1月9日は、名古屋へ行っていた。
目的は、河井質店さん(@kawai_shichiten)が出演される名古屋二期会ニューイヤーコンサートを鑑賞することだった。
このコンサートは全3部の歌劇より成っており、第1部が「再生」で歌劇「ブラック・ジャック」抜粋、第2部が「道」で歌劇「仏陀」抜粋、そして第3部が「復活」で歌劇「火の鳥[ヤマト編]」抜粋となっていた。
第1部と第3部は手塚治虫作品を原作としているが、第2部はあくまでも「仏陀」であり、手塚作品の「ブッダ」ではない。それでも、話としては「ブッダ」でも描かれたシッダルタの出家と悟りを描いており、手塚版「ブッダ」の読者にはなじみ深い内容だった。
第1部の「ブラック・ジャック」はさらに三つのエピソードから構成されており、それは「あるスターの死」「ミユキとベン」「おばあちゃん」の三編だった。それぞれ今回は、「87歳の反逆」「お前の中の俺」「母と子のカノン」という題になっていた。
河井質店さんは、「ブラック・ジャック」の中の「母と子のカノン」に出演されており、息子・猪一と言う重要な役だった。
原作の「おばあちゃん」を読むとわかるが、おばあちゃんと妻の板挟みとなって苦悩しつつも、最後は母親であるおばあちゃんを助けるために、ある決意をするという役だ。
今回の歌劇では、原作の名場面や名台詞がちりばめられており、河井質店さんが「払いますとも、一生かかっても」と歌い上げるクライマックスは感動的な場面だった。ブラック・ジャックの請求する手術代が原作の三千万円から一千五百万円になぜか引き下げられていたのは不思議だったが。「さんぜんまんえん」の方が歌いやすそうな気もする。
第2部の「仏陀」は、シッダルタが王子の地位を捨てて出家して、苦行林で修業をして、ついには悪魔マーラの誘惑にも打ち勝って悟りを開くまでの物語。手塚治虫『ブッダ』で言えば、第2部から第3部の物語にあたる。ストーリーとしてはよく知った展開であり、わかりやすかった。
第3部は「火の鳥 ヤマト編」が原作だ。
ヤマト編は、『火の鳥』全シリーズの中でも、もっともギャグ色が強いエピソードであり、今回の歌劇でも大王をコミカルな人物として描いており、十分に原作を尊重した作りになっていたのはよかった。角川が作ったアニメ版「ヤマト編」は、大王が普通の権力者でつまらなかったからなあ。
今回は、特に原作で歌われた「十万馬力だ、鉄腕大王」という大王のテーマソングが実際に大王役の演者によって歌われたのは、ちょっと感動した。もちろん、メロディーはよく知られている「鉄腕アトム」そのまんまだ。
このように全3部、色々と見どころのある歌劇だった。しかし、個人的に、歌劇というものを鑑賞するのが生まれて初めてと言うこともあり、正直に言うとやや戸惑うこともあった。
最大の問題は、特に女性の演者が高らかに歌い上げている時、なんと言っているかなかなか聞き取りにくかった点だ。それを補うためか、舞台上には歌詞が映し出される装置もあったのだが、最初に座った位置からでは、角度が悪くてその装置が全く見えなかったのだ。2階の自由席だったので、第2部が始まる前に席を動いて、ようやく歌詞が読めるようになった。
とは言え、今回は全てストーリーがわかっている状態で鑑賞したので、付いていくことはできた。しかし、手塚マンガを全然読んでいない人が今回のを初めて鑑賞したら、ちょっときつかったかもしれない。
また、今回は「抜粋」と付いているように、名場面集に近いもので、場面場面のあいだはナレーションで展開が説明されるようになっており、第3部では敵対していたはずのオグナとカジカが唐突に愛し合って結婚しようとするなど、やや急展開過ぎる部分はあった。
ともあれ、「手塚マンガを原作として、こんな風に歌劇にするのか」と、実際に鑑賞して非常に興味深かったし、名場面や名台詞の使い方など、原作のツボは押さえられた作りで、悪くはなかったと思う。
また、機会があれば他の歌劇も鑑賞してみたい。
