はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

『映画ドラえもん のび太の 宝島』感想

2018-03-11 15:59:00 | アニメドラ感想
 3月3日より、『映画ドラえもん のび太の 宝島』の公開が始まった。
 私は、3月4日に藤子ファン仲間と観てきたので、例年通りにこのブログに感想を書いておきたい。これまた例年通りだが、映画の内容に触れる箇所があるので、未見の方はご注意いただきたい



 さて、今回の映画の感想だが、一言で書いてしまうと、残念ながらあまりノリ切れなかった作品になった。
 だからと言って、作品の出来が悪いと思ったかというと、そうではない。ストーリーは王道の親子物で手堅く泣かせに来ているし、アニメーションとしてのアクションはなかなか見応えがあったと思う。
 それでは、何が物足りなかったかというと、それはストーリーがあまりに王道すぎたせいだ。

 序盤、のび太が船を手に入れて宝島に出発するまでの流れは、果たしてどのような冒険が待っているのだろうかとワクワクさせられた。
 しかし、しずかが取り違えでさらわれてしまって以降は、ああこれは親子愛で泣かせに来ているのだなとあからさまにわかる描写が続き、果たしてここからどうひねってくるのだろうと思って観ていたら、そのまんまストーリーが進んで終わってしまった。
 もちろん、王道であるからにはしっかり描写を重ねて泣かせようとはしているのはわかるのだが、それだけでは私には物足りなかったのだ。たとえば、昨年の『南極カチコチ大冒険』で、2体のパオパオが実は10万年眠った同一個体だったというのは意表を突いていて面白かったが、それくらいのひねりが物語に欲しかった。
 今年は、そういったひねりを求めるべき作品ではなかったのかもしれないが、「藤子・F・不二雄原作」を謳うからには、観る側としてそれを求めてしまうのだ。
 ストーリー上の不満としては、まだある。「宝島を求めての冒険」が、完全にメインのストーリーへの導入として使われるだけで終わってしまい、宝探しが本筋でなかったのも、個人的には残念だ。「のび太の宝島」とタイトルに付いているのに、宝はどこかへ行ってしまった。

 結論としては、私のドラえもん映画に対して求める物と、今回の映画とが合っていなかったということで、作品自体を否定する気は毛頭無い。
 毎年一作公開されているドラえもん映画であり、最近は一作ごとに監督や脚本家が変わっているのだから、今年のように出来はよくても個人的に合わないと言うことはあってもおかしくない。

 そう言えば、映画ドラえもんでオープニングの歌とアニメーションがなかったのは今回が初めてではないか。
 これには、驚かされた。と言うより、一体いつになったらオープニングが始まるのだろうと、最初のうちは話に集中できなかったくらいだ。これにどんな意図があるのかはわからないが、オープニングが無いと寂しいので、できれば来年以降は復活させて欲しいところだ。
 エンディング主題歌と挿入歌は、ともによかったと思う。エンディングは、映画の主題歌と言うよりは『ドラえもん』という作品全体の世界観を歌った歌になっているが、それが逆に新鮮ではあった。

 ここで、キャラクターデザインについても触れておこう。「大山ドラ風ではないか」と公開前から言われていた本作だが、「大山ドラ風」と言うか、「中村英一ドラ風」だなと感じたのは、ドラえもんの正面顔だ。口を閉じている正面顔は、テレビアニメの大山ドラ後期における中村氏の描くドラにかなり寄せている感じがした。
 だが、大山ドラを感じたのはそれくらいで、他のキャラクターについてはあまり大山ドラを感じることはなかった。

 それにしても、あの海賊団の面々は、どうなるんだろうな。どこでも働いていけそうな奴もいるが、とてもまともに更正できそうにない奴もいて、おそらく海賊団が解散となるだろうが、その後はどうやって生きていくのだろう。あんな組織を作ってしまったシルバーの責任は重大だと思う。
 あと、クイズはいちいちクイズを出題するので話のテンポがそがれる感があったなあ。『宇宙英雄記』のバーガー監督の時にも思ったが、今回は悠木碧の無駄遣いだったような気がする。テレビの方で、またいい役でもあればいいのだが。

 奇しくも、今年は『のび太の南海大冒険』公開から20年だ。藤子・F・不二雄先生亡き後はじめての映画ドラえもんだった『南海大冒険』は、正直なところ厳しい出来ではあったが、それから20年を経て、『南海大冒険』と同じ短編を元にして新たな映画が生まれたことは、映画ドラえもんがこの20年で大きく変わったことを象徴しているのではないか。その意味で、非常に記念すべき作品ではあると思う。

