MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

『野球の国のアリス』

2008-10-03 20:49:10 | 本と雑誌

われらが広島カープもついに力尽きました。

残念ながらCS進出は果たせそうにありません。

ラスト・イヤーの広島市民球場で日本シリーズを、

との願いは九分九厘叶わないでしょう。

しかしまぁ、今年はあの戦力でよく頑張ったものだと思います。

勝率5割がかなえば、ブラウン監督続投だそうなので、

おそらく、それは大丈夫でしょう。

新球場スタートをわけのわからん新監督で迎えることになれば、

間違いなくチームは空中分解しそうなので、

そういう意味では良かったと思います。

新球場一年目のシーズンは是非とも今年の延長線で

頑張ってもらいたいものです。

さて、野球と言えばタイトルに挙げた小説。

先日、ある書店の新刊書の棚で、この本を

MrK 一押しの作家、“高村薫”の新刊と早合点してしまいました。

高村にしてはミョーに軽いタイトル、薄っぺらい本だと思ったのですが

よく確かめずにレジに持って行き、購入した後で

これが“北村”薫の作品であることがわかったのです。

『野球の国のアリス』

Photo_3

講談社の、“かつて子供だったあなたと少年少女のための

ミステリーランド” シリーズからの一冊。

なんと、すべての漢字にルビがふってあり、

「しまった、子供向け図書だったか」と後悔。

しかし、2,100円も出したのだから

ま、とにかく読んでみることに…。

a

桜が満開の季節、小説家のわたしは、ふいにま新しい中学の制服の女の子に話しかけられます。
半年前にわたしが取材した小学生の少年野球チームのエースでアリスという子でした。
アリスは男子にも負けない有能なピッチャーでしたが中学生になれば、女の子には活躍の場がなく野球をあきらめなくてはならないといいます。
「でも昨日までわたし、おかしなところで投げていたんですよ」

「大変だ、大変だ、遅れちまう」とあわてて通り過ぎた宇佐木(うさぎ)という新聞記者を追いかけて、鏡の国に入ったアリス。
そこでは、同じ人たちが同じ町で生活していましたが、すべてが反対の世界でした。
新聞の文字も、建物の位置関係も、自動車の走行車線も…
そして、アリスの大好きな野球も、その大会には勝ち抜き戦(表の大会)がある一方で、負け残り戦(裏の大会)というのがありました。
なんとアリスの中学校はその最終戦に『負け残って』いたのです。

そもそもは、試合に負けた子供達に敗者のレッテルを貼ることが望ましくないとの発想から、裏の大会が始まったらしいというのです。
負けたチームでも試合が続けられるようにと…
そのうち決定的なエラーなど恥や屈辱のプレーこそが見せ場となり、裏の大会は、表の大会以上に人気となりました。
大好きな野球が捻じ曲げられた形で楽しまれていることに憤慨するアリス。
その最弱を争う野球チームになんとか入りこみその最終戦に出場。
一回表、トップバッターのアリスはすかさず長打を放つのですが…

アリスは力を発揮できず、あえなくチームはコールドで負け最弱が決定。

しかし、こちら(鏡の中)の世界にも現状を残念に思っている人間がいたのです。
宇佐木さんです。
彼は、一番負けたチームを表の大会の優勝チームと戦わせ、いい試合をしたらどうだろうと考えていたのです。
世間にはびこる見下す笑いをなくすことができるのではないかと。
試合を画策することで現実への最高の抗議としたかった…
宇佐木さんは奔走し、アリスや、あちら(元)の世界でバッテリーを組んでいた兵頭や、アリスの最大のライバルだった五堂(セクハラ五堂)君をこちらに呼び寄せ、チームに引き入れます。
こうして、最強チームと最弱チームとの一戦が始まったのです…

お話は『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』をパロったような

不思議なストーリーを展開させてゆきますが、

物語の随所に『皮肉』がちりばめられていて、一度読んだだけでは

むずかしいところもあります。

冒頭に書いたように、一見ジュブナイルな作品に思われましたが、

小学生にはちょっと難解でしょう。

それでも、子供は子供なりに理解し感ずるところを感ずれば

それでいいのかもしれません。

あとがきの「わたしが子どもだったころ」で

著者自身が書いているように、「心のやわらかなうちに出会った

さまざまなドラマや本の中には、今でも鮮やかに

思い出すものがある」だろうからです。

シニカルな内容もある一方、

謡口早苗氏の素敵なイラストの効果もあって

わくわくするような気持ちで子供の世界を楽しめます。

かつて子供だった今の大人に、昔の純粋な気持ちを呼び起こし、

さわやかな読後感を残してくれる作品、と言い切っても

いいかと思います。

北村薫作品では、これまで

未来へのタイムスリップを題材にした『スキップ』しか読んだことは

ありませんでしたが、我々が経験することは、良いも悪いも

すべてが人間として大切な財産である、

共通してそんなメッセージが届けられているように思えました。

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 有害人物混入内閣 | トップ | 不景気と健康 »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おかえりなさいませー! (yunppi)
2008-10-04 00:19:27
おかえりなさいませー!
 と、こちらの場所から言うのは変ですが、無事到着のようですね(^^♪
田んぼの中で手を振っていた私を確認できましたでしょうか?
スズメに囲まれ、麦藁帽子をかぶり、一本足でお見送りしましたよ(ぷはっ)
 