目的は、河井質店さん(@kawai_shichiten)が出演される名古屋二期会ニューイヤーコンサートを鑑賞することだった。
このコンサートは全3部の歌劇より成っており、第1部が「再生」で歌劇「ブラック・ジャック」抜粋、第2部が「道」で歌劇「仏陀」抜粋、そして第3部が「復活」で歌劇「火の鳥[ヤマト編]」抜粋となっていた。
第1部と第3部は手塚治虫作品を原作としているが、第2部はあくまでも「仏陀」であり、手塚作品の「ブッダ」ではない。それでも、話としては「ブッダ」でも描かれたシッダルタの出家と悟りを描いており、手塚版「ブッダ」の読者にはなじみ深い内容だった。
第1部の「ブラック・ジャック」はさらに三つのエピソードから構成されており、それは「あるスターの死」「ミユキとベン」「おばあちゃん」の三編だった。それぞれ今回は、「87歳の反逆」「お前の中の俺」「母と子のカノン」という題になっていた。
河井質店さんは、「ブラック・ジャック」の中の「母と子のカノン」に出演されており、息子・猪一と言う重要な役だった。
原作の「おばあちゃん」を読むとわかるが、おばあちゃんと妻の板挟みとなって苦悩しつつも、最後は母親であるおばあちゃんを助けるために、ある決意をするという役だ。
今回の歌劇では、原作の名場面や名台詞がちりばめられており、河井質店さんが「払いますとも、一生かかっても」と歌い上げるクライマックスは感動的な場面だった。ブラック・ジャックの請求する手術代が原作の三千万円から一千五百万円になぜか引き下げられていたのは不思議だったが。「さんぜんまんえん」の方が歌いやすそうな気もする。
第2部の「仏陀」は、シッダルタが王子の地位を捨てて出家して、苦行林で修業をして、ついには悪魔マーラの誘惑にも打ち勝って悟りを開くまでの物語。手塚治虫『ブッダ』で言えば、第2部から第3部の物語にあたる。ストーリーとしてはよく知った展開であり、わかりやすかった。
第3部は「火の鳥 ヤマト編」が原作だ。
ヤマト編は、『火の鳥』全シリーズの中でも、もっともギャグ色が強いエピソードであり、今回の歌劇でも大王をコミカルな人物として描いており、十分に原作を尊重した作りになっていたのはよかった。角川が作ったアニメ版「ヤマト編」は、大王が普通の権力者でつまらなかったからなあ。
今回は、特に原作で歌われた「十万馬力だ、鉄腕大王」という大王のテーマソングが実際に大王役の演者によって歌われたのは、ちょっと感動した。もちろん、メロディーはよく知られている「鉄腕アトム」そのまんまだ。
このように全3部、色々と見どころのある歌劇だった。しかし、個人的に、歌劇というものを鑑賞するのが生まれて初めてと言うこともあり、正直に言うとやや戸惑うこともあった。
最大の問題は、特に女性の演者が高らかに歌い上げている時、なんと言っているかなかなか聞き取りにくかった点だ。それを補うためか、舞台上には歌詞が映し出される装置もあったのだが、最初に座った位置からでは、角度が悪くてその装置が全く見えなかったのだ。2階の自由席だったので、第2部が始まる前に席を動いて、ようやく歌詞が読めるようになった。
とは言え、今回は全てストーリーがわかっている状態で鑑賞したので、付いていくことはできた。しかし、手塚マンガを全然読んでいない人が今回のを初めて鑑賞したら、ちょっときつかったかもしれない。
また、今回は「抜粋」と付いているように、名場面集に近いもので、場面場面のあいだはナレーションで展開が説明されるようになっており、第3部では敵対していたはずのオグナとカジカが唐突に愛し合って結婚しようとするなど、やや急展開過ぎる部分はあった。
ともあれ、「手塚マンガを原作として、こんな風に歌劇にするのか」と、実際に鑑賞して非常に興味深かったし、名場面や名台詞の使い方など、原作のツボは押さえられた作りで、悪くはなかったと思う。
また、機会があれば他の歌劇も鑑賞してみたい。