 と、言ったところで今年の感想は、終わる。来年は「異説クラブメンバーズバッジ」を元にしたオリジナルだろう。どんな異説世界を見せてくれるのか、今から楽しみだ。

最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
映画 (ドラえもん大好き)
2018-03-11 16:31:08
私は、予告見た時の南海リメイク感かとがっかり感と星野源さんの主題歌の印象が強くまだ内容が残りきれてないので、また見に行きます。
映画観賞会時は、おおはたさんとも知り合えてありがとうございます。
Re: 映画 (おおはた)
2018-03-14 21:29:46
コメント、ありがとうございます。
今年の映画ですが、私ももう一度観ようかと思っています。最初から全体がわかった状態で観れば、また違った感想が得られるかもしれないと思いましたので。
Fネタが満載のようなので、それを見つけるためにも少なくとももう一度は観ておきたいところです。
はじめまして (山田親太朗)
2018-05-01 16:46:34
はじめは、ドラえもんのこの映画を見てコメントを書き込もうと思って、見に行って来ました。なんだかとてつもなくヘビーな話でしたね。敵のボスがああなった原因は、最愛の妻を亡くして、そのあと何事もうまくいかなかったせいだったというんですから。私も最愛の相手が死んだら、ショックで腐るだろうから、気持ちは分かります。あなたならどうしますか?最愛の相手が死んで、ショックのせいもあり何事もうまくいかなったら。意見を聞かせてください。ちなみにわたしの最愛の相手はペットは猫です。
Re: はじめまして (おおはた)
2018-05-20 20:46:05
 はじめまして。
 たしかに、重いお話でした。展開的にフィオナが亡くなるのは分かっていましたから、その点は観ていてつらいところでしたね。

 私にとっての「最愛の相手」がはたして誰かとなると難しいのですが、きっと大きなショックを受けるであろうと言うことは想像できます。シルバーみたいに極端な行動に走るかどうかは、わかりませんが。
Unknown (カロッゾ)
2018-10-03 10:49:32
※数ヶ月前に同じコメントを投稿させてもらったのですが、私の送信ミスのせいか、反映されていないようなので、もう一度投稿させて頂きます。
おおはたさんがお忙しいためにコメントの確認がまだ出来ておらず、反映されていないだけということであれば、二重投稿になってしまうので、お手数をおかけしますがこのコメントは削除をお願い致します。
もし、コメントの内容がブログの内容に沿っていないために掲載できないということであれば、このままスルーして頂いて構いませんので。
以下、コメント本文です。


南海大冒険からもう20年ですか、早いものですね。
わさびドラの映画は緑の巨人伝と新宇宙開拓史で2年連続失望して以降見ていないのですが、評判が良いものもこの10年で何作か出てきているようですね。


映画ドラと関係ない話題で恐縮なのですが、おおはたさんは出木杉の下の名前について、どうお考えですか?
えいさい説とひでとし説で、いつの間にかひでとし説が世間的に有力になって、以前はえいさい説を推していたドラえもんチャンネルのキャラ紹介でも最近ひでとし説を推す文章に変わっていました。

個人的には、税金鳥の話でF先生が「えいさい」とルビをふった事実があるのだから、「えいさい」が正しいと思っているのですが。

ひでとし説の発祥になったのはドラカルトですよね。
私も所持していますが、あの本が出版されたのはF先生が亡くなってから1年以上経った後で、該当部分を読んでみても、生前のF先生にご意見を伺って、その上でひでとし説を提唱したようには読めず、「出木杉の子供はヒデヨだから、本人はひでとし」というだけの書いた人間の独断のように思えます。
さらに該当部分には「英才の読み方は単行本では明かされていない」と記載されていますが、税金鳥で記載があるのだから、これは明らかな間違いで、税金鳥のことを知らなかった人間が提唱した説が広まってしまったのではないかと思えるのです。

確かに「ひでとし」の方が名前として自然ではありますが、漫画のキャラの名前に自然不自然を求めるのはナンセンスな気がします。
ドラカルトでひでとし説が広まって以降の22巻ではルビがひでとしに変更されてますが、なぜF先生が決めたことを尊重しないのか疑問です。

それとも私が見落としているだけで、ひでとし説を裏付けるものがF先生の発言などにあるのでしょうか。
お暇な時にお返事いただければ幸いです。

ちなみに大全集の税金鳥では「出木杉太郎」になっていましたね。
大全集の方針として、単行本収録時などにF先生が手を加えた部分・変更した部分は、それを完成形として掲載するというものがあったと思います。
「透視シールで大ピンチ」にて出木杉英才に名前が変わったことを受けて、22巻の改版の税金鳥では英才に変更されたというのは、F先生自身による変更に間違いないと思うのですが、あえて初期の太郎で掲載したのは、ルビを「えいさい」にするか「ひでとし」にするかで迷ったからなのかなと。

長文失礼致しました。
出木杉の名前など (おおはた)
2018-12-16 15:34:10
 出木杉の下の名前についてですが、たしかに「ひでとし」説の発端は、商業出版物としては「ド・ラ・カルト」ですね。
 実は、この本のひでとし説については、とある藤子ファンの方(今は特に表立って活動されていないので、お名前は伏せます)の意見が「ド・ラ・カルト」執筆者に伝わって、それであの項目ができたという経緯があります。
 その方の説では、子供がヒデヨであることだけでなく、短編「考える足」の主人公が英才=ひでとしであったことも根拠の一つとなっていました。
 しかし、いずれにしても藤本先生が亡くなられた後の推測に過ぎない点については、ご指摘の通りと思います。私の知る限りでは、生前に出木杉の名前について明言されたことはありませんでした。
 そもそも、初登場では出木杉でなく「明智」と呼ばれたこともあったくらいですから、ある意味では名前についてはブレまくっているキャラともいえましょう。さすがに、明智については藤本先生の生前の再録時に訂正されていますので、公式にも間違いだったといえますが。
 個人的には、出木杉の名前は曖昧なままでもよかったんじゃないかなあと思っております。その方が、読者のいろいろと想像する余地も広がったでしょうし。ただ、「ひでとし」せつにも一定の説得力はあると感じるのも事実なので、難しいところです。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。