない低リスクの頸部外傷の患者をどのように判別すべきかを医師らは知っている。また、どのような頭部外傷患者に脳の画像検査が必要で、どのような人が必要でないかもわかっている。しかし腹痛患者に対するそのような臨床的な予測尺度は、現在も、また近い将来も存在しない。なぜなら、この病態はあまりにもよく起こり、またその症状がかなり多様だからである。
 4番目として、患者の間でも医師の間でも、腹痛の診断や検査に関して大きな誤解や多様な期待感が存在していることが挙げられる。腹部症状で ER を受診した患者を対象にした最近の調査で、CT スキャンや血液検査などの広範囲に及ぶ検査を受けた人たちは、受けていない人たちに比べ、診療に安心を感じた傾向が強かったことが明らかになっている。さらに気がかりなことには、同対象者の70%以上がCTスキャンによる累積放射線被曝量の危険性を大いに過小評価しており、彼らの多くは以前にこの検査を受けたかどうかについて正確に覚えていなかった。
 また患者は医師からの診断を期待しているものの、腹痛に関しては必ずしもそれが得られていない。ER の医師は痛みをコントロールすることができ、また、緊急の生命にかかわる疾患ではないという安心をもたらしてくれるかもしれないが、どこが悪いのかを伝えられることがないため、ストレスを感じ続けるかも知れない。
 しかし、ER の医師の立場からすれば、初診時に正しい診断を下さなければならないというかなりのプレッシャーがある。というのも腹痛の誤診は救急医に対する医療過誤訴訟の主要な原因となっているからである。そして、事実は厳しい状況下にある。調査の結果、50の急性腹痛疾患のうちER受診時に“診断がつかなくても容認できる”として救急医が同意したのはわずかに12であった。
 それではERにおいて腹痛にまつわる多くの問題点について考えられる解決策はあるのだろうか? 政策立案者らは放射線を用いる検査のやり過ぎをなくし、診療を標準化して、米国で高騰する医療費を抑制するために懸命な努力を行っている。しかし、それによってERが腹痛の人であふれかえるのを止めることにはならないし、長期的リスクの脅威があるからといって医師が検査をするのを止めさせることにもつながらないだろう。多くの医師や患者にとって、虫垂炎が見逃される可能性があるという差し迫った懸念の方が、癌や医療費といったずっと先の心配を上回ってしまうのである。
 恐らく ER であまりに多くの腹部CTスキャンがオーダーされていることは医師らも承知しているが、ますますとどまるところを知らないのが現状だ。過去10年間で、CTスキャンの使用頻度は2倍以上となっており、ERのすべての腹痛の患者のほぼ25%が受けているが、それによって疾患の発見率が向上しているわけではない。虫垂炎、憩室炎あるいは胆嚢疾患などの腹部病変の診断数は一定である。またこの CT 利用が全体的に入院率を下げているということすら明らかではない。
 それでは私たちはこの腹痛に関する無駄とも思える労力からどのように抜け出そうとしているのだろうか?大雑把ながら、繊細でもある解決法が提起されてきた。これには、過剰な検査をオーダーする医師に対するペナルティや、診断的検査のリスクと有益性を評価し、またそれを簡便に患者に説明できるコンピューター・プログラムなどがある。
(以下略)
Meisel 医師は Robert Wood Johnson Foundation の臨床研究者であり、University of Pennsylvania の救急医でもある。

通常の診察をした上で、これは CT スキャンで
絶対何かありそうだと判断した症例に限って
CT スキャンをオーダー、
その結果全例に異常を発見…
理想は確かにそうだろう。
しかし、そんな神業は無理である。
逆に重大な疾患を見落としてしまう可能性も高くなりそうだ。

これはインフルエンザじゃないと思ってても
簡易キットで陽性、ってことは
しょっちゅうなのだから…
(あんたの見立てが悪いのよ…そ、その通りっ!)。

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