ほなさんの汗かき日記

かくれ肥満の解消に50歳を超えてはじめた健康徒歩ゴルフ。登場する個人名、会社名、内容はフィクションである。

再録「汗かき日記」第二部(後)

2010年11月07日 | 日記
(「ほなさんの汗かき日記」のアメブロに載せた
 ものを再録)

        謎のグリーン

 さらさらの砂を周りにしたがえたマイボールは、グリー
ンの隅で悠然としていた。バンカーから一発でのったのだ
から、初心者にしてみれば、「ハッ、ハッ、ハ」と思わず
高笑いのひとつもしてみたいところだ。しかしそういうお
下品な所作は、特にマナーを重んじるスポーツ「ゴルフ」
ではもっとも嫌われるだろうから、本来の自分の品性から
治さねばならないと思った。

 だいいち、朝迎えてくれた職員の人たちも、私と息子が
ゴルフデビューだと聞くと、にこやかな笑顔で「それは光
栄です、これからどしどしお越し下さい。」と言って喜ん
でくれたではないか。であるのに、たった1回の幸運なバン
カーショットに酔いしれて、グリーンの上で「実力」と書
かれた扇子を広げてふんぞり返って高笑いでもしようもの
なら、もう二度とNカントリーの土は踏めないだろう。ジ
ェントルマンのK師匠からは、これ幸いと、絶縁状を送り
つけられるに違いない。

 グリーンを外した息子が、ほうほうのていでグリーンに
乗せてきたと思ったら、なんと球がカップの20CMぐらい
近くまで転げて寄ってきた。私は自分のラッキーショット
を忘れて、まぐれとは恐ろしいものだと思った。カップか
らかなり遠い私は、芝目もわからずに打つ、ひたすら打つ。
方向も、距離も思い通りにいかない。ここのグリーンは高
麗だかベントだか知らないが、練習したTVゲーム「みん
ごる4」では、高低しかなかったのだ。
だが本物は違う。グリーンに流れがあり、高低差がそれに
拍車をかけていく。曲がったり、まっすぐいったり、私に
はトント判らない世界がある。

 K師匠のボールは、意思でもあるかのように転げていく。
止まりそうで止まらない、コロンとカップに転げ込んだ。
息子はカップから20CMを一打で入れ、緊張から得意満面
の笑顔に変わった。フワフワのグリーンと同じように、私
の意識ははっきりしなかった。このホールは何がなんだか
分らないうちに終わってしまった。K師匠が数えなくても
よいといわれたスコアも、10まで数えたが、あとを数える
ことはできなかった。
いつカップインしたのかさえ記憶になかった。ラッキーな
バンカーショットの祟りをうけたのだ。

 たった1球を追うことに、汗だくになり、喜び、嘆き、喝
采を送る。コンサートホールでのアンコールのさなかのよ
うに、一心不乱、無の境地になっている自分をみつけ、朝
のスタート時にみた爺さん達の背中と自分が重なって見え
た。ミスしてもしなくても、そのことに夢中にさせてくれ
る時間と空間に浸れるありがたさ、贅沢さに、心のすみず
みまでが潤いを取り戻していくようだ。

「ビバ ゴルフ、 ゴルファー万歳! アニハセヨ、ボン
ジョルノ、セニョール、セニョリータ、ノストラダムス、、
、、、。」
感極まって、まったく同じ意味、知っているだけで意味不
明の単語が口をついて出てくる。

 さて次はどんなコースに出会えるか、次こそはうまくい
くに違いない。楽しみはますます膨らんでいく。
グリーンの向こうから、「父さん、早く、出発するよ」
息子の弾む声がよんでいる。      (第二部 完)

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