MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

『治療島』

2007-10-12 23:38:22 | 本と雑誌

何が真実なのか、

何を信じればよいのかがわからなくなった時、

人は、不安の嵐に巻き込まれる…

『エリカ様の誤算』エントリーでも書いた様に、

どれが真の姿かが見えなくなった時、

我々は疑心暗鬼に陥るのである。

そして、焦りを感じ、懸命に出口を求めようとする(←大げさ)。

そんな世界に放り込まれるような

不思議な体験をさせてくれる小説がある。

ドイツ人、セバスチャン・フィツェックの処女作、

『治療島』(柏書房)がそれだ。

著名な精神科医ヴィクトルの愛娘、ヨゼフィーネが

目の前から忽然と姿を消す。

ヴィクトルは懸命に捜索するが、

その行方は杳として知れなかった。

4年後、未だに娘を諦めることができず、

立ち直れないままでいたヴィクトルは

妻と別居し、小さな島の別荘に引きこもっていた。

そんな彼のもとへ、自らを統合失調症だと言う

アンナと名乗る女性が訪れ、治療を依頼する。

彼女が語る妄想に登場する少女は

娘ヨゼフィーネに酷似していた。

ヨゼフィーネの行方を探る手がかりを渇望するヴィクトルは、

彼女の治療を引き受けるのだが、

妄想の展開から、思わぬ事実が明らかになってゆく…

荒唐無稽なアンナの告白の真偽も定かでないが、

ヴィクトル自身も精神を病んでいると推察され、

彼を中心に語られる、

嵐吹き荒れる『治療島』でのできごとも

どこまでが真実なのか

読者は次第に確信が持てなくなってくる……

昨年夏、ドイツで刊行後、またたく間に

大ベストセラーとなった。

ドイツでの映画化も決定している。

…今、どの政治家の言葉を信じればよいか、

どのマスコミの報道が真実なのか、

どの上司、どの同僚、どの後輩が

信ずるに値する人間か、

際限のない疑心暗鬼の渦に巻き込まれているあなた、

バーチャルな不確かな世界を

リラックスしながら楽しんでみてはいかが?

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