間違いで買った本が、思いのほか良い本でラッキーでしたね。
私は『闇の子供たち』を読み終えました。
いろんな意味でショックな本でした。
きわどすぎます。いくら、社会的に問題でも、子供たちへはお勧めできない本でした。
返信する
>yunppi さん (MrK)
2008-10-05 00:45:18
>yunppi さん
『闇の子どもたち』―読むのがこわい、といわくつきの作品ですね。ヤン・ソギルは好きな作家ですが、ちょっと躊躇してしまいます。またレビューしてください。
岩手県、良かったです
返信する
Mr.K様 (Black Nurse)
2008-10-06 22:03:27
Mr.K様
「イワテケ~ン」やら「北村薫」・・・?
話に入れない私です・・・(汗)

それは置いといて
小学生のころ、クリスマスプレゼントに本を買ってもらうのが楽しみでした。でもなぜか図鑑が多かったですね。あと「シートン動物記」シリーズ、それと「一角獣の伝説」という小説が印象に残っています。

ところで今の子供たちって、読書しているのかな?
個人的には、「ソフィーの世界」は中学生にはぜひ読んでもらいたいと思っています。
返信する
>BlackNurse 様 (MrK)
2008-10-06 23:25:38
>BlackNurse 様
これは、これは、失礼しますた。
yunppi さんは花巻の女性の方で、楽しいブログを毎日!書いておられますヨ。BlackNurse 様も一度お訪ねください。
http://yunppi.no-blog.jp/blog/
さて、読書嫌いだった小学生時代、『ドリトル先生』『メリー・ポピンズ』のシリーズを贈られ、以後、急に読書量が増えました。書籍の贈り物って重要ですね。
図鑑もありがたかったですが、膨大なシリーズでなくては調べ物としては用をなさず、あまり使えなかったように記憶します。
『ソフィーの世界』はワタクシも読みましたが、結局内容はほとんど理解できず、読了後もほとんど記憶に残っていません(涙)。
返信する
Mr.K様 (Black Nurse)
2008-10-08 20:06:02
Mr.K様
さっそくyunppiさんのブログ拝見させていただきました。
すずめの写真がとても可愛いですね。身近な鳥なので余り気にしてなっかたのですが、写真で見ると愛嬌があります。
(そのうちコメントさせてもらおうかな)

で本の話ですが、図鑑といっても小学生向けの本でしたから、あまり役立つような内容ではありませんでしたが、でも絵をみるだけでわくわくしてました。

「ソフィーの世界」はたしかにわかりにくい本ですよね(かくいう私自身も理解しているとは言いがたい・・・)。
西洋哲学とキリスト教的な考えは、人によっては受け入れがたい側面があるかもしれません(人間の存在意義は、遺伝子を後世に残すこと、なんて書いてあったりする・・・)。
でも哲学の歴史書と考えてみると、あんがい面白いと思います。
返信する
>Black Nurse 様 (MrK)
2008-10-08 23:06:48
>Black Nurse 様
Black Nurse 様の御歳は存じませんが、yunppi さんはワタクシと年齢も近く?共感できる点が多いです。是非コメントしてあげてください。
ところで、ワタクシの知人に哲学者がいて彼の著書ではずいぶんわかりやすく哲学(ヘーゲルやフッサール)を紹介してくれているのですが、やっぱりわからん…何とか日常生活におけるその意義を理解せんと努めるのですがダメです。Black Nurse 様、是非ご教示ください。
返信する
Mr.K様 (Black Nurse)
2008-10-10 20:31:43
Mr.K様
ご教示だなんて、とんでもないです。
ただただ本が好きで、暇さえあれば読書している、50前の単なる看護師なんですから・・・(汗あせ)。

しかし、哲学者の知人が居られるなんて、Mr.K様っていったいどんな方なんでしょう?
英語の記事をさっさと日本語に訳されているから(しかも専門用語がいっぱい入っている)、英語に堪能なんでしょうね。
もしかして帰国子女?
まさかして、マッドサイエンティスト?

失礼しましたm(_ _)m
返信する
>Black Nurse 様 (MrK)
2008-10-10 23:33:13
>Black Nurse 様
ただの凡人です…ほとんどの単語で辞書を引いてます(涙)。従って無茶苦茶な訳ですが、大筋で理解していただけたら幸いです。
しかし、Black Nurse さん、寸暇を惜しんで読書されるとはすごいです。またお勧めの本がありましたらご紹介ください。
よろしくお願いします。
返信する

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事