昨日は、久々に名古屋駅前に出かけて、ゴールド劇場で映画「時をかける少女」を観てきた。
原作はあらためて言うまでもない筒井康隆の作品、そして細田守監督が手がける初のアニメ映画化と言う事で、非常に期待していたのだが、その期待以上にいい映画だった。
以下に、感想を書いておく。ネタバレはあまり入れないつもりだったが、結果として、今回の映画と原作のネタを割ってしまう部分がいくつかあるので、ご注意されたい。なお、私は原作小説は読んでいるが、これまで映像化された作品は一切未見なので、芳山和子についての言及は全て原作から受けた印象によっている。
本作については、細田監督が手がける事と、主人公が代がわりしている事くらいしか予備知識がない状態だった、まずは冒頭の野球シーンで意表を突かれたのだが、まずこの場面から始める構成は非常に巧いと感じた。このシーンを観ただけで、主人公の真琴が芳山和子とは異なるアクティブな少女である事や、男友達二人と野球をして遊ぶ微妙な関係を保っている事などが、すぐに理解できて、自然に映画の世界に入り込めるようになっているのだ。
上で、真琴をアクティブな少女と書いたが、特にタイムリープ能力を身につけてからは、暴走気味とも言えるような数々の行動が、非常に印象的だった。何しろ、タイムリープの方法からして、原作とはまるで異なる乱暴な手段なのだから。「時をかける少女」なので、当然何度もタイムリープの場面が描かれているが、全て真琴のキャラクターが上手く生かされており、特にカラオケボックスでのタイムリープの繰り返しには笑わせてもらった。
とにかく、原作の芳山和子とは全く異なる、紺野真琴という主人公がいなければ、本作は成り立たなかっただろう。
肝心のストーリーは、タイムリープによる事故の回避や、実は未来人だった同級生など、原作の要素を随所にちりばめながらも、現代の新しい「時をかける少女」と言える物語になっていた。進路の選択を迫られる時期の、一夏の青春物語として、観ていて恥ずかしくなるような場面もあったが、全編気持ちよく観る事が出来た。
また、物語の肝となる「タイムリープ」に回数制限を付けた事で、ラストのどんでん返しが効果的になったと思う。「最後の一回」をくだらない事に使ってしまったので、後半は先の展開が読めなくなり、最後までだれることなく観る事が出来た。
そして、本作を語る上で忘れてはならないのが、主人公の叔母として登場する「芳山和子」の存在だ。
タイムリープについて主人公に語ったアドバイスを聞く限りでは、この人物だけは真琴のタイムリープによって影響を受けていない、超然とした存在であるように受け取れる。
この芳山和子が、原作の芳山和子と同一人物であれば、タイムリープや、かつての友人の事は忘れているはずで、気になった部分だ。真琴のタイムリープを見守る存在として、あえて原作の芳山和子とは異なる設定にしたのかも知れないし、あるいは既にケン・ソゴルと再会して、タイムリープの事を思い出しているのかも知れない。
いずれにせよ、謎めいた存在として印象的なキャラクターだった。
そう言えば、ここまで特に触れてはいなかったが、もちろん作画や美術も素晴らしかった。
キャラクターは皆生き生きと動いていたし、商店街や学校などの舞台は、よく描かれているというだけでなく、どこか懐かしくて、自分がその街にいるかのような感覚を覚えた。作品世界が魅力的に描かれていたからこそ、作品に深く入りこむ事が出来たのだろう。
また、主人公を含め、声優経験のない新人が多く起用されていたが、本作については成功していたと思う。演技力の点に問題はなかったし、本職の声優にはない「若さ」が感じられた。
出演者と言えば「落語天女おゆい」の原作者で声の出演もしていた桂歌若が真琴の父役だったのには驚いた。EDのテロップで一番びっくりした部分かも知れない。この人も、演技は問題なく聴けたが、なぜ選ばれたのかは非常に気になる。
以上、色々と書いたが、ともかくいい映画だった。劇場で映画を観て「もう終わりか」と思ったのは、久しぶりだ。98分という長さを全く感じさせられなかった。
とりあえず、もう一度くらいは上映中に観ておきたいものだが、8月は毎週、遠出する予定が入っているので、おそらく無理だろう。DVDは、ぜひ購入したい。
なお、私の観に行った回では細田監督と美雪(真琴の妹)役の関戸優希の舞台挨拶も行われた。土曜日に行こうと思い立ったのは、他に行ける日がなかったためで、舞台挨拶の日になったのは全くの偶然だった。ちょっと得をした気分だ。その舞台挨拶では、監督はともかく、なぜ妹役が来るのかと不思議に思ったが、パンフレットを読むと関戸優希は愛知県出身だった。地元への凱旋だったのか。
