ほなさんを甘くみるんじゃねぇ（3）

薄毛だから育毛剤が要る、のはわかっていることだ。
しかし、、長い経験からすれば、
薄毛の頭には、1本あれば十分なのだった。

ちょっとの水滴でも液だれする、
てっぺんに垂らした液が、ツーっと首まで垂れてくる。
その素早いこと、、、。
育毛剤の液が川下に流れいくのを停めるはずの「毛」
が少ないものだから、地肌に当たった液体はそこあた
りを一面に濡らしつつ広がり、下に向かって一直線に
進んでいく、そのスピードのために、ほなさんの反射
神経はとんでもなく鍛えれらてきた。

つまり実に効率よく少ない溶液で、頭の要所をカバー
できることを、このおばちゃん店員は知らないのだ、
と思った。
むしろ、トニックがたくさん必要なのは、毛の多い人
なのである。それは、たくさんの毛が液体の流れを阻
み、吸収するがために、無用の育毛剤を消費せざるを
えないのだ。ざまぁミロ、と言いたい。

ほなさんをはじめとする薄毛の諸君は、おのれの頭に
落とされた育毛剤は、1ミリリットルも何人に邪魔され
ることなく地肌に染み込んでいったことを称えよう。

このさい、密集したたくさんの頭髪を持つ人をみたら、
かわりに嘆いてあげようではないか、
ほなさんならトニックは1本あれば充分だよ、
少しばかりたくさん毛がある者たちは、トニックやら
リキッドが無駄に高いものにつくのだ。
かわいそうに、君こそトニックを2本買いなさい。

おばちゃん店員さんよ、
そういうわけで、ほなさんは1本で十分だからね。
ここまでほなさんは思うと、さっとカードを差し出し
1本のヘヤトニックを手にレジを後にした。

おばちゃん店員は、何のことかわからずじまいながら
ほなさんの自信あふれた物腰に押され、もう何も言え
ないでいた。

ほなさんを甘くみるんじゃねぇ（2）

ドラック売場のおばちゃんは、朝一番に
目尻の垂れた「買う気満々」のおじさんの来店を見るや
今日は朝から縁起がいいわい！
とほくそ笑んだことでしょう。しかも、この客は、
「薄毛」なのです。

ほなさんがトニックを手にレジへ行くと、
おばちゃん売り子は、
「あー、お客様、今日は良い日にお越しになりましたね。
　サービスデーですから、もう一本お買いになると、さ
　らにあと5％引きになりますよ。」

目の前の客が、育毛剤を買わねばならないのは分かって
いる！
薄毛なんだから、ドンドン頭に振りかけていけば良い！
鏡の前のほなさんの日常生活をすべて知っているとばか
りに、自信満々の笑みを浮かべつつ、
ほなさんの前にトニックをもう1本差し出したのでありま
した。

お客様のお役に立ちながら、しかも、売上を上げていく、、
その顔は販売員として間違いなく勝者の表情でありました。
自らの仕事で顧客の生活が豊かになるお手伝いができるの
は、販売業として理想のスタッフ像にほかなりません。

良かったな、今日はなんと良き日なんだろう、そういえば、
朝のTV占いも良かったのでありました。
その場にほなさんが居なければ、おばちゃん販売員は、うっ
とりと歓喜の表情をしていたかもしれません。

だが、しかし、、、
この後、予期せぬ展開が待ち受けていたのでした。
あー、薄毛のほなさんとおばちゃん販売員の運命はいかに！

ほなさんを甘くみるんじゃねぇ（1）

このところ、うちの女房殿も懐具合が変わってきたようで、い
や正確には懐具合は前から同じ苦しさなんでしょうが、初孫が
出来て以来というものは、そちらが気になるらしく、
ほなさんの備品が切れていても気づかない、
気付かないふりをしている？
ようなのでありました。

家での順位とういものは、年齢と共に変化していくことも仕方
ないなぁ、と諦めがつく年齢が年金をもらう年ごろなんであり
ましょう。

で、とうとう大事な大事な整髪料のトニックが無くなってしま
いましたが、初孫への対処で精いっぱいの女房へ、催促するこ
となどできずじまいで過ごしておりましたが、

ある朝、
「20日、30日は5％オフ！」と文句につられ近所の「〇オン」に
いきました。目指すドラッグストアの棚には、「オネボウ？」に
似た名の有名メーカーの整髪料がズラリと並んでおりました。

思い起こせば、ほなさんが20代より散髪屋では、
「整髪料ふっときましょう」
と言われても、リキッドであった試しがなく、いつもトニック
だけを洗い終わった頭にかけてくれたものでありました。
散髪屋の主人もよくわかってくれていたのであります。

トニックはリキッドと異なり整髪料ではありません、育毛剤で
あります。地肌に刺激を与え産毛をたくましい髪に育てあげる
「育毛剤」は、どこまでもほなさんの長～い友であります。

整髪リキッドなんてものは、ほなさんにとって、櫛一本あれば
ほんの2-3回頭をなでるだけで、
「整髪、一丁あがり！」
となるのでありました。ほなさんに無用の長物なのです。