原作はあらためて言うまでもない筒井康隆の作品、そして細田守監督が手がける初のアニメ映画化と言う事で、非常に期待していたのだが、その期待以上にいい映画だった。
以下に、感想を書いておく。ネタバレはあまり入れないつもりだったが、結果として、今回の映画と原作のネタを割ってしまう部分がいくつかあるので、ご注意されたい。なお、私は原作小説は読んでいるが、これまで映像化された作品は一切未見なので、芳山和子についての言及は全て原作から受けた印象によっている。
本作については、細田監督が手がける事と、主人公が代がわりしている事くらいしか予備知識がない状態だった、まずは冒頭の野球シーンで意表を突かれたのだが、まずこの場面から始める構成は非常に巧いと感じた。このシーンを観ただけで、主人公の真琴が芳山和子とは異なるアクティブな少女である事や、男友達二人と野球をして遊ぶ微妙な関係を保っている事などが、すぐに理解できて、自然に映画の世界に入り込めるようになっているのだ。
上で、真琴をアクティブな少女と書いたが、特にタイムリープ能力を身につけてからは、暴走気味とも言えるような数々の行動が、非常に印象的だった。何しろ、タイムリープの方法からして、原作とはまるで異なる乱暴な手段なのだから。「時をかける少女」なので、当然何度もタイムリープの場面が描かれているが、全て真琴のキャラクターが上手く生かされており、特にカラオケボックスでのタイムリープの繰り返しには笑わせてもらった。
とにかく、原作の芳山和子とは全く異なる、紺野真琴という主人公がいなければ、本作は成り立たなかっただろう。
肝心のストーリーは、タイムリープによる事故の回避や、実は未来人だった同級生など、原作の要素を随所にちりばめながらも、現代の新しい「時をかける少女」と言える物語になっていた。進路の選択を迫られる時期の、一夏の青春物語として、観ていて恥ずかしくなるような場面もあったが、全編気持ちよく観る事が出来た。
また、物語の肝となる「タイムリープ」に回数制限を付けた事で、ラストのどんでん返しが効果的になったと思う。「最後の一回」をくだらない事に使ってしまったので、後半は先の展開が読めなくなり、最後までだれることなく観る事が出来た。
そして、本作を語る上で忘れてはならないのが、主人公の叔母として登場する「芳山和子」の存在だ。
タイムリープについて主人公に語ったアドバイスを聞く限りでは、この人物だけは真琴のタイムリープによって影響を受けていない、超然とした存在であるように受け取れる。
この芳山和子が、原作の芳山和子と同一人物であれば、タイムリープや、かつての友人の事は忘れているはずで、気になった部分だ。真琴のタイムリープを見守る存在として、あえて原作の芳山和子とは異なる設定にしたのかも知れないし、あるいは既にケン・ソゴルと再会して、タイムリープの事を思い出しているのかも知れない。
いずれにせよ、謎めいた存在として印象的なキャラクターだった。
そう言えば、ここまで特に触れてはいなかったが、もちろん作画や美術も素晴らしかった。
キャラクターは皆生き生きと動いていたし、商店街や学校などの舞台は、よく描かれているというだけでなく、どこか懐かしくて、自分がその街にいるかのような感覚を覚えた。作品世界が魅力的に描かれていたからこそ、作品に深く入りこむ事が出来たのだろう。
また、主人公を含め、声優経験のない新人が多く起用されていたが、本作については成功していたと思う。演技力の点に問題はなかったし、本職の声優にはない「若さ」が感じられた。
出演者と言えば「落語天女おゆい」の原作者で声の出演もしていた桂歌若が真琴の父役だったのには驚いた。EDのテロップで一番びっくりした部分かも知れない。この人も、演技は問題なく聴けたが、なぜ選ばれたのかは非常に気になる。
以上、色々と書いたが、ともかくいい映画だった。劇場で映画を観て「もう終わりか」と思ったのは、久しぶりだ。98分という長さを全く感じさせられなかった。
とりあえず、もう一度くらいは上映中に観ておきたいものだが、8月は毎週、遠出する予定が入っているので、おそらく無理だろう。DVDは、ぜひ購入したい。
なお、私の観に行った回では細田監督と美雪(真琴の妹)役の関戸優希の舞台挨拶も行われた。土曜日に行こうと思い立ったのは、他に行ける日がなかったためで、舞台挨拶の日になったのは全くの偶然だった。ちょっと得をした気分だ。その舞台挨拶では、監督はともかく、なぜ妹役が来るのかと不思議に思ったが、パンフレットを読むと関戸優希は愛知県出身だった。地元への凱旋だったのか。